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78 お昼のひととき。


 バハムートの背中に乗りながら辺りを空中散歩する。冬時期という事もあり、本来なら寒いはずなのだが、バハムートの背中に乗っていれば気温も丁度よく感じる。


 『お主、もうすぐでクレンセントの森につくぞ』


 5ヶ月前、エルドアス王国に向かっていた時の森だ。上空から見るとこんなにも広大な森だったんだと実感させられる。


 「そういえば、バハムートが空飛んでいたら大騒ぎになるんじゃないの?!」


 「それ、私も思ったけど…。ルイス君は何か知ってる?」


 俺が答えようとすると、その前にバハムートがその大きな口で、喋りだす。


 『ふっふっふっ!心配はないのだ。世の姿は地上の者には見えないようにスキルをかけてあるからのう。勿論、お主達の姿も見えぬ』


 「その魔法…ほしい…です。羨ま…です」


 バハムートの魔法ってすげぇなあ~。確かにこんな大きなドラゴンが上空に居たら大パニックだからなぁ…。


 それからクレンセントの森をぐるぐると周回するがビッグベアの痕跡らしきものも見つからないため、クレンセントの森から離れる事にした。


 『お主、次に向かう所はどうするのだ?』


 「ん~、元の忍者の里にしよう!」


 「ルイス君~。久しぶりだね~!そこ行くの!」


 ついこないだ、移住してきた忍者の人達と一緒に元忍者の里に俺達全員で向かい、色々な物資を運んだりした…。見るも無惨な姿となってしまっていたが、忍者の皆はスザクを打てたという思いから、その想いは希望へ未来と変わっていて皆が目を輝かせていた。そんな最近来た場所がその忍者の里だ。


 「ルイス…。その…。あの時は…」


 「んっ?」


 「その!!ありがとうって!!うん。ありがとうっていってんの!!」


 ケアルは照れ臭そうにもじもじとしながら俺を見つめて…、いや、睨んでるのか?でも顔がとても赤い…。やっぱ怒ってるんかな…?


 「気にするなよ!思い出の物見つかって良かったな」


 「ふ、ふん…。早く私を抱きなさいよね…。ずっと待ってるのに…。パパもママも早くルイスにアタックしろってウルサイし…」


 ケアルがボソボソと小声で何か独り言を言うのだが、途中から何も聞こえなかった。何て言ったんだ?うん分からん!!


 「うん。大事なもの…。見つかって良かった…です。これは命の次に大事なもの…。」


 そう言って、あの忍者の里で色々探し回っていた時に、たまたま偶然ケ発見したケアルとフレアの大事な宝物。双子姉妹と仁さん夫妻、そしてケアルやフレアの祖父母が映った写真を見せてくる。


 「もう…無くなった…思った…です。お祖父さんは凄く優しかった…です。」


 そう言うと、フレアは瞼から筋を引いて少し涙がこぼれてきた。そして、俺に顔を近付けてきて頬に優しく「ちゅっ」とキスをしてくる。


 「なんも気にするなよ?」


 フレアの頭を優しく撫でてあげると猫みたいに


 「うん… うん…!!ごろにゃん!…です…。クロちゃんの真似…です」


 と言いい。5ヶ月前にケアルと俺が救った今は我が家のマスコット猫ちゃんの真似をする。背中を前に丸めお尻をつきだし、手や腕で猫のにゃんにゃんポーズを決める。なんというか、無表情とそのポーズがマッチしていて、凄く可愛い。


 「でも、本当に私達の大切な宝物…。ありがと…です。」


 「パパもママも喜んでたしね!スルトにしてはやるよ!」


 「本当にスルト君はモテモテだよね!私も負けてられないなぁ~!婚約者として!」


 それから、忍者の里の周りを探すも、ここにも痕跡の後が見つからない。そもそも雪原に大きな足跡すらもないから、ここら辺一体にはいないのだろう…。

 

