70 小さな国の騎士の異変の始まり…。
~??? 視点~
「兄ちゃん~!起きて~!」
「貴方~。そろそろ起きないと駄目ですわ~」
「早く起きてください~!」
オレは4人の女の子に囲まれて幸せな毎日を送っていた…。
一人は幼馴染み…。一人はその幼馴染みの妹…。もう一人はハーフエルフ族の少女だった…。そしてもう一人は血を分けた実の妹だった。
いわゆるハーレムというやつだ…。
眠い目をこすり…。「ふぁあああ~っ」とあくびをする…。
今日はこの町に引っ越ししてから1ヶ月が経とうとしていた…。ここ4ヶ月くらいの間でこの辺りが騒がしい…。誰かがこの町にやってくると活気付いている。
「誰がこんな辺境の町にやってくるんだって…」
俺は黒い聖剣を手にして身支度を整えながら愛する幼馴染みの一人に質問する。
「なんでも、明日、勇者様が来るそうですよ!どんな人か凄く気になります~!しかもその勇者様ってここから離れたとある王国…。なんていったか…。」
幼馴染みは頬に指をあてながら考え込む…。
「そうそう!エルドアス王国!!そこで魔族の親玉を撃ち破った英雄みたいですよ!!」
「魔族を…ね~… ふぅ~ん…」
「…ね、ねぇ?!その人はいつ来るの?!早く会ってみたいね~…」
幼馴染みの妹であり、もう一人の恋人が部屋に入ってくると、目をキラキラと輝かせるように幼馴染みに聞いてる。
「明日だって聞いたよ?」
「楽しみだなぁ~!!今回の勇者様って何百年に一度の伝説級なんでしょ?!」
魔族を撃ち破った…か。魔族は元々はヒューマン族やケット・シー族、トカゲ族と同じ様に普通の種族だった。ただまがまがしいツノや尖った耳…、どの種族よりも巨大な魔力があるからか、女神の美に叶わなかったらしい。
「俺達だって普通の種族なのにね…」
「兄ちゃん?どうしたの?」
妹が何かを察したかのように聞いてくる…。
「ん?なんでもないよ~。」
すると俺よりも遥かに年下に見えるが年齢は100歳くらいのハーフエルフの少女がオレの顔を覗きこみ…。
「どうしたッスか?」
「ん~なんか複雑な気持ちになっただけ。」
(その勇者…。良い人だったらいいけどなぁ~…。)
こっちでは魔族と伝わっているけど。エルドアス王国ってソロモン族と共生の道を考えている国って聞いてたから、ホムンクルスとでも戦ったんだろうか?
「それよりも貴方?今日は騎士団の方は休みですよね?なら一緒に皆で出掛けますか?」
「あぁ。皆、休みだし一緒に出掛けるか!!」
………。
……。
…。
身支度を整え、今日はあっちこっちへと出掛ける。行く所行く所で勇者の話題だ。
「すごい人気ですね~」
「そりゃー、国を救った勇者様だもんね!なんか、話に聞くとね… 元々は普通の街に住む冒険者だったけどね、エルドアス地方のエルフの王女様を救ったりね、エルドアス王国一の騎士団長に勝ったり…。とある村では捕まった奴隷を解放したりしてたみたいだね!」
「それ、あたいの村でも有名の話ッス!」
幼馴染み達は皆して勇者の話で持ちきりだった。
「他にある噂があるとすればですね。勇者の周りには常に美女や美少女がいて、毎晩代わる代わる女性の喘ぐ声が聞こえてくるとかも聞きましたわ…」
なんなんだそれ…。勇者ってよほどタラシなのか?!
「あ!見て見て!これ美味しそう!」
幼馴染みの妹は、露店の美味しそうな匂いに誘われその店に赴こうとする…。
「おい、今日はそれを食べに来たんじゃないよ?」
「えー、どけちー!」
「たまには良いじゃありませんか…。」
いや、そういう事じゃない。今は金がないんだよ…。
「今度にしよう?!今度!!買ってあげるからさ!」
「まぁ、仕方ないッスね…」
「兄ちゃん?まさかお金が!?」
「ははは…」
一瞬、ワントーンを置いてから一斉に
「「「「ハロルド(兄ちゃん)なら仕方ないか~!」」」」
これがまたハモる。
「お前ら~!!」
………。
……。
…。
翌朝になり…。セトリア王へと招集がかかる。この小さな国に何故か勇者が来るから。
オレの恋人たちも物珍しさに勇者を一目見ようと一般人と一緒になり集まりだす。
「なぁ…ハロルド?なんか緊張するな…。勇者様は俺達が何百とたばになっても敵わない人らしいんだぜ?」
「…そうか?勇者といっても所詮は人間だろ?」
昨日からこのお祭りムード。勇者といってもただの一般人の男だろ?だからなのか?勇者に群れたがるのは…。
昨日からオレの恋人達も勇者の話題ばかりで正直妬けてくる…。
しばらくすると…。
「勇者様が来ましたー!!!」
一人の兵士がそう言うと、楽器隊が演奏をしだす…。行進曲の良い音色が城内を賑やかにする。
「どうぞ!こちらへ…」
やがて勇者が一人、入ってきた…。
見た目は10代後半から20歳前半くらい?黒髪に透き通る茶色の目をした好青年にも見える…。常にニコニコしていて、民から手をふられれば笑顔で手をふり返す。そんな青年だ…。
青年は王の前にひれ伏す。
「よくぞ来てくれた!エルドアス王国の一件はこちらにも届いておる。それとついこないだ、 我が国からも正式に勇者としての認定許可の通知をだした所だ。遅くなりすまん…」
勇者は、王の発言に目を細めると、口元がぴくりと動き…
「いや、気にしてないさ。それより、ここら一帯にも魔族がいるって聞いてかけつけて来たんだが…?何か情報はあるか?」
「はて…?我が国でも魔族とは共生しているが?何かあったのか?」
勇者は、王から目を逸らすと、話で「フッ」笑い…。
「いや、特にな。ただ魔族は狩っておかないとね…。何しでかすか分からないからね…。」
「ま、まぁ…そなたの言う通りだ…」
勇者は満面の笑みを浮かべ…。
「でしょ?もし何かあったら直ぐに言ってくれ。なんなら捕まえて差し出してくれてもいい。」
「わ!分かった! して、お主の名前をお主から聞きたい…。名前をなんという?」
「俺か?俺はルイス…。ルイス・ガーランドっていう。」
ルイスは口元をニヤリとしながら王に名前を告げる。態度が気にくわない…。
そう思っていると彼がオレと目線が合った。そのにやけ顔が更ににやけたように感じた…。




