33 勇者と聖剣~アレックス視点~ その1
後半に少しだけ胸糞展開あります…。いやな方は
………。 ←より下はみないほうが良いです…。
本編
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後半に少しだけ胸糞展開あります…。いやな方は
一番、下の方にスペースを開けた先にありますので嫌な方はみないほうが良いです…。
本編
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~ルイス達が、クレンセントの森でフィリシアと出会う少し前の時刻…~
-勇者アレックス視点-
石畳をガタゴトと叩く馬車の車輪の音が、やっとエルドアスの王都に戻ってきたことを告げていた。 ちっ、辺境のド田舎の温泉宿で、女たちと全裸で卓球大会をして遊び呆けてたら、予定より王都に着くのがだいぶ遅くなっちまった! しかも帰りの道中、やたらと強い見たこともないゴリラみたいなモンスターの群れに襲われて、泥まみれになって馬車のターボを全開にして逃げ帰る羽目になるわ……マジで意味わかんねーっつーの。 なんで『勇者』であるこの僕が、あんな雑魚にビビって全速力で逃げなきゃいけないんだ。おかしいだろ。世界がバグってるとしか思えない。
それにしても……。 あれから更に、僕の最強必殺スキルを放てる回数が、極端に減っちまった気がする。威力も、前みたいに山を消し飛ばすような絶大な破壊力が出なくなってきている……というか、最近は焚き火に火をつけるくらいの火力しか出ないような気がする。身体もやけに重いし、だるい。 ……まぁ~いっか! きっと、日頃の『夜の運動』のしすぎで筋肉痛なだけだ! 別に魔王が復活したわけでもないし、本気出す必要なんてないだろ。毎日この可愛いメスどもと、最高に気持ち~い思いしてるからよ! ストレス解消が一番だ!
「あ~ん、勇者様ぁ! そろそろ、あの伝説の『聖剣』を、スポッ! と大根を抜くみたいに軽々と抜けるくらいにお強くなってるんじゃねーか? ボク、すっごく楽しみだぞ!」
「そうですわ……。早く、未来の旦那様が聖剣を抜いて、真の勇者として歴史に名を残すお姿を……間近で見て見たいですわ。あぁ、想像しただけでゾクゾクします……! あぁん、勇者様の聖剣っ!」
「勇者様~っ、いつもベッドの中でカッコよくて激しくて、ますます好きになりますぅ……。あんなに大きくて硬くて長~い聖剣を手にした勇者様は……もっともっと、好きになれそうです……ちゅっ、ちゅっちゅっ」
「やめろよお前らー、くすぐったいってばー! アハハハ!」
聖女のクリステル、シーフのシュー、魔術師のエアロ……。 この三人の元・無能剣士の仲間たちは、今や僕の完全な虜だ。王都に帰る馬車の中でも、毎日のように服を脱がせてヤりまくってる。三人とも、完全に僕のフェロモンとテクニックに骨抜きだ。 そろそろ種付けして、身分を固めるために勇者のガキができてもいいかもなぁ! 歴史の教科書に載るぞ、僕のスーパーDNAは!
………。
……。
…。
僕達は豪華な城の、エルドアス国王が待つ謁見の間の大扉の前に来ている。 あれからずいぶんと(ベッドの上で)経験を積んで、レベルも上がったはずだ。半年も経ったんだ。そろそろ僕の魔力も限界突破して、聖剣を扱えるようになってもいいんじゃねーか? あぁ、ウズウズするぜ! 早く世界中に、僕の真の力を見せつけてやりたい!
