52 今度はこっちの番。大切な"家族"と"仲間"と一緒にざまぁしますね!
深い、深い愛の海を泳ぎ疲れて、どれくらいの時間が経ったのだろうか……。 地下室での衝撃の告白の後、俺たちは導かれるように二階の寝室へと上がり……誰にも邪魔されない、甘く狂おしい、二人だけの夜を過ごした。
小鳥のさえずりと、窓の隙間から差し込む眩しい朝日で、ゆっくりと意識が浮上する。 気怠いけれど、心地よい疲労感。 俺の腕の中には、温かくて、羽のように軽い愛おしい存在がすっぽりと収まっていた。 ……ヒナルだ。
激しい愛の痕跡を残すように、ベッドの白いシーツはぐしゃぐしゃに乱れ、所々に、彼女が初めての純潔を捧げてくれた証である、うっすらとした赤い血の花が咲いていた……。 ヒナルは、俺の胸にすり寄るように顔を埋め、赤ん坊のように無防備な顔でスースーと寝息を立てている。窓からの光が、汗ばんだ彼女の透き通るような白い素肌を照らし、神々しいほどに綺麗に見えた。 その肩に、俺が昨夜つけた赤いキスマークが残っているのを見て、胸の奥がキュンと甘く締め付けられる。
「……ヒナル? ヒナル、朝だよ」
俺は、愛おしさが限界突破して、彼女のほっぺたを指で優しくツンツンと突いた。
「ん…… んっ……? う~ん……」
ヒナルは小さく身じろぎをして、長いまつ毛を震わせながら、ゆっくりと重い瞼を開ける……。 潤んだ黒い瞳が俺を映すと、彼女はふにゃりと、まるで陽だまりのような、甘くとろけるような極上の笑顔を浮かべた。
「……おはよ、お兄ちゃん」
「おはよう。体、痛くないか?」
「えへへ……。ちょっと腰が痛いかも。……だって、とうとうしちゃったね……? 私、実の妹なのに……。お兄ちゃん、凄く優しかったけど、最後の方は激しすぎだよ……」
ヒナルが上目遣いで、少しだけ責めるように、けれど嬉しそうに俺の鼻先をツンと突いた。 俺は顔から火が出るほど照れて、頭を掻いた。
「ご、ごめんごめん! 俺も、こんなの初めてで……その、ヒナルがあんまり可愛くて、我慢できなくて……」
「……ううん。嬉しかったよ。……レイジ、お兄ちゃん……」
……あっ。 そうか……。俺は、ヒナルの居た向こうの世界(日本)では、『須賀レイジ』って名前だったんだ……。 その懐かしい響きが、ヒナルの甘い声で紡がれると、俺の存在が完全に肯定されたような、圧倒的な幸福感に包まれる。
「……『レイジお兄ちゃん』か。いい響きだな。……もう一回、呼んで?」
俺がおねだりすると、ヒナルは悪戯っぽく笑って、俺の首に腕を回してきた。
「レイジお兄ちゃ~ん」
「何?」
ヒナルは俺の目をじっと見つめて、しばらく間を置いて……。 俺の耳元に唇を寄せ、とろけるような甘い吐息と共に囁いた。
「……だーいすきな、私のおにぃ~ちゃん!」
チュッ、と。 柔らかい唇が、俺の唇に優しく重なった。 俺はヒナルの絹糸のような黒髪に指を絡め、その小さな頭を愛おしむように優しく撫でた。
「……お兄ちゃん。私ね……。もし、お兄ちゃんが生きていたら、こうして頭を撫でてもらいたい! って……向こうの世界で、ずっと、ずっと夢みてて、ずっと思っていたんだよ~……」
ヒナルが、俺の胸に顔をスリスリと擦り付けながら、甘えた声で言う。
「……夢が、ひとつ叶った?」
「うん! ……あんなに絶望してた異世界召喚だけど、今は凄く幸せ……。神様に感謝しなくちゃ」
「……良かった。俺の方こそ、ありがとうな。俺はずっと、自分は天涯孤独の一人っ子だと思っていたから……。昔、クリステルの奴らに姉妹がいてさ。兄弟っていいなぁ~って、ずっと羨ましく思ってたんだ」
俺は、ヒナルの温かい背中を撫でながら、過去の孤独を吐露した。
「でも、俺にも夢が叶ったよ。まさか、世界一可愛い妹ができて、しかも、その妹が俺の最愛の『彼女』になるなんて、夢にも思いもしなかったからな」
俺が優しくヒナルを見つめると、彼女は顔を真っ赤にして照れた。
「……ねぇ、お兄ちゃん。私とお兄ちゃんを産んでくれた、俺の本当のお母さん(日本の母親)って、どんな人だったんかな? 俺、記憶が全然ないんだ」
「えっとね、凄く優しかったけど、怒らしたら世界一怖かった! いつもニコニコしながらガチギレするから、超やばかったんだよ!」
「ん? ガチギレ? 超ヤバ?」
「あ、そっか……。私の居た世界の、日本の若者言葉だからね!」
ヒナルはそう言うと、「えへへ」と、最高にキュートな笑みを見せつけてくる。 とても可愛くて、見ているだけで胸がポカポカと温かくなる。ずっと見ていたい、そんな笑顔だ。
「それで、どんな意味の言葉なの?」
「ん~っとね? 『ガチギレ』っていうのは、本気でキレる(怒る)って意味!! あと~、『超ヤバ』は、常識を超えて本当にやばい! っていう意味だよ~」 「なるほどな。じゃあ、俺もそういう言葉を使ったら、ヒナルの居た世界(日本)の若者として、通用するかな?」
