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67 勝利と代償…


 エアロとシューの声に耳を傾けてあげれなかった…。もっと早くあいつらのに…。


 「ルイ…ス…。彼女達の死は無駄にできません…」

 「ああっ…。くそっ!!でも…」


 「お兄ちゃん…。あ、あれ…!」


 ヒナルがまたあのドラゴンのような生き物に向け指を指す…。


 そのドラゴンみたいな異様な生き物の口が赤く染まった光が集まり…。


 「おいおい!!!あれはなんだよ!?」


 ドラゴンのような生命体の口から一気に一直線に伸びる魔法みたいな閃光が放たれる。


 それは一瞬だった…。放たれた場所は城よりも向こう側にある山の麓…。辺りがバチバチと電流のようなものを帯びていて、その山の中心にぽっかりと大きな穴が空いている。


 「あんなの食らえば一溜りもないぞ!」


 そのドラゴンのような生命体をみれば、硬直状態のように口を閉じている。


 「ルイス!ルイス~っ!ちょっと来るのじゃ!!」


 その時、安全な民家に隠れていたスルトが顔を出し俺を呼ぶ。その呼ばれた方へと向かうと…。

 俺の母さんが…。


 「んっ… ふぅ…」


 ゆっくりと目を覚まし体を起こす。


 「か、かあ…さん?」


 「…ルイス!? ルイスなのね!?それとスルト…愛しのスルト…私のスルト…」


 母さん…が目に涙を浮かばせながら泣いている。うん…俺を育ててくれた母さんだ…。


 「本当に母さんなんだな!?」


 まさか、本当に母さんが…。俺を育ててくれた母さんがここにいる…。夢を見ているみたいだ…。


 「もしかして…我の母上…?」


 「えぇ…、貴方達の事は憑依されていた時もずっと見ていた…」


 母さんはゆっくり立ち上がり…。頷く。


 「っつ… こうはしていられない…ラグナログを止めなくては…」


 「ラグナログ… ラグナログって!?」


 その言葉には聞き覚えがある。いや、聞き覚えでなく…。それは俺の育ての親父…。


 「あのドラゴンの事じゃな!?」


 「えぇ…、あれは私の夫だった生命体…。もう人間には戻る事のない成れの果て…、もう手遅れだわ…。だから…ラグナログを…倒さなければ…」


 「ま、待つのじゃ!? 母の旦那様という事は…。我の父なのじゃ?!」


 「えぇ… ごめんなさい…スルト…。今まで酷い事をさせてしまったわ…。操られていた…といってもこの首輪は私が作成したの。だから…」


 そう言うと母さんはスルトの首についている封の首輪に手を触れる…。その首輪は赤黒く光るとパリンっ!と音を立てて崩れる。崩れてすぐに スルトの体が光りだし…。そして…。


 「ぁぁぁ…あああっ…。お、思いだしたのじゃ…全て思い出したのじゃ!!うんうん!懐かしいのじゃ!」

 

 スルトは思いでを懐かしむように昔の事を思い出していく様子が分かる。


 「わかるのじゃ!母だと分かるのじゃ!!あの時…迷子になってごめんなのじゃあああ!!」


 スルトは母親に抱きつくと…母さんも優しく抱き寄せる…。


 「思い出したのじゃ!優しかった母も厳しかったけどいつも可愛がってくれた父も。そして…、そして我…自分の事も思い出したのじゃ!!」


 スルトの顔はニコニコとしていて更に今まで以上にイキイキとしているように見える。

 

 「良かったな… スルト…。ところで母さん…。あれはなんで動かないんだ?」


 俺は向こう側にいる口を閉めたまま微動だもせずに、ただじっとしているラグナログを見て母さんに問いかける…。


 「高濃度の魔力を撃った後は暫く動けないみたい…。それからまた魔力を撃つのに15分くらい…。この魔力を撃つ時に口を開ける…。」


 母さんはラグナログを見ながら…。


 「ただ、その時がチャンス…。口を開けた時を見計らって攻撃にでるといいわ。何せ弱点はあの口の奥側だから…」


 母さんは昔と変わらず、優しい表情でニコっとする…。


 「そっか!わかった!」


 母さんは、そう言うとクリステルの方へ向かう…。


 「後、クリステル…。私のせいでひどい目に合わせて風しまいごめんなさい…。全ては私の責任…。あんなやつに一時的にスキルレンダーしてしまわなければ…。ルイスも勇者のままだったし…貴方達との関係も…。」


 「大丈夫です…。それにお母様がいなければルイスは大切な人達と巡り会えなかったでしょうし…」


 それでも、何度もクリステルの方を見てしっかりと謝る母親…。でも母さんが悪いわけじゃない…。

 しばらくすると、母さんはヒナルの方を見て…。


 「気になっていたのだけど…。もう一人の聖女様?名前は?」


 「私は…、ヒナルです。偶然こちらの世界に来て実のお兄ちゃん…ルイスに助けてもらいました…。あなたの事は日記を見て知りました…」


 「じゃあ…、ルイスも見たのね?ならたまたま実の妹にに会えたわけね…」


 「あぁ…。事実は全て知っているよ。でも俺の母さんなのは間違いないし、これからもずっと俺の母さんだ!ずっと育ててくれた事に感謝する!」


 「あと、ルイス…。ううん。レイジお兄ちゃんを拾って助けてくれてありがとうございました!あなたがいなければ実のお兄ちゃんに会えませんでした…」


 ヒナルがそう言うと、母さんはヒナルを抱き締めながら…。


 「ふふふ。良い子ね…。ルイスの妹なら… 私のもう一人の娘みたいなものよ?遠慮なくお母さんって呼んで?」


 「お、お母さん…」


 「そうそう!」


 母さんはヒナルを抱き寄せながらにっこりと微笑む…。しかし、その時!