僕の前にある、重厚で巨大な扉を、無能な門番の兵士ドモが恭しく開けてくれる。 ちっ、さっさと開けやがれや! おせぇーんだよ。それに、扉から王の玉座までの赤絨毯の距離がなげぇ~……。足が疲れるから動く歩道にしろよ。早く儀式をすまして、またコイツらとスイートルームでヤりまくりてぇ~んだけどなぁ~。
「……遅くなり、申し訳ない。何万匹ものモンスターの駆除に手間取ってな」
ほら、僕は勇者様だぞ。国の最高戦力だ。王だろうがなんだろうが、さっさと頭ぺこぺこ下げやがれっつーの。
「うむ……よくぞ戻った! 偉大なる勇者よ! そしてパーティーの者たちよ。顔に泥がついているが、激戦だったのだな?」
エルドアス王は玉座に深く座りながら、厳かに一礼をする。威厳はあるが、所詮はスキルも魔法も使えないタダの爺さんだ。
「ああ、顔の泥は勇者の勲章さ。……あれから僕は、国中を巡り、多くの魔物を倒し、たくさんのレベルが上がった。……そろそろ、神殿の聖剣を扱えるようになったと思うので、今日はそのために戻ってきた。すぐに『聖域』へと案内をしていただきたい!」
「ふむ……。わしもそろそろ、頃合いだと思ったところだ。良かろう……! ミランダ! 近衛騎士ミランダは居るか!? 勇者様のエスコートを頼む!」
王はミランダという人物を呼ぶ。 すると、甲冑の擦れる音と共に、ミランダという女性が颯爽と現れ、王の前に美しい所作で跪く。
「はい。ミランダここに居りますゆえ……、陛下、いかが致しましたか?」
僕はミランダを見る。 金髪でポニーテール姿の、露出を控えた軽装の女騎士って感じだ。凛々しい顔立ちで、年齢はまだ二十前くらいに見えて、どこかあどけなさがただよう。……おっ、鎧の上からでも分かる、出るところは出てるイイ身体してんじゃん。顔もモデル級に可愛いじゃん! こいつも僕のハーレムの一員にいれたいなぁ~。王宮の女騎士を愛人にするなんて、興奮するぜ! ぐひひひっ!
「ミランダよ、勇者様を聖域までお連れし、案内役をお願いしたい。粗相のないようにな」
「はっ! 仰せのままに。分かりました。……(はぁ、めんどくさ)」
ん? なんか今、舌打ちみたいなため息が聞こえたような? 気のせいか? ミランダは立ち上がり……。
「勇者様、こちらへ……。足元にお気をつけて」
絶対零度の冷たい目で俺を見て、歩き出す。俺達四人は彼女とハゲの大臣の後を付いていく。
王宮の一番奥に、秘密の地下神殿へと通じる長~い螺旋階段があり……。そこは空気が一変し、神の領域らしい神秘的な作りにもなっている。壁はほとんど白い大理石で作られていて、青色の魔力を持った蝋燭が、ゆらゆらと通路を青く光を照らしている。ところどころ石柱にひび割れも起こしているため、そうとう昔の、神話の時代からある神殿だと思う。 退屈な道中、僕はミランダの隣に並び、肩を寄せた。
「ねぇねぇ、ミランダは新しく入った騎士なの? 前に来た時は見かけなかったからさ? いい匂いするね! シャンプー何使ってるの?」
「……はい。近衛隊長だったお父上の代わりに、私が先月から配属される事となりました。近づかないでください。パーソナルスペースという言葉をご存知ですか? あと、シャンプーは市販の石鹸です」
ミランダはピシャリと言い放ち、俺との間に剣の鞘を挟んで物理的に距離を取った。
「えぇー、冷たいなぁ。ミランダちゃん、すっごく可愛いから、お城の周りの男がほっとかないんじゃない~? モテるでしょ? ラブレターとか山ほどもらうんじゃない?」
「……そうですか? 私は剣の道にしか興味がありませんし、男性に媚びるつもりもあまり興味ないですね。前を見て歩いてください。足元の段差でコケて頭を打って、少しは賢くなってください」
なんなんだよ! こいつ。せっかく勇者様が声をかけてやってるのに、面白くない! ツンケンしやがって! というか今、暗に僕のことバカにしなかったか!?
「つれないなぁ~。お城の警備なんて危ないよ? 僕の最強の『勇者』パーティーに入れば、ミランダちゃんの事を一生、僕の腕の中でまもってあげれるよ? 特別にお金もあげるし、僕の愛人第一号にしてあげてもいいよ?」
「……いえ、騎士として自分の身は自分で守りますし、今の職務に誇りを持っていますので結構です。それと、私は軽薄でチャラい、女をアクセサリーとしか思っていない頭の悪い男性は、生理的に好みではありません。どうぞ、お引き取りください。……(というか、臭い。獣臭い。風呂入ってるの?)」
ミランダは、絶対零度の事務作業的な塩対応をしてくる。さらには、懐から無言で『聖水消臭スプレー』を取り出し、俺に向かってシュッシュッと吹きかけてきた。失礼にもほどがあるだろ!