「もぉ、何言ってるの? お兄ちゃんの産まれた所は、その日本じゃ~ん? 立派な日本人だよ?」
「あっ! そういえばそうなるよな! あはは! 俺、ずっとこの世界で生きてきたから、忘れてた!」
俺が大笑いすると、ヒナルも嬉しそうにクスクスと笑う。 本当に、俺は幸せだ……。 それから俺達は、日本の事、これからの事、色々な甘い話をして、名残惜しいけれど、ベッドから体を起こした。
「さぁってと、そろそろ起きるか……。これ以上遅くなると、王都の皆が心配するからさ?」
「うん! ……あっ!! お兄ちゃん、待って! シーツが!」
「ん? どうした?」
「シーツがべちゃべちゃだし、私の血がついてるから! 恥ずかしいっ!」
「あっ……」
「……だって、お兄ちゃんが激しすぎだもん……バカぁ……」
ヒナルが顔を真っ赤にして、枕で顔を隠す。 流石にこれを放置して帰るわけにはいかないから、二人で井戸から水を汲み、キャッキャと笑い合いながら、仲良くシーツを洗うことにした……。
………。
……。
…。
洗濯したシーツを庭に干してから、俺達はもう一度、あの地下の『隠し部屋』へと降りていった。 俺をここまで育ててくれた、優しい母さんの事。その過去の真実等、まだ何か分かる事を探すつもりだ……。
再び地下室に入り、めぼしいものを色々漁る。 すると、引き出しの奥から、射影機で映した、俺の『育ての母親』の古い写真が出てきた。 燃えるような赤い髪で、黒いドレスが良く似合う、強気だが優しげな美女だ。
「これ、お兄ちゃんの育ててくれたお母さん?」
「うん。……病気で死んじゃったけど、凄く強くて、優しかったんだよ」
「……あれ? このお母さん…… 誰かに似てる……。うん……あ! スルトちゃんを、そのまま大きくした感じじゃない!?」
「えっ……?」
ヒナルの言葉に、俺は写真をマジマジと見つめた。 ……確かに、良くみると……。勝ち気な目元も、凛とした輪郭も、そっくりだ……。それに、この珍しい紅蓮の赤い髪……。記憶の中でしかないけど……。言われてみれば、言われるだけそうにしか見えなくなってくる……!
更に部屋の奥を探したら…… 厳重な鍵のかかった箱の中から、母さんが書いた字の『古い日記帳』を見つけた。 俺とヒナルは、肩を寄せ合い、二人でその日記を読んだ……。
そこには、俺の知らなかった、衝撃的な真実が記されていた。
日記によると、俺の母さんは、とある『女神崇拝の狂信的な教団の幹部(ホーエンという男)』に追われていた。 ホーエンは、禁忌であるホムンクルスを作成する技術を復活させ、自分よりも魔力が高いソロモン族(魔族)を完全に根絶やしにし、実験体にしようとしていた。 そして、母さんの実の娘……『スルト』が狙われていたのだ。スルトには、死んだ夫(魔王)の強大な力を引き継いだ、本物の『魔王の力』が眠っているから。
「ちょっと待って! お兄ちゃん……! スルトちゃんって、やっぱりあの子!?」
「あぁ……! スルトは、俺の義理の妹だったんだ……!」
日記は続く。 しかし、母さんは逃亡の途中でスルトと離れ離れになり、行方不明になってしまう……。絶望して娘を探していたそんな時、魔物の森で、一人の幼子が倒れているのを発見する。……変わった服装(青い服)だったから、明らかに『迷い人』だと分かった。それが、俺だった。 母さんは、俺と一緒にこのメルドアの街に来た。村の皆は暖かく迎えてくれた。 俺が目覚めた時、名前を聞くも、幼い俺の日本語の『レイジ』という発音が聞き取れず、仕方なく響きの似た『ルイス』と名付ける……だって『ルゥイズィ』って言うから。 あれからスルトを探しているが見つからない……。
更に、ページをめくると、五年前のあの日……俺の適性検査の日の記述があった。
『あの子には、神話の勇者の力があるのが分かる。まだ目覚めてないけども……。この年で、回復魔法や光の力を無意識の内に使えるようになっている。でも、その強大な魔力の代償か、スキルを使うと少し前の記憶が飛んでしまうらしい……』
「……お兄ちゃんは、この時からもう勇者の力があったんだ……」
「だから昔、俺は魔法のスキルを使っても、すぐに忘れていたんだな……。無能なんかじゃなかった」
そして、運命の五年前。 『問題が起きてしまった……。きっかけは、ルイスがとある少女を助けた時に、光の魔法を使ったのを、たまたま見られていた。そう、潜伏していたホーエンに、私の存在と、ルイスという「勇者」の存在を知られてしまった……。』
