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68 大切な仲間…


 「勇気ある者よ…。そちは我を救ってくれた…。我はこれで旅立てる…。本当にありがとう…」


 と…。俺達は二人のいる方へと歩きだす…。


 近寄ってみれば…。記憶の片隅にあった物が一気に溢れ帰ってきた。どこか懐かしく…。そしてその姿は違えど、俺は直ぐに分かった…。


 「と、父さん?!」


 「勇者ルイス…。いや、わが息子よ…。ちゃんと見届けていたぞ。」

 

 「母さんが言っていた…。あのラグナログは父さんだって…。でもどうして?!」


 俺の記憶の中にある俺を育ててくれた父さんは逞しい木こりの大男ような風貌だった。今、目の前にいるのは、全く姿が違う。その姿はあらゆるものも飲み込まないとする威厳のある風貌をした男性の姿だ。


 「これが本来の我の姿…。我こそは1000年以上アスガルド王国を守ってきた魔王アスガルドだ…」


 「父さんは、やっぱり魔王…だったのか?!」


 「お兄ちゃんは凄い方に育てられたんだね…」


 アスガルドは目を細め遠くを見るように…。


 「そう。16年前に妻のユミルと娘のスルト共々、女神崇拝教の英雄により国を滅ぼされてここの地に逃げてやってきた…。その時、スルトとはぐれ…、お前を拾ったのだ…」


 「そうだったのか…」


 女神崇拝教の連中は本当にひどい…。


 「私は身を隠すため、名前を偽り、姿も変え、この地の人達と暮らしていた。本当に良い人達だったぞ。我が魔族だと知っていても誰も追害しなかった…。」


 「うん。知っているよ」


 うん…。スルトも言っていたな…。


 「女神崇拝教…、いや女神どもこそ悪そのもの…。女神の連中こそがこの地を我が物にしようとしていた。我達、ソロモン族はそれに一番最初に異を唱えた…。それがあらゆる種族がソロモン族は魔物の生まれ変わりと批判され…あらゆる種族から追放される原因となり大きな過ちだった…」


 「いや、ソロモン族は悪くないよ。誰だって、欲まみれの人がいたらそうなるよ」

 

 「女神崇拝には気を付けろ…。いずれは勇者の敵にも回るだろう…」


 「あぁ…」


 今回の件でよく分かる…。やつらの非道な行いが…。


 「本来の勇者とは我らソロモン族が召喚をして女神崇拝教と戦うために呼んだ英雄だったんだ。その英雄が死ねばまた元の世界に戻り新たに転生をしていつかこの地が危険にさらされた時のみ召喚をしてこちらの世界へとやって来るようになっていた…」


 「えっ…!?」


 「これは大古の勇者との約束だった…」


 「つまり…俺はその勇者が転生して元の世界に転生して、またこっちに戻ってきたって事!?」 

 意外な話だった。勇者が死ねば新たな勇者が誕生する…。その仕組みは、大昔の勇者とソロモン族の約束だった…。

 でも召喚者がいないし、色々な人が迷人としてこちらの世界にやって来るのは何故?! 


 「200年前の我の親しい友人でもあった前世のお主である勇者が女神により殺されてな…。召喚術の権限もすら奪われてしまった。それ以降、女神の暇潰しの為だけにお主が元居た世界から色々な人が召喚されるようになってしまった…」


 なんなんだよ…その女神どもは…


 「もうそろそろ時間だ…。我の魂も消えるだろう…。親しい200年前の友人は言った…。後世で俺が悩んでいたら力になってほしいと…。我の前にお主が来た事。楽しく過ごせた事はこの上ない幸せな一時だった…。それとルイスの妹よ。ルイスの事は我が子のように愛していた。我が息子をこれからも頼むぞ…」


 「父さん…。俺もだよ。短い間だったけど…。こんなにも俺を大事にしてくれたのは良い思い出だった…」


 「はい! お兄ちゃんをここまで愛してくれてありがとうございます!本当のお父さんやお母さんもきっと喜んでます!」


 「最後に…。」


 父さんは、そういうと隣にいた幼女が一歩前へと出る…。


 「こやつは竜神…。我の友人の娘でもある…」


 父さんの横にいる10歳くらいに見える幼女…。これが竜神!?


 「余は…竜神バハムートである…」


 バハムートは軽く会釈をする。


 「こやつがこれから我の代わりに側にいて色々と助言してくれる事となる」


 「いきなりでビックリだけど。宜しくな!」


 「ふふふ!魔王様の息子よ。こちらも宜しくたのむぞ。では現実世界に戻るぞ…」


 「わが息子よ…。今までありがとう…」


 父さんの声とともに、また強い光とともに目の前が真っ白になり一時的に気を失った感覚に陥いる。


 (ありがとう…父さん…。)



