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40 新しい小さな仲間…。

 

 ついに、王国にやってきた…。周りは円形の塀に覆われていて、中心部に大きい城が見える。俺が住んでいる街よりも賑わい、活気で満ち溢れている。たくさんの露店がずらりと並び、噴水では色々なパフォーマンスをしている人や、楽器を演奏して音楽を鳴らす人等がいる。


 「何度来ても凄い…です! あっちに可愛いアクセサリーある…です!」


 「ちょっとフレア!また無駄遣いしたら怒られるってーの!」


 「予算なら心配いらない…です。きっとルイス兄さんが払ってくれる…です!」


 「はぁ~?あんたねー…」


 いや、なんで俺なんだよ!


 「ルイス~ど~の?娘を物で釣ったら駄目で…ござるよ!」


 「し、しませんよ!?」


 一同が笑う。スルトは「あれなんなのじゃ!?凄いのじゃ!」と駆け回り、ヒナルは街の賑やかさかな言葉を失う…。でも楽しそうだ。

 仁さんは娘があっちこっち駆け回るからか一緒になり降り回されている。一方のコタースは…


 「…」


 「コタース?コタース?どうかした?」


 「ん~…、なんでもないけど~っ、ちょっとね~…」


 コタースは何かを気にしながら歩いているようにも見える…。


 「何かあったのか?何かあるなら言ってくれ?なっ?」


 「ん~…。ほら~っ…ウチってここから来た少年隊でしょ~…?その時の知り合いにあったら嫌だなぁ~って…。ウチ~、ルイスと会う前は魔力が上手く扱えなかったから~っ…少し苛められていたんだ~…」


 「そっか…、でも今のコタースは前とは違う。それに今は俺達がいなくてもレベルが上がってるおかげでスキルも使えるだろ?」


 「うん~…」


 「何かあったら俺がすぐに助けてやるから!」


 俺はコタースの頭を優しく撫でる。


 「うん~!ありがとう~っ!」


 コタースは俺の手を握ってくる…。彼女の不安な気持ちが手を通じて伝わってくる。


………。

……。

…。


 ヒナルとスルトは魔術学園に入る為に王国ギルドで手続きをしに向かう。それまでの間、俺達は待機する事となるが、仁さんは忍者の里から王国内に逃げてきている仲間を探しに酒場へと向かう。その間、双子の面倒を見る事となった。昨日、一緒にいる時は双子のせいか全く見分けがつかなかった二人。

 今の格好を見るとどちらがどっちか見分けがすぐつく。

 黒魔道士フレアは黒いトンガリ帽子をかぶり全身を黒色のローブで隠している感じ。髪は長く、だらんとしているためトンガリ帽子とよく似合う。

 白魔道士ケアルは真っ白なマントのついた猫耳フードのついた服と赤色の服を来ていて、茶色のバッグを肩から斜めにぶら下げている。髪はフレアがまっすぐおろしているのに対してケアルはツインテールだ。


 「ちょっと、変態!なにこっちジロジロ見てくれちゃってるのよ!」


 「うわー変態さんだー…です」


 ケアルの相変わらずツンツンした感じなのと、なに考えているか分からない感じでフレアは棒読みで言葉をくれる。


 「なによ!心配でもしてくれてるわけ?!ふんっ!嬉しくなんかないんだからね!」


 「でも姉ちゃん~…昨日、あいつカッコいいよね!って言っていた…です…」


 「んな…なっななななっ!んな事言ってない!誰もカッコいくない!!あんな変態カッコいいわけないし!なななななななっ!あ、あんたは何言ってるのよ!」


 「姉ちゃん…、焦っている…です」


 フレアのつっこみにケアルは何故か俺を見る


 「あ、ああああ、アンタが悪いのよ!アンタが!!」


 「な、なんでだよ!?」


 「察しなさいよね!ふんっ!」


 ケアルは怒っているようにも見えるが、顔の頬が少し赤身をおびているようにみえる。


 「あはははっ!ウチは~っ、ルイスのその困った顔が好きだなぁ~っ」


 横からコタースがそんな事を言ってくる。

 

