37 魅了されていた3人… それぞれの想い…
~回復術士視点~
「3人の解呪… 終わりました…。後は彼女達がちゃんと現実に戻り復帰できるか…です。」
私は、一人の大男…騎士団の騎士団長をしているカノープスさんと話をしている。
「そうか。他には何かあるんか?」
「それと、どうやらあの偽勇者と一緒にいる状態で彼を仲間だと認識すると、認識した人の能力低下のデバフが見受けられました…。今はそちらも解かれている状態です」
本当に彼女達は可哀想なものだ…。検査の結果。やはり勇者から発せられた魅了のスキルによる影響だ。
「ったく…、信用していたヤツがああだったとはな!俺の娘があんなヤツの毒牙にかからなくて良かったぜ」
「ははっ、ミランダさんはお強いですから、無能…、いや居るだけで害あるやつなんかに絡まれたら逆に返り討ちにしそうですよ!」
「ったくだな!がはははっ!」
「でもミランダさん、何か、心当たりある方がいるとか…。噂話ですがね…」
「あー、ミランダから直接聞いたことあるぞ!ミランダを暴漢から救ってくれた人だとよ!しかも王子様って言ってやがったぜ!もしそいつが俺の目の前に現れたら…」
カノープスさんの顔がみるみる内に怖くなる。
「カノープス様… それがですがね…。」
「なんだよ!何が言いてぇ!?」
ひぃぃい!!今にも斬られそうだ…。怖い怖い…。
「その男の人… 近々、王国に適性検査を受けに来るみたいで…」
「なぁーんだって!?」
「ひぇぇえ!!」
怖いっすよ!!
「う、噂になっていて…、国王の命令により彼が王国につき次第、早急に適性検査を行い、場合によっては王との面会を… との命も出てます!」
「おう!そうか!んでそいつの名前は?」
「たしか… ルイス…。ルイス・ガーランド… だったはずですが…」
名前を聞いた途端、カノープスはニコニコしだす…。
「ルイス・ガーランドか…!お前が娘に相応しいか見てやるぜ!」
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~クリステル視点~
(ルイス…。ルイス!?いま… ルイスって… 誰かが…)
真っ暗な中にただただ一人の人形がアレに向かって語りかけている。右向こうも左向こうも目を閉じても操り人形の演劇を強制的に見せられてしまいます…。助けを呼んでも届かず…。泣いているけど泣けず…。ただただ苦しい私…。
愛しの私のあの人が段々と離れていく…。
ごめんね?ルイス…
貴方の元へ行けなくて…。
操り人形の私…。体がどれだけボロボロになろうが痛みも感じなく…。でも心だけは痛い…。
ありもしない映像をただただ一人…、暗闇で見せられているだけ…。
貴方に寄り添いたい…、貴方に触れたい…。それだけが切な願い…。貴方を守りたい…。貴方と一緒に憎いアイツを倒す…。
アイツを殺す。
アイツに罰を与える。
ルイスと一緒にアイツを…。
だからお願い…。ルイスとまた再開してアイツを…。
私はそれからルイスに別れの言葉を言って消え去ります…。貴方が居ない世界へと旅立ちたいと思います…。これは罰です…。
…………。
……。
…。
「……こ……す…?」
何かが私を呼ぶ…。
「きこ…ます…?」
ぼんやりと、目を開ける…。そこはどうやらどこかの医務室らしい…。
「聞こえますか?」
「はい…。」
「クリステルさん… 良かった…。」
私は一体…、ずっと夢を見ていたのか…。
「体調悪い所はありませんか?」
「いえ…。大丈夫ですよ…」
分かっていた…。これは夢ではない事は…。一人の大切なあの方を傷つけてしまっているのに違いない…。もう私は汚れた女。大切な人に抱き締められる筋合いもない人間ですから…。
あのアレックスとかいう男に初めて会った日…、私は意識を失い…。そこからずっと操り人形となっていた。私はやっと誰かに気付いて貰うことができた…。
「あのアレックスとかいう悪き人間はどうなりましたか?」
記憶が正しければヤツは勇者ではなかったらしい…。どうしてヤツが勇者なのかは分からないけど…。私をズタズタに憎しみが溢れかえる。こうなってしまったからにはただでは済ますつもりもない。刺し違えてでも…。
………。
……。
…。
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~シュー視点~
(今、兄貴の名前を誰かが言っていた…。)
…兄貴…。助けてよ!またぎゅーってしてよ!こんなクズみたいな野郎に遊ばれるの嫌だよ!!
もうやめろ!!くんな!殺す!!許さない!殺す!!お前を絶対殺すからな!アレックス!!
憎い…憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!
ボクを散々遊んでおいて…!!ボクの初めてはルイスって決めてたんだ!絶対許さない。
殺す!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!
兄貴…助けて…。苦しいよ…。
でもこんなボクをまた抱き締めくれるかな?初めて…あげられなくてごめんな…。
それと、兄貴をばかにしたの… あれボクじゃないからな…。ごめんな…兄貴…。
「シュー… シュー!」
誰かがボクを呼ぶ…。兄貴かなぁ…。
ボクは目を開ける…。ここはどこかの病院みたいだ…。
「シューさん、起きれたかな?もう大丈夫だからね…。色々思い出すかもしれないけど…。大丈夫だから…。もう大丈夫だから…」
兄貴じゃなかった…。でも優しいお姉さんだ…。
「うん。ボクは大丈夫だぜ…、でも…もう少し眠らせて…」
できれば現実で起きたくなかったな…。
夢見れば…、笑ってる兄貴に出会えるかな?そしたら兄貴に抱きついてやるんだ…。二度と離さないように………。
………。
……。
…。
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~エアロ視点~
(ルイス・ガーランド… お兄様の名前…)
いつになったら覚めるのかな…。もうこんな悪夢は見たくない…。
お兄様…。私をお許しください…。もう貴方の側に居る事ができないくらい汚されてしまいました…。この純潔をあのいかれた悪魔に捧げるつもりもなかったのでした…。それだけ私は生きる価値すらもなくなったのです…。もしも操られていると分かっても操られているたから大丈夫…なんて優しい言葉をかけないでください…。
お兄様はいつもそうでした…。どんな時も人のせいにしませんでした…。もし会ったら… こんな汚れた私を斬ってください…。その方が嬉しいです…。
どうか誰も私を助けないでください…。
ヒドイ現実を見たくないです…。
どうか神様…。私を殺してください。
私を殺してください…。
私を消してください…。
私を殺してください…。
私を殺してください…。
私を殺してください…。
私を殺してください…。
私を…。
………。
……。
…。
「エア…ん、き…えます…?」
誰かが私を呼びます…。話しかけないでくだい…。
「エアロさん!聞こえますか!?」
私に話かけないでください…。私は汚れた醜い女です…。
「聞こえますか!?」
うるさい…。黙ってください!
「起きれますか!」
「う、うるさい…です!黙って…ください!うわあああぁぁぁぁぁぁぁんんんんん!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
私は、それから気絶してしまいました…。お兄様とまた手を繋げるかな…。




