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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
605/606

574話 2回戦開始

『只今より2回戦の選手入場となります——』


 放送とともに拍手が上がり、曲が流れ出す。プロペラ式魔道具も空に飛び上がり、盛り上げるのに貢献している。


「自立してるってことは、あれには魔法陣が組み込まれてるの?」


 レイ君がいるのをいいことに、さっきは聞けなかったことを聞いてみる。さっきまでリリちゃんが座ってた席にいるレイ君は楽しそうに頷く。


「そうですー! まぁ細かい微調整をしたいなら、まだ人間がやらなきゃですね。大型にしたら、魔法陣をいくつか組み込んで同じ動きをさせるとかはできると思いますけど」


 それはそうだろう。

 魔法陣は決まった魔法を発動させるもの。

 本来指定された単調な動きしかできない。


 つまり、細かく臨機応変に動くようなものには適さない。それを操作できるかもしれないだけでも、発明王は普通の発想と違う。


「じゃああの数動かしてるオリーヴェ君はやっぱりすごいんだね」

「あ! そうです! 彼すごいですよ、オレのやりたいことわかってくれるし! いい買い物したなと久々に思っててー!」

「か、買い物……?」

「あれ? 言ってなかったでしたっけ? 今うちの養子にしようとしててー」

「は? 養子? 人間はペットじゃねぇけど」


 聞いていた弟が、みんなが言わなかった切り口で横槍を入れた。ちょっと思ったけど言い方が悪い‼︎ だけどレイ君は気にしない。


「わかってるよそんなの。そもそもうちオレひとりっ子だからっていうのもあるんだけど。そもそも殿下は知ってますよねー?」

「まぁ……まだ正式ではないはずですが」

「ほらー! ちゃんと手続き踏んでるんですー! 使えるものは手元に置いておかないと! オレならあんなもったいないことしないし‼︎」


 聞きようによってはロマンある展開も、相手がマッドサイエンティストだと疑いの目がつよくなるらしい。


「そもそも養子をさらに養子とか……あの家そんな簡単に手放すとは思えないんだけど?」

「そこはお金と圧力と交渉だよ、最後は力がものを言うから。うちの製品買えないとこの国のあらゆる事業が終わるから!」

「もうお前が裏番長だろ……」


 えっへん! と胸を張るレイ君に、ひたすらセツは呆れている。呆れすぎて、うっかり通じない言葉が出てる。これは……。



「ティア。あれはどう意味でしょうか?」



 ほらー! 言わんこっちゃない‼︎

 やめてよして触らないでボロが出るから‼︎

 ついでにこっち見ないで! 困る‼︎


 けどそんな時、ちょうどよく聞こえてきた。


『選手、入場!』

「ていうかみんな! ほら! はじまるから! 集中して‼︎ 雑談終わり! 応援応援‼︎」


 パンパンと手を叩いて、無かったことにしました! さぁみなさん忘れてください! 目の前の大事な試合を見届けましょう‼︎



****



「ずいぶん選ぶのに時間がかかりましたのね。それとも、怖気付きましたの?」


 相変わらずの挑発的な発言。

 けれど彼女なら、喜ぶ者もいるだろう。

 そのクールさが、氷華の異名を高めるから。


「滅相もございません姫様。どうして僕がレディに恥をかかせるようなことをいたしますでしょうか?」

「散々かかせてきた口でよく言いますの」

「ははは、お戯れを……僕と武闘を舞ってくださるというのに、この光栄な機会を逃す者などいないでしょう」

「今日はその仮面、剥いであげますのよ」

「……それはなかなか、手痛いお誘いで。美しい花には棘があるとはいいますが……」


 ヴィンセントはそう言って、剣を構える——それは少し湾曲し、柄に手を守るガードのついたのあるサーベルだ。


「どうぞ、その棘を折っても見逃してくださいますようお願いいたします」

「あなた程度の腕で折れると思うなんて滑稽ですの。むしろ突き刺して差し上げますのよ」


 そう言ってリリチカが構えたのは、柄とガードに曲線的な金属の装飾が華やかな細身の剣——棘のように細身なレイピアだった。



「あなたの鼻をへし折ってやりますのよ」

「……お手柔らかに、と言っても聞いてもらえないのでしょうね……」



 氷のように冷たく言い放たれた言葉に、渋い顔したヴィンセントがため息をついたのと同時に鐘が鳴った。



****



 ギャリンッッッ!!!!