『このままでは、ルイスが実験体にされてしまう。あの子の勇者の力を、一時的に誰かに移さなければ。私の禁忌のスキル【スキルレンダー】を使い、ルイスの力と記憶を一時的に切り離し、近くにいた男の子に一時的に移す事にした……。そうすれば、見つかってもあの子だけは無事だし、利用されないだろう……。適性検査の日なのに、みんなから馬鹿にされてしまうね。本当にごめんね……ルイス……』
「……俺が無能の烙印を押されたのは、母さんが……俺を、ホーエンから守ってくれたから……!?」
「そして、たまたまその力を受け取ってしまったのが、あのクズ(アレックス)だったってわけね……」
更に日記の最後のページ。そこには、乱れた文字で、最悪の絶望が記されていた。
『更に最悪は続く……。今、私の体の中には、ホーエンの魂がいる……。ホーエンは王国の騎士団に捕まり処刑されたけど、魂の呪詛となり、最も魔力の高い私の体を蝕もうとしている……。あの私が力を与えたアレックスという男の子を引き込み、王国を内側から滅亡させようとしている……』
「母さんが、乗っ取られている!? アレックスを引き込もうとしている?」
「じゃあ、まだお兄ちゃんの育てのお母さんは、生きてるの!? あの狂ったホーエンの支配下で!?」
『……それに、あの男の子はかなり常識がずれているし、女の子を手当たり次第に洗脳して凌辱しているという噂も聞く……。勇者の力を与えておくのは危険すぎる……。彼がどこにいるのかも分からない……。このままでは、私の話を知っているホーエンが、アレックスを利用してここにやって来るだろう……。そうなればルイスはもちろん、ルイスの幼馴染で、よくここに遊びに来ていた女の子達(クリステル、シュー、エアロ)も、彼のいいなりになってしまう……。どうすれば……ルイス、逃げて……』
「……ここで、日記は終わっている……」
俺は、震える手で日記帳を閉じた。
「……全ては、お兄ちゃんを守るため…… でも、すれ違って、全て最悪の結果になったんだね……。クリステルさんたちも、お兄さんの身代わりに……」
ヒナルが、口元を覆って涙を流した。
「……最近、王都でよく聞く、怪しい『黒ずくめの赤髪の女』の噂……」
「うん……、もしかすると……」
「あぁ! 間違いない。それが、身体を乗っ取られた俺の母さんだ! すぐに皆の所に行こう!」
俺の頭の中で、全てのピースが完璧に繋がった。 ホーエンという狂った男のせいで、俺は一旦、愛する母も、恋人も、親友も、名誉も……全てを失ったのだ!!
……ふざけるな。 そんな理不尽、絶対に許さない。
「……行くぞ、ヒナル。すべて繋がった!!このままでは超ヤバになる!!」
「……あははは!!それ緊張感なくなるよ『お兄ちゃん』!!」
俺は立ち上がり、ヒナルの手を強く握った。
もう、五年前の何も知らない『無能』な俺じゃない。 だから今度は俺が……、育ててくれた母さんをあの男から救いだし。 そして、『愛する妹のヒナルや、もう一人の妹の母さん、家族と、そして大切な仲間達と一緒に、ヤツとアレックスの全てを叩き潰して、痛快にざまぁする!』番だ。
俺達は、決意の炎を瞳に宿し、フィリシアからもらった転移魔法のスクロールを広げ……。 真実を伝えるべく王都へと飛んだのだった。
………。
……。
…。
--------------------
後書き…。
クライマックスに近づいているような雰囲気ですが、1章完結後も話は続きます。どこがハーレム!?言われたらあれなので先にお伝えしますが、1章はあくまでも、ルイス(レイジ)とヒナルにスポットを当てたいのでご了承ください。作者がやりたかった話です。
2章からは各キャラとのあまあまな展開もあります。この世界は一夫多妻が認められている世界だからです。ヒナルもそれは仲間ならと認めていく感じになります…。
まだまだ話は続きますが、ホーエン篇はあと少しで終わります…。
尚、近況ノートにてキャラクターイメージ図を描かせていただきました。下手くそですが、イメージだけつかんで頂ければキャラクターの表情など想像しやすいと思います。
どうぞ、気になる方は いいねやお気に入り登録、評価をしていただけたら作者の励みになります!どうぞ宜しくお願い致します。
後書き…。
クライマックスに近づいているような雰囲気ですが、1章完結後も話は続きます。どこがハーレム!?言われたらあれなので先にお伝えしますが、1章はあくまでも、ルイス(レイジ)とヒナルにスポットを当てたいのでご了承ください。作者がやりたかった話です。
2章からは各キャラとのあまあまな展開もあります。この世界は一夫多妻が認められている世界だからです。ヒナルもそれは仲間ならと認めていく感じになります…。
まだまだ話は続きますが、ホーエン篇はあと少しで終わります…。
どうぞ、気になる方は いいねやお気に入り登録、評価をしていただけたら作者の励みになります!どうぞ宜しくお願い致します。




