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53 これからの事とミランダのお父上…


 転移スクロールで戻った俺とヒナル。スクロールを使う前にしっかり一番思い出に残っていた場所はやっぱりホテルのベランダだった。ヒナルは王国に転移してすぐに…。


 「やっぱりここだったね!相思相愛ってやつ?それとも兄妹だから?」


 とイタズラしてくるような表情で口元を緩め、にぃ~としてくる。


 時間はもう夕方…。俺達の帰りを待っていたスルトが俺の胸へと向かって強烈なダイブをして突撃してくる。


 「遅いのじゃ~!遅いのじゃ!」


 「ごめんごめん!」


 スルトの後を追いかけてくるように、コタースとフレア、ケアルもやってくる。


 「ヒナル~っ、なんかメスの匂いがするよ~っ。何ていえばいいのかな~。こう~なんていうか~っ…、こう!!」


 いや、全く意味が分からないが、コタースの発言にドキッとしてしまう。続けざまにフレアとケアルが…


 「ふんっ、どうせヒナルをたぶらかして危ない事していたんでしょ!!せっかく私がデートに誘おうと思っていたのに!!」


 「姉さん…、ルイス兄さんの事…好きだった…です?なら、姉さんと私は…ライバル…です」


 この二人ともここに来てから一緒に買い物をしたり少し仲良くなった。それでもケアルは何故か突っかかってくるけど…。どっちか分からないのだ。


 「皆に伝えたい事がある…」


 「これは私たち二人に関わる事…」


 俺とヒナルの声に、皆が話をやめて聞く姿勢を作ってくれている。これから、皆に俺とヒナルの関係を伝える。これは、ここにいる全員に関わるもんだいにもなる。


 俺の育ての母親でもありスルトの母親の体が女神崇拝教の一人に憑依されている事。そして、今、仁さん達が追っているスザクと黒ずくめの赤い髪をした女性。

 これも確証は定かでないけど、王国を攻めるために何か仕掛けようとしている事。そうなればコタースの住むこの王国もエルフ国みたいに滅ぼされてしまう。その規模は何千人と被害が出てしまう事。

 そういう話をする。そして俺がヒナルと同じ世界から転移してきた本当の名前はスガ・レイジという異世界の人で、ヒナルは俺の実の妹だという事。


 「我の母が…、でも母も父も記憶がないのじゃ…」


 スルトは多分、女神崇拝教のホーエンが一時的に封の首輪を使い記憶の遮断とスキル等を使えなくさせているんじゃないかな…。


 「じゃあパパが探しているスザクと黒ずくめの女がここを攻めてくる可能性もあるってこと?!」


 「父上…大丈夫…ですか…。不安になる…です」


 俺はフレアとケアルの頭をぽんぽんと軽く叩き…。


 「そうならないようにするさ。俺がそれを阻止したい。育ててくれた母さんもいるし、何よりお前達の父には世話になったから…」


 「ルイス兄さん…ありがと…です…」


 「ふ、ふん…。あんたにしては…その…何て言うのかな…安心してまかせられる…よ!だからっていい気になるんじゃないよ!!」


 「ああ!!」


 するとコタースはが俺に話かけてくる。


 「もしも~、攻めてきたら~っ、何か策はあるの~?相手は幽霊とそれなりに強い元忍者なんだよね~っ?」


 そう…。それが問題だ。スザクに関してはなんとかなるかもしれない…。でもホーエンも攻めてきたら…。ホーエンは育ての母親に憑依している可能性もある…。それがホーエンなら厄介だ…。


 「霊体なら~聖女様のスキルでなんとかなるかも~?」


 あぁ…そうか!その手があるのか!?