クソーっ! なんなんだよコイツは!! 僕の魅力がわからないのか!? ……でも、こういうお高くとまったカタブツな女ほど、プライドをへし折って、ベッドの上で泣かせて僕のモノに堕すのが楽しいんだよなぁ~。後で絶対に僕の種を孕ませて、その冷たい顔を快楽で染め上げてやる。
「まぁ……、勇者様ったら。私達がいるのに、他の女に声をかけるなんてヒドイですわ……。あんな筋肉ダルマの女より、私の方が柔らかくて気持ちいいのにぃ」
「そうだぞ! 勇者様! ボクだっているのに! 浮気だー! ベッドの刑だぞ!」
「悲しいですよ~…… 勇者様~っ! 私の方がイイ女なのにぃ! プンプン!」
「あぁ、すまんすまん……。お前らが一番だからさ。ただの挨拶だよ。ミランダちゃんは照れ屋さんだからさ」
あ~っ、クソ!!! ミランダの奴、チヤホヤしやがって! 後で絶対後悔させてやる!
「……勇者様。私語は慎んでください。そろそろ聖域の最深部に着きますが…… 試練の準備はいいのですか? 神聖な儀式です。失敗したら、お国のために切腹モノですよ?」
「……わ、わかってるよ! 切腹なんてしないからな!」
ミランダ達の後を付いて行き、最奥の古くさい巨大な扉の前に着いた。 毎回ここに来る度に、背筋が凍るような、異様で重圧感のある空気に包まれる。
前回……半年前は、僕が聖剣の柄を握ったら、眩しい白いオーラを放ち、石座から抜けそうなギリギリのところで、僕の魔力が空っぽになって消費してしまい、失敗してしまった。 だが、今は違う。あれからレベルが上がり、魔力も上がってる事だろうから…… 次こそは、絶対に抜いてやるぜ。
聖剣を抜けば、文句なしに勇者だ。 んで、王様からさらに莫大な報酬をふんだくって、世界中の女の子が俺の足元にひれ伏して振り向く! ミランダも土下座して謝ってくるはずだ! 最高のシナリオだぜ! ……まぁ、全部、あの時出会った『黒ずくめの女』のお陰なんだけどよ! 俺が十六の時に、能力がなくて絶望してた時……とある「お前が真の勇者だ」という予言の元、彼女に付いていって、あの気味の悪い儀式を受けてから、勇者としての規格外の魔力に目覚める事がかなったんだよなぁ~! あの女には感謝しないとな!
ゴゴゴゴゴゴゴ……。 大きな扉が開く。 辺りは一面、目に刺さるほど白く神聖な光を帯び……。円形の部屋。中央の祭壇には、黄金の台座に深々と突き刺さった、伝説の『聖剣』が納められている。 柄や鍔の部分には、至るところに虹色の宝石が装飾されていて、刀身は見たこともない未知の白銀の金属が使われて、自ら光輝いている。
「さぁ……、つきましたぞ。勇者様……。我らが国の希望の光よ。今日こそ、吉報をお待ちしておりますぞ!」
ハゲの大臣に案内され、僕はゆっくりと祭壇へと足を運ぶ。階段を上るたびに、王家の人間の期待の視線が集まる。
「勇者様……! 頑張ってください! 汗拭きタオル用意してますわ!」 「かっけぇなあ~! マジでボクらの誇りだぞ! よっ、世界一!」
「ああ……美しいですぅ……。後光が差して見えますわ! 眩しぃっ!」
取り巻きの女たちの黄色い声援を背に。 僕はニヤリと笑い、ゆっくり両手を聖剣に持っていき、冷たい剣のグリップを強く握り、自身の莫大な魔力を一気にこめる……。 ゆっくり目を閉じ……、全神経、全魔力を手に集中させる。 さぁ……光れ! 僕を認めろ! 光るんだ!!
「………フンッ!!」
辺り一面が、まるで時を止まったかのような、静寂の神聖な空気に包まれる……。 皆が、固唾を飲んで奇跡の瞬間を見守っている。 だが……。
「………ぐっ!」
僕の魔力よ!! 高鳴れ!! 共鳴しろ!!