………。

……。

…。



 俺は目を開ける。僅かな時間、あの場に居たが現実世界に戻ると数秒の時間が経過しただけであった…。


 でも俺の横には、俺の手を握る小さい手が一つ…。


 「な、ななななんなのじゃ!そのロリっ子は!」


 「はじめましてだな…。余はアスガルド王の友人の娘…バハムートである!」


 「なんなのじゃあああ!我の父!?どういう事なのじゃ!?」


 叫んでいるスルトを無視して母さんが俺の側にやってくる…。


 「あの方にお会いしたのね…」


 「ああ。元気そうだったよ…」


 母さん…ユミル母さんは、ハッとして何かを思い出したかのように…


 「ルイス!ヒナル!貴方達、ふたりがけ使えるわね?!」


 そうだった。謎のスキル…ふたりがけ…。


 「貴方達のスキルなら…クリステルもシューもエアロも甦らせれるかもしれない!」


 「えっ!?どういう事!?」


 「貴方達のスキルを見させてもらったわ…」


 生き返らせれる…?この世界にはそういう魔法はないはず…。


 「血の複製…。生き返らせれるって意味とは違うけど時を戻し復元できる能力らしいわ…」


 「じゃ…じゃあ!?」


 「貴方達…、いえルイスが一番記憶にある時間をイメージして復元するのよ…。かなり昔にも1組だけこのスキルを使える人を見た事があるからね…」


 「す、凄いのじゃ!!」


 「うん…!やろう!お兄ちゃん!」


 「ああ…!」




………。

……。

…。




 俺達は直ぐに3人の死体を集める…。3人の表情が痛々しい…。見てるだけで痛々しく心苦しくなる…。

 3人の想いは凄く伝わった…。操られる前よりも俺の事を好きになっていたという気持ち…。彼女達のそれに俺は何も言ってあげれなかった。嫉妬や恨みが強かった…。でも彼女達が死ぬ間際のあの言葉を聞いて…、その今まで思っていた嫉妬や恨みが晴れた気がした…。

 だから今度こそ…。守ってやるんだ…。


 「たしか…、記憶ではこのふたりがけのスキルには貴方達の血が必要。そして成功すればしばらくはこのスキルが使えなくなるみたい…」


 「ああ!」


 「分かりました…」


 俺とヒナルはナイフで軽く指を刺し…。一滴の血を掛け合わせる…。


 「ルイス…。彼女達と一番楽しかった頃をイメージして帰ってきてほしいと念じて…。」


 一番楽しかった頃…。


 まだ彼女達に変化が現れる前…アレックスと出会う前のクリステル、シュー、エアロ…。一年くらい前のあの日。丁度、深々と雪が降ってきた日…。クリステルと手を繋ぎ…、シューは降ってきた雪を鼻の上にのせて…エアロは寒いからと俺のズボンのポケットに手を入れ歩いていた…。


 3人に案内され、俺の家に入れば…、誰も居ない家がたくさんの蝋燭とたくさんのキラキラした装飾品で飾られていた…。何の記念日とかでなく、3人が俺のために用意してくれて… サプライズパーティーを開いてくれた…。それが何よりも嬉しく… 何よりも楽しかった彼女達との最後の思い出だったから…。


 そう思い出に浸ると。俺達の血がだんだんと大きくなり…。赤から白の液体と変わる…。そして白から虹色の光となり…。3人を包む…。


 「綺麗…」


 「す、凄いのじゃ!!のじゃ!」


 ヒナルもスルトも無意識の内に声を出している…。


 やがて、その虹色はクリステル、シュー、エアロのそれぞれの形を成していく…。

 やがて虹色が真っ白に輝きだし辺り一面が眩しく光りだし…。3つの天空まで伸びる光の柱を立たせる。


 やがて、光が徐々に消え出すと…。


 「あぁっ… ははは!!!あいつら…!!」


 「うんうん!!うん!!!」


 「ほぉわあああああっ!!やるのじゃ!!母のおかげじゃの!!」


 「うん!とりあえず成功かな…」


 3人の綺麗な肌が目に付く…。あれだけボロボロだった3人の綺麗な姿…。失ってしまったエアロの右足も、シューの左足も…完全に元に戻っていた。

 ふと目に付くのは シューの左足の擦り傷…。


 一年前のあの日…。たしかシューはふざけていて雪で足を滑らせて転んだ時の擦り傷…。俺が薬塗ってあげたから覚えている…。その傷と同じ傷が同じ場所にあった…。


 やがて、彼女達が…。



 「んっ…、あれ…。私は…!?」

 

 「あ、兄貴…。へ?兄貴!?なんで!あれ…?ボクの左足があるぞ!なんでぇ!?」


 「お兄様?…私は…助かったのですか…?」


 3人は目を覚ますが…、一番驚いたのはクリステルだった…。


 「シュー!?エアロ!?貴方達…。たしか死んじゃったと…!なんでですかぁ!?」




………。

……。

…。



 それから3人に今まで起こった事を説明した。俺とヒナルのふたりがけスキル…。血の複製により1年前の体に復元して甦った事…。

 アレックスと出会う前の…。汚される前の彼女達だ…。1年前のサプライズパーティーをしてくれた時にケガをしてしまったシューの傷がなによりの証拠でシューも覚えていた…。俺が傷の手当てをした事が何よりも嬉しかったらしく傷をずっと見ていたから覚えているとの事だった…。


 そして、俺は改めて彼女達に謝る…。


 「あの日から、お前らに目すら合わせるのが嫌で逃げていた…。今度は俺が守ってあげるよ」


 そう言うと3人は泣きだす…。そして俺は…。


 「今までのは悪夢だったんだよ。もう悪夢は忘れなよ?サプライズパーティーの後からずっと悪夢だったんだよ…。だから… お帰りなさい!」


 「今までごめんなさい…。ごめんなさい…!」


 「兄貴…。ただいま!!本当にただいま!」


 「お兄様…!はい!!ただいま帰りました!」


 3人は泣いている…。勿論…俺も泣いた…。ヒナルもずっと泣いていた…。


 俺達は色々振り回されたけどこうしてザマァしながら帰ってこれたんだ…。回り道をしたけど皆で帰ってこれたんだ…。


 大切な仲間達とこれからも…。ずっと…。


 



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