 『さて、お主、次はどうする?』


 「ん~…。次は…」


 「ルイス?私、お腹空いたんだけど、そろそろお昼にしない?」


 「そうだね~、ルイス君~!私も賛成だし、バハムートちゃんだってずっと飛び回って疲れたでしょ?」


 『む~っ、う~っ、世は…、世は…う、うむ!世もお腹すいたのだ!』


 そういえば、ぐるぐると空中散歩していて、すっかり時間の事を忘れていた…。もう、お昼頃だろう…。


 「よっしゃ!じゃあ、お昼にしよっか?」




………。

……。

…。

 



 バハムートから降りた後、バハムートも人間の幼女の姿になり5人でお昼休憩を取る。王様からもらった宝具の一つ。異空間ボックスを使う。

 ストレージボックス同様にあらゆる大きさの物をこの箱に入れれるのだが、違う点といえば人が入る事を想定して作られた箱だ。


 中に入れば巨大な高原が続く世界。美しい目につくような光景で、近くからは川の音や、鳥の鳴く囀り、そして何より、異空間だからか、ここの季節は夏みたいに温かく穏やかだ。

 ただ何故か周りを一定距離で囲っているせいか見えない壁があり まれに見えない壁があれば頭を打つ時もある。まぁ、そんなに痛くないけど。


 この異空間の中央にはちょっとした、家があって生活に必要な様々な物を用意している、この異空間ボックスがあれば、見張らしも良ければ気候も今の所はいい感じだから別荘感覚に使えるから遠出した時には持ってこいだ。


 俺達は異空間の家の前でピクニックするみたいにテーブルと椅子を用意して食べている。既に料理をヒナルとコタースとエアロが作ってくれている。料理は当番制にしているため、大体、3人で作る感じだ。俺も一緒に作る時もあり、皆して俺に料理の作り方を教えたいと迫られる時もある。


 「今日はなんだろうねー?皆頑張ってくれたからさ…」


 「うわぁー! ルイス君みてみて!?これはニンジンとじゃがいもを揚げたやつだ!」 


 多分、コタースが作ってくれたであろう料理だ。ニンジンとじゃがいもに片栗粉を少しまぶした後、油で揚げて上にバターを乗せてパセリで彩りよくした物。バターとパセリの見た目が食欲を誘ってくる。


 「ん~…ピーマンだったら嫌だな…。でも皆が作ってくれてるからなぁ~…」


 ケアルの方の箱には、サンドイッチがたくさん詰まっていた。パンとパンの間にレタス等のサラダやサラミ、コーンやタマゴサラダ等を挟んだ料理だ。この料理を作ったのは多分、エアロだろうな…。


 「お主よ。これはなんなのだ?」


 そう言うと、幼女バハムートがとある麺をずるずると音を立てて美味しそうに食べている。

 キノコや玉ねぎ、すりおろした生姜を仁さんの仲間が作った醤油と呼ばれるソースと砂糖で絡めて炒めた料理らしい。


 「ああ!ヒナルが作ったパスタっていう食べ物なんだけど、仁さんの仲間が作った特性ソースを絡めて作った試作品らしいよ?なんでも日本にいた頃はよく作ってたみたい。和風生姜パスタだったかな?」


 幼女バハムートは口を軽くタオルで拭いてから


 「うむ。なかなかの美味であるぞ!お主も食べてみるか?」


 バハムートは俺の皿にパスタを盛ってくれる。それを見ていたフレアとケアルも我は先というような勢いで…。


 「アンタ、これ美味しいから食べてみなよ!」


 「ルイス兄さん…、これも美味しい…です。」


 …と、俺の皿にそれぞれ、ニンジン料理とサンドイッチを乗せてくる。


 「ほんと、美味しいね!ルイス君!」


 こうして楽しい楽しいお昼休みを過ごしていくのだった…。



………。

……。

…。




 昼ご飯を食べ終わり、片付けをしていると、なにやら、外から何やら、男性の悲鳴らしき声が聞こえる。


 「あれ?何か聞こえるけど…」


 「うむ。世も聞こえたぞ…」


 家から出て周りを見渡すが誰もいる気配がない。その悲鳴は、どうやら異空間ボックスの外から聞こえてくる声だ。俺達は直ぐに片付けをして異空間ボックスから出るのだった…。




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