 俺はヒナルに目を向ける。ただあまり好きな恋人を危険な目に合わしたくないが…


 「もし攻めてきたら私がやってみる?」


 「…」


 返事に困ってしまう…。


 「一応、これでも大聖女…。お兄ちゃんの役に立ちたい!お兄ちゃんと一緒に横で戦うよ。それでスルトやレイジお兄ちゃんの育ててくれたお母さんを救えるなら!」


 「ヒナル…、お主…」


 ヒナルの言葉に沈みぎみだったスルトの表情がみるみるうちに微笑む。


 「わかった。王様の所に報告に行ってくる!」


 エルフ国が崩壊された以上、この国も、いつ攻められてもおかしくない状態だ…。まずは明日報告に向かう事にする。


 「お兄ちゃん!夜にそっちいくね!」


 ヒナルはニコニコしながらべーっと舌を出す…。


 「あ、ああ!」


 その夜、俺達はまた、めちゃくちゃXXXをいっぱいした…。ヒナルの性欲やばすぎて途中寝てしまって怒られた俺…。



………。

……。

…。

 


 翌朝、国王に面会をするため、一人で王国にやってきた。ミランダが待っていてくれて、一緒に面会時間まで応接間で待機する。


 「ルイス君。あの時はほんっとありがとう!」


 「いいよいいよ!でもあの時は多少のケガだけで済んだみたいで良かった。無意識のうちにスキルを使っていて、その負担が掛かって記憶が一部忘れたみたいなんだ…」


 「ううん!それでも助けてもらったのは事実だし」


 ミランダは座ってテーブルに肘を乗せ両手で頬杖をつきながら、俺を見る。まるで白馬の王子様を見るような顔で…。


 「それと、こうやって二人っきりで話す時間がなかったからね…」


 ミランダはニッと笑い…


 「仲間の女の子達、ルイス君の事好きなんだよね?」


 「うん~どうなんだろ? 一人とは仲良くやってるけどね」


 「そっか~!私もその仲に入ってみたい!!」


 「えっ?!」


 「実は、この王国の護衛騎士になったのも、いつか勇者として来るルイス君とまた会いたかったからなんだ~」


 「じゃあ、ずっと俺の事を待っていてくれたの?」


 「うん。今、こうして私の王子様が来ている…。すごく嬉しいよ!」


 そっか…。俺の事をずっと待っていてくれたんだ…。


 「だから、もし、ルイス君やその子がOKしてくれるなら、私も輪に混ぜてよね!」


 その時だった。一人の大男が応接間に入ってくる。年は50前半ぐらい…、全身白銀のフルアーマーを装着して、金色の短髪で顎にはちょび髭。かなりできる男だと思う。


 「あっ!! カノープス隊長!!」


 ミランダはカノープス隊長と大きな声をあげる。やがてカノープスは険しく厳つい表情で俺の方を見て…。


 「お前が真の勇者か!」


 「はい。自分でも驚いています」


 「そうか。俺はこの護衛騎士団の隊長、カノープスだ!」


 男は右手を差し出してきた。俺も彼の手に自分の手を添えて固く握手をする。


 「まず言いたいことは…」


 ごくり。何を言われるのだろうか?


 「6年前に娘を助けてくれてありがとうな!でも俺の娘はやらんぞ!!」


 「へっ?」


 横にいるミランダが…

 

 「ちょっと!お父様!!何言ってるんですか!?」


 「こんな何処の馬の骨とも知らんのに娘をやれるか!っていう事だ!それと今は職務中だぞ!隊長といえ!」


 あ…。ミランダのお父さんだったのね。


 「勇者ルイス。そこでだ。明日の午前中に御前試合を行いたい」


 ま、まじすか!?!?カノープス隊長は本気だ…。ここで断ったら… ダメだよね?


 「わ、わかりました!」


 「勿論、一対一で手合わせを頼む。娘に相応しいか見てみたいからな」


 「ルイス君が勝つに決まっていますよ」


 ミランダは然り気無く言うが、それ煽ってるよ!


 「むむむっ…!まぁ…良い。場所は王国の兵士達の練習場だ。来てくれるな?」


 「わかりました!」


 そう言うと、カノープス隊長はニヤリと笑い。そのまま去っていった。


 「ごめんね?お父様が…。でもお父様だけど、雰囲気的に何故か楽しそうだったよ?」


 「へ?」


 「あれは絶対嬉しそうだった!うん…」


 「そうなのか?」


 ミランダはニコニコしながら…


 「絶対勝ってみせてね?」


 「ああ!受けたからにはね!」


 それからしばらくして王様へ会う時間になり、俺達は王間へと向かった…。


………。

……。

…。 

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