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77 バハムートの背中。

 

 今日はエルドアス王国に、俺とフレア、ケアル、ミランダ、バハムートの4人でビッグベア討伐の依頼を受けに王国の冒険者ギルドへとやってきた。


 受付のミシェルさんだ。眼鏡が良く似合う事務が得意そうなお姉さんだ…。


 「ミランダ様!?それに勇者様も!?貴女方が、受けていただけるんですか!?」


 「うん。私達が行くよ~」


 「まぁ、小遣い稼ぎに…ね!」


 俺は適当な嘘をつく。誰かが犠牲になるのもいやだったなんて言えないよ。あまり目立ちたくないからね…。

 

 「アンタねぇ~、ハッキリいいなよ。被害出たらいやだからって」


 「ふむ。お主はすぐ照れるからのう…」


 「そう…です。ちゃんとハッキリいうべき…です…」


 3人に言われて嘘をつけずに…

 

 「最近、目撃情報あったから依頼をですね…」


 受付のミシェルさんは目を輝かせながら…。


 「助かりますぅ~!!ではでは…こちらを…」


 ミシェルさんから貰った目撃情報では、俺の村近郊にある丘、王国近郊のクレンセント森手前付近、他には忍者の里の手前辺りにある湖での目撃情報がある。ビッグベアの普通の熊の一回りくらい大きく、体長4mほどで体重も600近くある巨大な狂暴熊だ。


 「ルイス兄様…。そんな広大な大地の中でどう見つける…です?」


 「ま、まさかアンタ!それ考えないで選んだわけじゃないでしょうね!?」


 ふふふ、聞いて驚くなよ。ちゃんと考えてあるし。だからバハムートを連れてきたんだよ。

 バハムートは普段は無表情な幼女だけど、どこかに出掛けたくてウズウズしている様子がよく伝わったから。たまには一緒にクエストを受注してもいいかな?思ったのさ。


 「バハムートがいるから安心しなよ」


 「「へ!?」」


 バハムートはトコトコとフレアとケアルの前にでてきて、指をVの字を作りピースサインをして、どや顔をする。


 「こ、こんな小さいのにどうするワケ!?」


 「流石に…不可能…です…」


 「あー…!竜神様だもんね。なんとなくルイス君の言いたい事が分かったよ!」



 なんとなく察してくれるミランダと、首を傾げて無表情でバハムートを見るフレア、腕組をして不思議そうな顔をしているケアル達が、無表情に見えて口元が微妙にニヤリとしているバハムートを見ている。


 「まぁ、話は王国の外に出てからだ!」


 俺達は皆で王国の外へと足を運ぶ。

バハムートも俺と似たような黒髪でヒナルいわく、日本という異世界の国…、いや…俺が産まれた世界にあるという着物を着ていた。沢山の細かい花が描かれていて赤と城とピンクの模様がとても綺麗。着物のおかげか、見た目が10歳くらいの幼女に見えるのに、神秘的でどこか神々しさも感じられる。流石は竜神様だ。


 「もう、ここら辺で良いか?」


 「ああ!」


 「何がはじまるの!?」


 バハムートは木々もない一番広い場所まで来ると…。


 「では…」


 バハムートの体が光だし…。ぱぁ~っと辺り一面を眩しい光で包み込む。そのあまりの眩しさに目を俺達、全員が瞑ってしまうほどだ…。

 やがて、徐々に光が収まりだすと…。光の向こう側でとてつもなく大きな黒い影が姿を表す。


 「なななな、なにあれ!?あの黒い影は何!?ア、アンタ!一体何をしたのよ!」


 「姉さん…。うるさい…です…。ルイス兄さんが…困る…です」


 「わぁ~!!やっぱり!ルイス君とこれに乗ってデートできるんだね!!」


 やがて、辺りを覆っていた光が無くなり、黒い影の正体が露になる。その黒い影は、黒くて大きくて、どこか神々しさがある一匹のドラゴンが姿を表した。俺はそのドラゴンに近づき…。