 金属の奏でる不協和音が響く。その攻撃は一方的で……リリちゃんが突きまくるのを、ヴィンスがひたすら剣で逸らしている感じだ。



「わ、わぁ……リリちゃん勢いすごい……」

「なにか喧嘩しちゃったんでしょうか? リリチカ様、ずっと怒っていらっしゃるのですが……」

「……鈍いのが相手だと苦労するんでしょうね」



 フィーちゃんの心配にアルは返事をした。返事の先はフィーちゃんなのに、何故か私の方をチラッと見てきた。なんで? 関係ないよ?



 最初から剣技で決めるつもりなのか。

 リリちゃんはとにかくレイピアで攻める。

 ヴィンスは攻める隙をもらえないみたいだ。



 だからひたすらサーベルでよけながら、後ろに下がっていく。構図はさっきのアルたちと似てるけど、受けきってるとこはちょっと違う。



「……ていうか、言うか迷ったんだけど。今日のリリちゃん……めちゃくちゃカッコいいし美しくない⁉︎」



 余計な一言すぎる。

 戦いに何の関係もない。

 でも言っちゃいました、ビジュがいいから!



 けれど、私の余計な一言に賛同してくれる人もいる。それは横でこくこく、めちゃくちゃ首を縦に振ってくれるフィーちゃん!



「ちょっと、女の子から見ても綺麗だしカッコいいよね! ドレスとは違う魅力があるというか……」

「そーなの! スタイルの良さがわかるパンツルック、そしてひとつに束ねられたポニーテール……こんなもの乙女の夢が詰まってるからね!」

「乙女の夢はわからんけど……まぁ、言いたいことはわかるかも」

「そうだね。姫様の印象はいつもよりもっと凛として見えるかもね」

「そーだよねそーだよね!!!!」



 その上で細身のレイピアを扱う姿。

 これはスチルに収めるべきですよ‼︎

 戦う女の子なんてみんな好きだし‼︎



 私たち女子は、リリちゃんのロマンたっぷりな貴重な姿に大盛りあがり。セツとブランにも同意いただき、人類皆好きな姿であると確信しました!



 だけど実のお兄様だけは、どうもよくわからないらしい。



「そうなんですか……?」

「そうですよ⁉︎ うそ、アルわかんないの⁉︎」

「見慣れているので……」



 くぅー! マウントですかっ⁉︎

 第一ファンはお兄様ってことですか⁉︎

 羨ましいですわねまったく!



 だけどまぁ身内だし、ビジュアルで見てないのかもしれない。私なんかいまだに抱きつかれるとドキッとしちゃうけどね。全然慣れない。



「みんな見た目とか気にするんですねー? じゃあ動きやすい素材で見た目がいい制服とか作ったら売れるってことですー?」

「売れます。お願いします!」

「わ〜即答〜! 一番使わなそうな人の反応がいいですね〜?」



 よくわかってない2号が、余計な一言を言ってくれた。でもいい! ビジュのいい制服が生まれて使われる可能性が高まったので‼︎



 そんなリリちゃんに猛攻を受け続ける彼。

 だけど、疲れてはなさそうだ。

 なんならちょっと動きに余裕を感じる。



「あんなに怖がってた割に余裕ある……?」

「そりゃそうだろ。ヴィン君『瞬雷』使ってるし」

「あぁ! 雷の魔法!」

「忘れてるみたいだけど、あれの使い手の方が風より速く動けるからね。オレもそうだし。だからあれは、様子見てるんだろうな」



 ……そういうことらしいです!

 弟の解説で納得しました!

 じゃあリリちゃんはどうするのかな?

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