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54 勇者と素の王様?!

 俺はミランダに案内されて王間へと入る。

 正面には王様がいて、すぐ近くにはミランダの父さん、カノープス隊長もいる。


 「勇者ルイスよ。そなたから話があると聞いた。よく来てくれた」


 「はっ!」


 「ルイスよ。そう緊張せんでいい。普通に話しても良いぞ。ワシも疲れるからのう…」


 「いえ、そうはいき…」


 「これは王命だと言ったとしてもか?」


 王様の鋭い表情に冷や汗がだらだら溢れそうになる…。


 「わ、わかりました!」


 「敬語なぞいらぬ!!と言えば良いか?」


 王様の目付きが更に怖くなる。な、なんなのこの王様。無礼な態度取られるの慣れてるの?マゾ

なの!?


 「わ、わかった!!」


 「ふぅ~、それでいい、それでな。」


 王様はいきなり足をくみはじめて、腕をくみ始める


 「は、はいー?!」


 た、態度やばいって!どっかの盗賊のボスだよこれ!玉取られるって!たま~!!


 「おい、ワリーな。これが俺の素なんだよ」


 「めっちゃ威圧感ある!」


 「ははははっ!!それでいいんだって。フレンドリーでよろしく!」


 王様は凄い高笑いする。


 「でよ?どうした?何かあったんか?」


 「ぶ、無礼を承知で…」


 「あ~、そんなかたっくるしいのいらねぇ~。無礼も承知もくそくらえだ。フレンドリーっつったろ?」


 王様はガハガハ!と笑う。本当になんなの!?マフィアのボスだよ!ん?マフィアってなに?


 「ああ。これまでの経緯を話す。王国にとっても重要な事だから…」


 俺は、ホーエンという女神崇拝教の一人の魂が自分の育ての母親かつ仲間である魔族の少女の母親であるメローズに憑依してしまった事。憑依しながら忍者の里もエルフの国もホーエンが元凶だった事。

 スキルレンダーのジョブを持つメローズは俺の勇者のジョブやスキルを悪用されないようにアレックスに渡すも、アレックス自信が自分の欲望のために力を使い、挙げ句にはホーエンの言いなりになっていた事。

 そして現在、数名の抜忍と共に魔物を大量に作成していつか王国に攻める機会を伺っていると話をした…。


 「そんでヤツにどう対処していくって事だな?」


 「ただ、ホーエンは霊体。他の人に憑依する危険性もある」

 

 王様は足を前に出し、大の字に足を伸ばす。


 「あー、それなら聖女を使えばいいだろうなぁ~」


 「その辺は俺の大事な仲間のヒナルがいるから、なんとかなりそう」


 そう言うと、王様は首をゆっくり左右にふり…


 「んにゃー、それは無理だろうな」


 「え?大聖女でも!?」


 「あの子の情報は見させてもらってるんだがなぁ~、あの子にはエクソシストの能力がない」


 幽体を完全に浄化するにはエクソシストの能力がいるらしく。聖女という類いでも全員が同じでないようだ…。ヒナルはどちらかと言えば回復スキル、攻撃スキル、デバフの解除のスキルを保有するが、浄化魔法はダメみたいだ…。


 「あの子には無理かもだけどな~? 一つだけ方法はあるぞ?」 


 「それは??」


 「ルイスが乗り気になるかわかんねぇけど… それしか方法はねぇんだよな…」


 王様は上を向き天井を見上げる。


 「あぁ、ルイスがいいのならだけどよ?」


 それからしばらくして、王様は俺をみる…。


 「聖女クリステルならなんとかなるかもしれねぇ…」


 「はっ?!」


 今更、あいつの話聞きたくないんだけどな…


 「俺もイヤだぜ?寝取られて汚れちまったやつと一緒にやらなきゃいけねぇって…。俺でも死ぬぞ?」


 ハッキリしてる王様だ!


 「でもこれは国の存亡に関わる問題だ。悠長な事は言ってられねぇ… そこでどうかルイス…。もし王国にやつらが攻めてきたら…我慢して一肌(ひとはだ)脱いでくれねぇか?」


 「…」


 「イヤなもんは分かる。ただ一緒にずっといろというわけじゃねぇ…」


 「…」


 「そのな?ルイス…、お前の好きなやつのために我慢してくれ?」


 そうだった…。今はヒナルもいる。コタースもスルトも… ミランダも…。それからフレアやケアル…。年上だけど友人になってくれた仁さん…。彼らを… 助けたい。なら…。


 「わかった。俺が守りたい人達の為だ」


 「助かるな…。本当にありがとう…」


 王様はそういうと姿勢を正して仕事モードに戻る。


 「今日は色々、すまなかったな。ではまた何かあれば伝えてほしい!」


 「わかりました!」


 王様のオンとオフの切り替えの凄さに驚きつつも城をでるのだった。



………。

……。

…。



 王の間を出て暫くするとミランダが…。


 「王様にはびっくりしたしょ?!」


 「ああ!まったくだ!」


 ミランダは両手を後ろに持っていき歩きながら…


 「あれはね?知り合いや友人にしか見せないみたいだよ?」


 「そうなんだ?」


 「昔はどこかの冒険者だったらしく、仲間…、ううん…恋人だった魔族が酷い目にあったらしく、ずっと魔族追放に異議をとなえていたらしいの。でも、その恋人が死んじゃってね…」


 あの王様にもそんな過去が…。


 「だから、王様は努力してここまで上り詰めた…。私も初めてスルトちゃんを見て、良く分かったよ。魔族…、ソロモン族の皆は普通なんだ…ってね…」


 じゃあ、王様も魔族と共生の道を考えていた。それに対して魔族の命を弄ぶ女神崇拝教のホーエンを許すはずがない…。逆もしかりか…。


 「ルイス君?」


 「ん?」


 ミランダはもじもじしながら話かけてくる。照れ臭そうに目線をそらして…。右目にある泣きほくろがよく見える…。


 「今日はありがとう!明日のお父様との試合!必ず勝ってね!」


 「ああ!勿論だ! 後、今日はありがとう!」


 そう言って、ミランダはにこにこしながら手を振る。俺も手をふり、見送られながら俺はホテルへと戻る…。


………。

……。

…。 

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― 新着の感想 ―
ふと王様の雰囲気からCV:小山力也に脳内変換して会話を読むと凄くシックリきたwww
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