 

 ガガがガガがガガ!!


 「!!」


 小さな揺れがして…。大きな地震が起きる。


 微動だにしていなかったラグナログの体が揺れ…。口が開きだした…。

 次、あれを食らえば一溜りもないだろう…。

 目の前にいたクリステルは…立ち上がり…。


 「私が隙を作ります…。ヒナルちゃんとルイスは私に強化魔法等、バフを宜しくおねがいし ます!」


 「我も行くのじゃ!力を取り戻した我は強いのじゃ!!」


 母さんはスルトを呼ぶ…。


 「スルト…。貴方にこの力を託すわ…。私は体が乗っ取られていたせいでしばらく力を出せない…。私の血を引き、魔王の血を引く貴方なら…扱えるはずだから…」


 母さんはスルトの頭に手を翳すと…円形のオーラが地面から現れる…。


 「それは黒の力…。皆さんをこれで守ってあげて…」


 「ふふふ!任せるのじゃああああ!!」


 ヒナルはクリステルや俺にセイクリッドシールドを展開。


 クリステルは魔法の熱を和らげるための魔法…。デマジックを周囲に展開…。


 スルトはそのまま一直線に飛行して飛んでいく…。


 「うらあぁぁぁぁぁぁっ!なのじゃ!!」


 スルトは手に黒の力を込めると手から黒い色のモヤがでる。その拳で殴りつける。


 「どぉりゃあああああ!なのじゃ!」


 まさに、それは渾身の一撃。何度も何度も殴り付ける。次第にラグナログはバランスを崩す…。 バランスを崩したラグナログは大きな口を開けながら倒れる。そして俺はそのぽっかりと開いた口の前に立つ…。

 聖剣エクスカリバーを構え…。ありったけの魔力を流し込む…。そして…。


 「セイントバストクロスっ!!」


 ラグナログの口の中からスドーンッと大きな音を立てる…。


 俺は「終わった…」と仲間の元を振り返る…しかし…。


 「ルイス!危ないっ!!!!」


 時が止まった…。ラグナログは死んでなかった…。


 ラグナログの口から一筋の小さな閃光が放たれる。先ほどよりは小さいが…当たれば確実にも…


 「ルイス~~~っ!!離れるのじゃああああ!!」


 「お兄ちゃ~~~~んっ!だめぇええええっ!」


 その時だった。何かが俺を吹き飛ばした…。


 (えっ!?)


 俺は地面に転がる…。転がっている時に声が聞こえた…。


 「ルイス…最後は貴方と一緒にいれて…幸せ…でした…。ありがとう…ございます。昔も今も変わらず好きです…。いえ、今の方がもっと…」


 「や、やめろ!やめろ!!やめろよ!!なんもお前まで!!」


 この声は…。クリステルだ…。最後の言葉を聞く前に…彼女は俺の身代わりとなり…。  


 「もういやああああああっ!!」


 ヒナルの泣き叫ぶ声がこだまする。


 「うわぁぁぁぁぁぁああああああっ!くそがあああああああああっ!!」


 俺は聖剣エクスカリバーを拾い上げ…。口が開いたまま硬直するラグナログに…。 


 「きぃぃえろおおおおっっっ!!」


 全魔力を聖剣に注ぎ込む…。


 (俺が油断したのがバカだった!!!クリステルっ!!俺は!俺は!!!)


 新しいスキルが脳裏に浮かぶ…。


 「刹那不動剣…」


 僅か0.1秒…。漆黒と光が混じり合う空間の中で俺は光の斬撃を繰り出す。光の斬撃は細かな粒子となり爆発する…。


 大きな巨体をもつラグナログも一瞬にくだけ散るのだった…。それはラグナログ最後の意味でもあった。もう脅威はいない…。


 俺は辺りを見回す。クリステルが吹き飛ばされた場所を探す…。彼女を見つけると直ぐ様近寄る…。


 「だ、大丈夫!そんなの直ぐに治してあげるから!!」


 「ル…ルイ…ス…。お…お見事…でした…。私は…も…もうダメ…みたいですわ…」


 意識が朦朧としているのか、クリステルは視点が定まっていない…。


 「まだ諦めるな!まだ諦めるなよ!!!お前にもまだ もう苦しまなくても大丈夫だよ!って言えてない!」


 「さ、最後まで…優しい…ですね…。今まで…幸せ…でした…」


 クリステルはそのまま眠るように…


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 俺は苦しく、叫んだ…。しかし!その時、一瞬時が止まる。

 周りを見渡すかぎり、辺り一面が白色の異空間…。何故かそこには俺と…ヒナルだけしかいなかった…。


 「お、お兄ちゃん!?ここどこ!?」


 「わからない…。」


 奥の方から…。一人のいかつい貫禄のある男性と 10才くらいの幼女の姿が現れるのが見えた…

貫禄のある男性が話しかけてくる…。

 

 「勇気ある者よ…。そちは我を救ってくれた…。我はこれで旅立てる…。本当にありがとう…」


 と…。俺達は二人のいる方へと歩きだす…。

  

 

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