569話 トーナメント決定
『それではここに、実技演遊会の開催を宣言する!』
はっ! デジャヴ‼︎
また考え事してたら開会してる!
今どんな感じですかっ⁉︎
学長の宣言と共に送られる拍手に応えるように、みんなが手を振っている。意識が飛んでたことを誤魔化しつつ、大きく手を振る。
「みんなー! 頑張れー‼︎」
少し身を乗り出して大声で声援を送ると、フィーちゃんとノア君が顔を合わせた。そしてそのまま、私と同じように手を振ってくれる。
「頑張ってくださーい‼︎」
「……全力に期待」
口元に手を当てて大きな声で叫ぶフィーちゃんとは対照的に、ノア君はつぶやくようにそう言った。その代わりぶんぶん手を振っている。
うーん、違うタイプのわんこ?
わんこのしっぽに見えてきた。
2人ともふわっとしてるし。
ちょっと可愛いな……と思いながら視線を戻すと、生徒会メンバーも手を振替してくれてるのが見えた。あ、なんか嬉しいかも。
「見まして……⁉︎ 生徒会の皆様の仲睦まじいご様子……!」
「あぁ、殿下が微笑まれて……悔しいですけどやっぱり推せますわ、セットで!」
「でも私、氷華様のあの蕩ける笑顔を見るとやはり禁断の愛もありじゃないかなんて……」
「やめて頂戴! 私はケンカップル推しですのにっ‼︎ でも三角関係は三角関係で美味しいわ……」
「私はローザ家の麗しい兄弟愛を推しますわ」
「俺たちの聖女様があんな無邪気なお姿を……くぅ! 今から怪我したら看病してもらえるか⁉︎」
「いやお前じゃ無理だろ。あそこの誰にも勝てねぇから」
……なんか外野の声の雲行きがあやしいものが混ざってた気がする。
気のせいかな? 前からこんなだったっけ……? よく聞こえないところもあるけど、まぁうちの子たち人気だから……?
とりあえず姿が見えなくなるまで手を振って、開会式は終わりになった。でも、今回の大会の見せ場はこれからだと言える。
そう、なんと言ってもくじ引き!
トーナメントである以上、このくじで当たる相手が決まるのだ。結構大事なところなので、不正がないよう大衆に見える形で行われる。
見えるというか……これも見せ場で。
というのも名前を書いた紙が飛ぶんだよね。
風魔法でシャッフルされるというか。
魔法としては中級の『風巻』だから、風魔法得意な人ならそんなに大変ではない。ただ、紙は飛んで行きやすいから加減が必要。
それを学長が撃ち落として、順番が決まる。この飛ばす係は大会に関係ない人が任命されてやる……んだけど。
「えっ! あれってオリーヴェ君じゃん⁉︎」
なんと彼、今年はシュガークラウドの係ではなくこんな大役を任されていたらしい。
それは全体的に深緑を基調として、魔法使いらしい帽子に、切れ目の入ったケープ。そこに草葉模様の黄色い刺繍が入っている。
その顔は晴れやかで。
前に見た時より胸を張っている気がした。
そっか。実力は知ってたけど。
実はこのくじ係も結構注目される。風魔法は使える人が多いけれど、だからこそ上手さは見ただけでよくわかるレベルが求められる。
ついでにこの係は他者推薦が必要なはずなので、たぶんレイ君がしたんじゃないかなと思う。もちろん、その後にテストはある——。
折り紙つきの彼の風巻は、相変わらずすごかった。
蝶のようにひらひら宙を舞うクジ。
しばらく闘技場は拍手が起こっていた。
もう誰かの陰に隠れる必要はないだろう。
それにしても、あのレイ君が推薦を⁉︎ そんな気を回すほど仲良くなれたんだ⁉︎ すごいなオリーヴェ君……とか思ってるうちに、学長がクジを落としていた。
読み上げられた順番からすると——。
「えっ最初アルとレイ君当たるの⁉︎」
「2番目にリリチカ様はローザ様とですね……!」
「……兄様、心配」
発表されるたびに辺りも盛り上がりを見せ、関心が高まっていく。私たちもなんやかんややんややんや言って盛り上がる。
ブランはシードなので1回戦はお休み、セツは私たちが知らない3年生と当たるみたいだ。いやぁ、みんなが当たるのは知ってたけどそれにしても……。
「アルの相手レイ君か〜! 魔力条件だけで言ったら、火と水だしアルが不利だけど……」
「でも、殿下は剣技お上手だし……」
「……殿下、氷も使える?」
「あぁうん。でもリリちゃんよりはあんまり使うイメージないからなぁ……」
火は詳しく解説すると熱を操る術。だから水と火が使えるリリちゃんは合わせて氷にしているけれど、アルは水は持ってない。
冷房みたいに空気冷やしたりはできるから、使えなくはないんだろうけど……うーん、どうだろう⁉︎
「それでいうとリリチカ様のお相手が……」
「……水だけなら、兄様が有利」
「でもヴィンスリリちゃん相手に頑張れるー⁉︎」
「リリチカ様は全力で挑むと思うけど……」
「しかもリリちゃん、剣強そうだよねー⁉︎」
「……兄様は頭が良いから、結果は未知数」
明らかにノア君がお兄ちゃんを応援したそうで、ちょっと笑ってしまった。真面目な顔がきょとんとしながら、こちらを見る。
「……クリスは、心配しない?」
「え?」
「……セスの相手。わからないから」
なるほど。そういえば同じ立場だもんね。私は全然考えてなかったので苦笑しながら、歯切れ悪く答えた。
「あー……まぁ、なんとかやるでしょあの子なら」
「さすがお姉さん……! 私はどきどきしてるのに‼︎」
「そんなに?」
「……わからないことが不安なのは、当然」
「そうかな〜? でもそう言われれば、セツのそういう方面の心配ってしたことないかも」
「ど、どうして?」
のんきな私とは心配になっているらしいフィーちゃんが、固唾をのむ様子でうかがってくる。それに少し笑って答えた。
「だって、考えても仕方ないし。セツはそこら辺上手くやる子だから」
昔から、なんだかんだ要領がいい。
私なんかより1人でも上手くやれる子だ。
そういうところをよく知っている。
「だから心配はしないかな。勝つと思う、負けず嫌いだし」
当たり前のように出てくる言葉が自分でもおかしいなと思いながら、そう告げた。
【トーナメント順】
①アルバート王子
②レイナー
③ヴィンセント
④リリチカ王女
⑤3年生の人
⑥セス
⑦ブランドン
ブランドンはシードなので、それ以外の人たちが1回戦は当たる。
2回戦は①②から勝った人vs③④から勝った人、⑤⑥から勝った人vs⑦(ブランドン)
3回戦目が優勝決め。