「………フンッ! フンッ! フンッ! ……あ、あれ?」
ん?
「………………!?」
どうした……?! 光らないぞ!? ていうか、冷たい! 剣が氷みたいに冷たい!
「…………………おりゃああっ!! 抜けろよ!! バカ剣が!」
んっ?! なんでだ!? ビクともしない!? 岩に刺さってるんじゃなくて、まるで世界そのものと一体化しているみたいに重い! ていうか、僕が触った瞬間、聖剣の輝きがスゥッと消えて、ただの鉄の棒みたいに鈍くなったぞ!? 気のせいか!?
「ゆ、勇者様……。ま、まことに残念じゃが……」
ハゲの大臣が、気まずそうに顔を引きつらせた。
「前回よりも……光を放つどころか、微動だにせず、魔力の共鳴反応も全くありませんな……。むしろ、貴方が触れた瞬間、剣の光が鈍っている……? まるで、聖剣が貴方を全力で『拒絶』しているような……前回よりも、状況が酷くなっていますぞ……? ……まさか、偽物……?」
「そ、そんなことはない! 何かの間違いだ!! 機械の……いや、神の故障だ!! 不良品だ!!」
黙ってろ、ハゲ! 偽物だなんて言うな! 今から僕はこの剣を抜いて、真のハーレムを作るんだから!! 僕は焦り、脂汗を垂らしながら、また全体重をかけて魔力を込める……。
「うおおおおおおおおっ!! 抜けろぉぉぉっ!! 僕の言うことを聞けぇぇぇっ!!」
バチッ!!
「いってぇぇっ!!」
痛い! 剣からものすごい静電気が走って、僕の手を弾いた! 完全に拒絶されてる!! な、なんでだ!? 僕の最強の魔力はどこへ行った!?
「……勇者様……残念ですが…… これ以上やっても無駄のようです。神聖な儀式の場です。見苦しい真似はやめて、今日は引き返しましょう……」
クソハゲが、良いとこで僕の手を止め、邪魔をしてくる。
「ち、違う! 今日は長旅で極度に疲れてるんだよ! そうさ、ボク達と馬車の中で朝からヤりすぎたせいだぜ! 魔力切れだ! 絶倫だから!」
「勇者様! そうですわ! また明日も、明後日もありますよ~! 元気を出してください! 今夜も頑張りましょう!」
三人が励ましてくれてるが、王家の前で失敗したのが、恥ずかしいったらありゃしない。顔から火が出そうだ。 そして、ミランダは一歩も動かず、無表情のまま、冷たい、ゴミを見るような軽蔑する目でこっちを見つめている……。
クソッ!! なんなんだよこれは!!! 僕の完璧な人生に、泥を塗りやがって! それから仕方なく逃げるように神殿から出て、気まずい空気の中、王に再び会いに行く僕達……。 クソッ! なんて日だ!! 今日は最悪だ!!
「……そうか。今回もダメであったか。……ふぅ。疲れておるのだろ? 仕方ない……。今日は休め」
王は明らかに失望したような、深いため息をついた。その視線が痛い。
「話は変わるが……、ここ最近、同盟国であるエルフの国の女王、および森の防人達から、我が国の勇者様への、直々の名指しで『クレンセントの森の異形のモンスター討伐』による緊急の協力要請の依頼が来ている……」
「クレンセントの森……? あんな魔境に?」
「うむ。そろそろ行かなければ、二国間の同盟にも亀裂が入るほど、あちらの被害は甚大らしいのでな……。長旅で疲れているところ誠に悪いが、明日、直ぐにむかってほしい。これは、勇者としての命令だ」
「わっ、わかりました……。(ちっ、めんどくせぇ)」
……はぁ!? 魔境!? また泥まみれになれってか!? 何考えているんだよ! このクソジジイは! 僕は疲れているんだぞ! 怪我したらどうするんだ! 虫に刺されたら痒いじゃないか! それに、夜はせっかく王都の高級なベッドで、こいつらといっぱいヤりつくさなきゃ、僕のストレスがたまって仕方ないだろ! クソッ! クソッ!! 何もかも気に食わねぇ!! 僕は苛立ちを隠せないまま、王への挨拶もそこそこに、乱暴に足音を立てて謁見の間を後にしたのだった。腹いせに今夜は、ミランダの部屋に夜這いでも仕掛けてやるか!