 それにしても…。風が強くなってきて… 風が吹くと少し寒さを感じる…。


 「それにしても~風が強くなってきてるね…。もうすぐ冬だからかな~…?」


 「そうだね…。もうすぐ冬か~…」


 冬になると、この地域は雪が降る。冬になればまた寒い厳しい時期が暫く続く。特に俺の住む街は山間部にあるから尚更雪が積もりやすい…。


 その時、びゅ~~っと物凄い突風が吹く。俺達はちょっとだけ風に押されてしまい後ろへと倒れそうになる。たまたま目の前にいたフレアが俺の方へと倒れそうになる。


 「おっと!」


 「あ、ありがと…です。」


 フレアが被っていた黒のトンガリ帽子が外れてしまい地面落ちそうになるが…、直ぐ様キャッチをしてフレアに被せてあげる。


 「汚れたら大変だからね。危なかったね」


 「うん…です…」


 風はまだ吹いている…。コタースもしゃがみこみ…。


 「うっ~!風がつめたい~っ」


 なんて言っていた。


 あれ?ケアルは?と思いケアルがいた方へ目を向けると水路から何かを取ろうとしている彼女が目についた。


 「にゃーお!にゃーお!いま助けるにゃ~!」


 誰か落ちたのかな?俺はケアルの元へと駆けつける。しかし、体勢を崩してしまい…。ケアルは落ちそうになる…。


 「身体強化!速度強化!」


 俺は2つのスキルを使う。


 その時ケアルが落ちてしまうが…。俺は直ぐ様持っている荷物を置き、大きくジャンプして水路の水のない場所に着地する。ケアルは水路の縁石の縁に両手で捕まっている。高さは然程ないが、このまま落ちれば水浸しになってしまう…。俺はケアルの真下にいき…。


 「俺が下にいるからそのまま手を離しておりてこい!」


 「あ、アンタ!なにやってるのよ!」


 ケアルは俺を見る。手がぷるぷるしている。


 「いいから!大丈夫だ!!」


 「で、でも… うん…」


 そして、そのまま両手を離して 俺の元へと降りてくる。俺はケアルを抱き上げるように捕まえて…。濡れないように水がない場所に向かう。


 「大丈夫?」


 「ふん!大丈夫じゃないし!! ううん……それより猫ちゃんが!!」


 さっきケアルが落ちそうになっていた場所の反対側に真っ黒な黒猫の子猫がいる。


 「あの子猫か?」


 「あっ! うん!!」


 俺はそっと子猫に近づき…。腕と脇に挟める…。


 「あっ…!!」


 「少し待ってろよ?子猫を上に上げたらケアルも上げるからさ?」


 「うん!」


 俺は身体強化を使いジャンプして子猫を上に上げてからまた水路に降りてケアルを抱き抱えながら陸に上がる…。


 「よかったな!よしよし!」


 濡れていた子猫を鞄の中に入っているタオルで優しく拭いてあげる…。


 「無事で良かった…です。」


 「にゃ~ん!にゃ~ん!可愛いにゃ~!」


 二人とも俺が拭いてあげている子猫を嬉しそうに見ている。ふと、ケアルと目が合ってしまう。


 「な、何よ!可愛いんだから仕方ないじゃない!!」


 やっぱりケアルはケアルだった…。


 「アンタ…、その…。今回だけはお礼を言っておくから!!こ・ん・か・い!だけね!!」


 俺はニコッとすると…。

 

 「いい?!一度しか言わないんだなら! そ、その…、子猫ちゃんと私を助けてくれて… あ、ありがと…」


 最後の「ありがと」だけは何故か小声で言う…。


 「あ、アンタなんかロリコンできもいんだから!もう二度とと言わないんだからね!」


 「姉ちゃん…、嘘は良くない…です…」


 「う、うるさいわね!」


 二人を見ると凄く和んだ…。シューやエアロを思い出す…。あいつらは今、どこでどうしてるんだろうか…。たしかにアレックスとあんな事なってるなんて思わなかったし…。俺をあんなにも毛嫌いした…。ダンジョンでは置き去りにされた時は高笑いしていた…。


 嫌な事を思い出したけど、俺は頭をふり、二人を見て和んだ…。


 ちなみにこの子猫…。野良猫だったらしく、何故か、ケアルとフレアにこの黒猫を押し付けられてしまった…。名前も即決まってしまった。もちろん、ケアルが名付けた…。名前はクロになったけど…どうすんのこれ…。餌は?!まさか俺?!


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