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45 勇者、王様に出会う…

 

 「どうしたのじゃ?深刻そうな顔をしているのじゃ!」


 「あぁ…、なんでもないよ」


 スルトは可愛い大きな目をくりくりさせながら体を斜めにかしげながら俺を見る。


 「何か困っているのじゃ…」


 「本当になんでもない。それよりスルトはどうだったんだ?適性検査さ?」


 スルトは姿勢を起こして胸両手を腰に当て胸をはる。小さい胸がぴょこっと前に出て服の上からも形が分かる。


 「我は魔王だったぞ!!」


 「「「「え~~~~っ!!」」」」


 「何を驚いているのじゃ!!本当なのじゃ!」


 一番驚いていたのはミランダだった。


 「ち、ちょっとまって!魔王って世界を滅ぼそうとする魔族なんじゃないの!?」


 「変な誤解があるからもう一度説明するのじゃ!」


 ミランダに説明をする。魔族の本当の族名はソロモン族。今、この世界で人間に対して脅威を振るっているのは女神の暇潰しのためだけに遊び作られた魔族型のホムンクルスと人間により追害を受けてきて恨みを持った魔族。魔族という名前は本来ないただ一般的な種族。ただ魔力が高く見た目が魔物に似ているからというだけで嫌われてしまった種族だという。女神は人間族の中でも唯一魔力の持つソロモン族という種族を毛嫌いしていたという事だった。


 「そんな!?それが本当ならソロモン族はただ単に追放されて今に至るわけ!?」


 「そうなのじゃ!神官は女神のせいとは知らなかったみたいじゃが知っていたみたいだから我を普通に接してくれたのじゃ!ひかえおろー!ひかえおろー!なのじゃ!」


 「調子にのるな!」


 俺はスルトの頭を軽くぽんぽんする。


 「むぅ~!もっとするのじゃー!!あ!後、我の特性はソロモン族を束ねられる力…なのじゃ!あと、悪い特性が一つ見つかったのじゃ…。やっぱり記憶を封じ込められていたのじゃ…。それと力も全てじゃ…。お主達を助けられると思ったのにじゃ…」


 「ありがとうな。スルト!今のままでも十分だよ」


 俺は、またスルトの頭を撫でる。スルトはこゆれでも色々と頑張ってくれている。体が小さいのに荷物を持とうとしてくれたり、どんよりとしたムードな時も明るく場を和ましてくれている…。


 それから、隣にいて話を聞き終わるのを待っていたフィリシアが話かけてくる。


 「ルイス殿。すまないが、コタースの検査が終わったら王に会っていただきたい。これは両国の王命でもある。」


 ふぇ!ちょっと!両国の王様がって…!ついさっきまで一般人の俺だったんだぞ!?


 「俺が勇者だと判明したからかな?」


 「それもある。それと聖剣の話を聞いた事はあるか?」


 聖剣。女神が作ったとされる聖武具の一つであり。伝説の勇者パーティーが残した武具の一つ。昔の勇者が魔王と戦った際に残して、来るべき時代に備えて武具を色々な国で管理する事になった伝説の武器。

 

 「それが、この王国に納められていると?」


 「そうだ。これは正規の勇者にしか引き抜けないように魔法が掛けられている。もちろんアレックスも今まで何度も抜こうとしたらしいがな…」 

 本当の勇者じゃないなら抜けなくて当たり前か…。


 「その話も知っているのじゃ!!ただここでも歴史を変えられて伝わっているようじゃが…魔王ではなくホムンクルスなのじゃ!」


 ホムンクルスを倒すための武具?でも聖剣って女神様が作った聖武具だよな?わざわざ自ら作り出したホムンクルスを自らそれを倒すためにの武具を作る必要があるのか?これもスルトが言う通り単に女神の遊びのために作られたのか?


 じゃあ、今、あっこっちで活発化している魔物ってなんなんだ?


 う~ん…、わからん…。


 考えているとコタースが部屋から出てきた…。


 「お待たせ~っ!」


 「コタース!お疲れ様~!?どうだった~?!」


 「うん~っ!えっと~っ…」


 ヒナルとコタースの二人を見ていると、本当に友達同士に見えてくる。


 コタースのジョブは変わらず魔弓使い。ただ一つ詳しい事が1つ分かった。魔弓使い特有の魔力を大量に使うため今までスキルが扱えなかったようだ…。そのスキルは魔法付与だけでなく心眼のスキルも付与される。

 どんな遠くからでも狙った場所に矢を放てるという凄いスキルだった。これで彼女はもう無能と呼ばれなくて済むだろう…。


 俺達、全員の検査が終わったので、これから王様の元へと向かうことになる。


 「じゃあ行こうか…」


 「うん」


 俺はそっとヒナルの手を握る…。ヒナルは握り返してくれるが…どこか寂しそうな表情をする…。



………。

……。

…。



 先に、フィリシアから「王様に報告してくる」と話があり…。暫く待機をしていた。途中、仁さんやフレアとケアルとも合流した。伝説の勇者パーティーにもいた忍者のジョブを持つ仁さん…。そして仁さんと大魔導士の称号を持つペトロさんの娘である双子も王の間に案内されたので俺達全員はミランダに案内されながら、王の間に入る…。


 凄く緊張する…。


 目の前には髪が白髪の古稀を向かえたばかりの王様が玉座に座り、俺達を見ている。

 俺達は平伏して話を待つ。


 「そちが真の勇者で間違いないな…」


 「はい」


 「顔を上げてくれぬか?余にその顔を見せてほしい」


 顔をあげて王様を見ると凄くにこわかな表情の王様がこちらを見ている。


 「話しは大方聞いている…。余が早くアレックスの陰謀に気づいていればこんな事にならなかったのに… すまんな…ルイスよ…。」


 「いえ…」


 別に王様のせいではないのだが…。何か凄くむしゃくしゃしていた…。


 「魅了されてしまっていた3人の事も聞いている。これも全てワシのせいである…。どうか彼女達を責めないでやってほしい…。」


 「いえ、その件に関してはもう興味がないし私には関係ない事なので…」


 「お兄さん…」


 「ルイス…」


 「アイツに何かあったの?」


 「姉さん… シー…です…」


 4人は小声でひそひそと喋る…。


 「そうか…。」


 王様は目を閉じて…。


 「もしかしたら、いつか彼女達もお主にとって掛け替えないのない協力な仲間になるかもしれない…とだけは言っておく。操られて正気に戻った今の彼女達は誰よりも常にお主の名前を言っていた…。いつか必ず報われる事を…」


 俺は勝手にべらべらと人の気も知らずに喋り続ける王様にイラついているが…。ここは冷静に…。


 「大変無礼な事を承知で申し訳ないのですが…。私は聖剣についてお話を御伺いしてこちらに来ました…」


 王様は一瞬ビクッとする


 「そうか… すまぬ…。」


 王様はミランダに顔を向ける。


 「ミランダよ…。勇者を聖剣の聖域へと案内してほしい。」


 「はっ!」


 ミランダは一礼をすると、俺の方へ向かってきて「こちらへ…」と案内してくれる…。


 その後を俺達はついていく…。

 

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