………。
……。
…。
第三十八章:堕ちた夜と、鉄壁の女騎士の鉄槌
~エルドアス王城・勇者アレックス専用スイートルーム~
-勇者アレックス視点-
その夜、僕は溜まりに溜まった昼間の鬱憤を晴らすため、クリステルやシュー、エアロの三人をベッドに引きずり込み、夜が明けるまで徹底的に愛し合ってやった。 三人が甘く泣いて許しを乞うまで、足腰立たなくなるくらい徹底的に可愛がって、僕の勇者の愛を隅々まで注ぎ込んでやった。最高に気持ちいい! スッキリするわ!! こういう時は、あの無能のルイスがダンジョンで僕らに見捨てられた時の、あの絶望して泣きそうな顔を思い出しながら、こいつらの身体を隅々まで愛してやると、征服感が何倍にもなって最高にスッキリするんだ! あいつのモノだった全てが、今は僕のモノだ! ぐひひ!
「はぁ…はぁ…んっ…、あぁん、勇者様ぁ……。わたくしは、過去に何故あんな無能のルイスなんかに、一瞬でも同情して惚れてたんでしょうか……。時間の無駄でしたわ……っ」
汗ばんだシーツの上で、聖女クリステルが虚ろな目で僕の胸にすり寄りながら、甘いため息をつく。
「ぁあん!! そうだそうだ! あんなゴミ兄貴のことなんて、さっさと記憶から消して忘れてやれっつーの! はぁっはぁっ!! 勇者様の方が、何千倍も強くて、カッコよくて、気持ちよくしてくれるもん!!」
双子の妹シューが、まだ熱の冷めない身体をくねらせて僕に抱きついてくる。
「あっ!! 私も、もうあの人の顔なんかわすれまし…たぁ…はぁはぁはぁ…。勇者様の魔法の方が、ずっと、ずっと奥まで届きますぅ……ちゅっ」
双子の姉エアロも、とろんとした目で僕の首筋にキスをしてくる。 くひひ!! 最高だぜ! どいつもこいつも、完全に僕の虜だ! あんな無能の黒髪野郎のことなんて、もう誰も覚えてすらいない! これで、僕の自尊心も完全に満たされた……。
……はずだった。
「…………ちっ」
僕は舌打ちをして、寝返りを打った。 身体の疲れと快楽とは裏腹に、胸の奥底でチリチリと燃える苛立ちの炎が、どうしても消えなかった。 昼間の『聖剣の拒絶』、そしてあのハゲ大臣やクソジジイ王様の失望の目。 そして何より……。
(……なんであんなに見下してるんだよ、あのミランダって女騎士は!)
僕がいくら勇者の力(自称)を見せつけようと、まるで汚物を見るような、絶対零度の目で僕をあしらったあの女の顔が、どうしても頭から離れない。 許せない。僕の完璧なプライドが許さない。
「……おい、お前ら。僕はちょっと、夜風に当たってくる」
「んん~? 勇者様、どこ行くのぉ~? まだ足りないのぉ~?」
「トイレだよ。お前らは寝てろ」
僕はローブを羽織り、眠りこける三人娘を残して、そっとスイートルームを抜け出した。 向かう先は決まっている。 女子騎士の宿舎、ミランダの個室だ。
(へへへ、あんなにお高くとまってやがっても、所詮は女だ。夜中に僕みたいなイケメン勇者が『個人的な相談』で部屋に来れば、ドキドキして簡単に落ちるに決まってる。昼間の強がりを泣いて謝らせて、僕の奴隷にしてやるぜ!)
僕は音を殺し、勇者の隠密スキル(レベル1)を使って、王城の夜の廊下を歩く。 そして、事前に衛兵から聞き出していた、ミランダの部屋の前へと辿り着いた。鍵は閉まっているが、この程度の鍵、勇者の僕ならヘアピン一本で楽勝だ。
カチャリ。
(ぐひひ! ミランダちゃん、勇者様の夜這いだよぉ~ん! 裸で震えて待ってな!)