 「サンキュー!バハムート!」


 そう俺が言うと、バハムートは…。竜へと姿が変わったその大きな口から、大きな声で話す。


 『ふふふ!どうだ。世の姿は。これぞ世の本来の姿…。竜神バハムートの姿だぞ…』


 ドラゴンの姿になっても幼女の声のままである。そんな目の前に居たドラゴンが竜神バハムートの本来の姿だと知ったケアルが驚愕する。


 「ふぇええええ!!凄いってもんじゃないよ!!あのバハムートちゃんが!?」


 「す、凄い…です。流石、竜神様…です…」


 「そういう事だと思ったけど、想像したより凄いよ!!」


 3人の顔がわぁーっと驚いた表情になる。でも目を輝かせて怖いとかよりも凄く楽しそうに見てる。


 「でも、バハムートちゃんにはどうやって乗るの?!」


 ケアルは一早く気が付いたようだ。あまりにも巨大な為、人間がバハムートの背中に乗るにはバハムートに頭を地面に着けてもらい頭にハシゴをかけて頭から背中へと渡っていかなければならないのだが…。


 「それは俺がバハムートに選ばれた者だから、魔法でちょちょいっとね?」


 俺と3人はバハムートの前に来ると、バハムートから教わった転移魔法をイメージする。俺達3人は光出し…。バハムートの背中へと伸びた光の閃光の中を瞬時に移動する。目の前の光が消え失せ、気が付いたら俺達4人は既にバハムートの背中に乗っていた。


 「おおおっ~!本当に乗ってるよ!ルイス!!」


 そして、バハムートは…。

 

「グルルル!!」


 と声を出し、翼をゆっくりと大きく羽ばたかせる。羽ばたかせると上へと上へと徐々にあがっていく。周りの風景も段々と小さくなっていく…。やがてバハムートはゆっくりと首を前に出し…。後ろ足と尻尾を後ろへと伸ばし飛行する。

 バハムートの背中にも特殊な魔法が使われているため、風の抵抗も重力による影響も上空へ上がる事による温度変化すらも、地上の地面にいるのと変わらずにいる事ができる。

 搭乗できる者は選ばれた者しか転移ができないため、選ばれていない者が転移魔法でバハムートに近づこうとするものなら、強力なバリアで弾き飛ばされてしまう。


 「凄い!やばいって!アンタに勿体無いって!夢みたい!!ドラゴンの… 伝説のバハムートの背中に乗れるなんて!」


 『どうだ?世に乗れる者はそんなに多くないぞ。ルイスやスルトの仲間のお主達だから許すのだ…』


 「うん!!感謝するよ!!バハムートちゃん!ルイスのおかげって!まぁ!今回だけはそういう事にしておくよ!!」


 ケアルはそう言うと、はしゃぎながら、どさくさにまぐれ混みながら何故か抱きついてくる。

 

 「姉さん…?姉さんだけ…ずるい…です。私もルイス兄さんに抱きつきたい…です!」


 なんやかんやとケアルも俺に抱きついてくる。無表情だけど、なんとなく興奮して嬉しそうにも見える。


 「ふふふ。なんかロマンチックな気分ね~。まさか、初めてルイス君に出会った時はこうして、一緒にドラゴンの背中に乗れるなんて思わなかったよ!」


 ミランダもそっとゆっくり俺の横に来ると軽くぎゅっと抱き締めてきて、ミランダの顔が俺の顔の側まで来たかと思うと、軽く目を閉じて唇にキスをしてくる…。


 「チュッ!」


 それをみていたケアルやフレアも背伸びをして頬にゆっくりと優しくキスをしてきた。

 仁さんに見られたら殺されそう!?


 『むぅー、ずるいのう。我もルイスにしたいのだがな…』


 「へ?!」


 そんなやり取りをしながら、目標であるビッグベア探しを開始するのだった。




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