僕はニヤニヤしながら、そっとドアノブを回し、部屋の中に侵入した。 部屋は真っ暗だ。ベッドの方に、微かな寝息と人影が見える。 (よし、寝てるな! 今のうちにベッドに潜り込んで……)
そう思い、僕が忍び足でベッドに近づこうと、一歩足を踏み出した、その瞬間だった。
――ピキィィィィンッ!!
「……ッ!?」
僕の足元で、何かが光った。魔力の罠だ。 次の瞬間、天井からタライの代わりに、重さ数十キロの巨大な『城壁用の鉄球』が、音もなく落下してきた。
「ふぎゃっ!?」
ドゴォォォォォォンッ!! 鉄球が僕の頭を直撃し、僕はカエルのように床に潰れた。痛ぇぇぇぇぇっ!! なんだこれ!? 騎士の部屋のセキュリティどうなってんだ!?
「……やはり。ネズミ一匹、掛かりましたね」
パチン、と指を鳴らす音と共に、部屋の明かりが魔法灯によって点灯した。 ベッドに寝ていたのは、なんと木製のダミー人形だった。 そして、部屋の隅の暗がりから、完全武装の甲冑に身を包み、身の丈ほどもある巨大なハルバード(長柄斧)を構えたミランダが、冷酷な目で僕を見下ろしていた。
「み、ミランダ……ちゃん? や、やぁ! 奇遇だね! 夜の散歩をしてたら、間違えて……」
「問答無用。……侵入者には、近衛騎士団の『鉄槌』を」
「えっ、ちょ、待っ……!」
ブンッ!! ミランダが一切の躊躇なく、その細腕からは想像もつかない膂力で巨大なハルバードを風車のように振り回し……。
ドガァァァァァァァァァァァンッ!!!!
峰打ち(というか柄の末端)で、僕の腹部をフルスイングでぶっ叩いた。
「ぐふぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
内臓が口から飛び出るかと思うほどの激痛!! 僕はボールのように部屋の壁まで吹き飛び、めり込んだ。 い、痛い! 肋骨が確実に三本は折れた! こいつ、本気で殺しにきてやがる! というか、なんでタダの騎士がこんなに強いんだ!?
「……ふぅ。害虫駆除完了。……勇者様。夜分遅くに、ご自身の部屋と間違えて他人の部屋に不法侵入するとは、随分と方向音痴なのですね。脳の病院を紹介しましょうか?」
ミランダは、壁にめり込んで白目を剥いている僕の顔を、重い鉄のブーツでグリグリと踏みつけながら、氷のような声で吐き捨てた。
「あ、あぐぅ……。ご、ごめんなさい……。出来心でした……」
「次回やったら、去勢します。……さっさとご自身の豚小屋(部屋)にお戻りください。そして明日の朝一で、国王陛下の命通り、さっさとクレンセントの森へ出発してください。王都の空気が穢れます」
……完敗だ。 僕のプライドは、この女騎士の鉄のブーツの裏で、粉々に踏み砕かれた。 クソッ、クソッ、クソォォォォォッ!! 僕が一体、何をしたって言うんだ!? 勇者なのに、なんでこんな目に!!
………。
……。
…。
翌朝。 エルドアス王都の正門前。
「いてててて……。ミランダの奴、マジで容赦ねぇ……。腰が痛い……」
僕は昨夜の激闘(一方的なボロ負け)で身体中を包帯でぐるぐる巻きにされ、ミイラ男のような無様な姿で、馬車に揺られていた。 クリステル達は「昨日の夜、激しすぎですよぉ」と勘違いして、うっとりしている。勝手にそう思ってろ。
「……クレンセントの森、か。あんな魔境、行きたくねぇなぁ……。エルフの協力要請なんて無視して、適当に森の浅いところでスライムでも倒して、やったフリして帰ってこようぜ」
僕は、完全に腐りきった態度で、遠くに見える鬱蒼とした森を見つめて悪態をつく。 まさか、そのクレンセントの森に、かつて見捨てた『無能のルイス』が、とんでもない最強のパーティーと化して向かっていることなど、そして、そこですれ違うことになるかもしれないことなど……。 この時の僕には、知る由もなかった。 ……クソッ、ルイスの奴、今頃どっかの路地裏で野垂れ死んでるんだろうなぁ! ざまあみろ!
………。
……。
…。




