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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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555話 報告会

すみません。次話が間に合わなかったので5/13に更新になると思います。

「お嬢様、情報屋(キャルト・ア・ジュエ)でまとめました報告を持ってまいりましたが……いかがなさいますか?」


 あの家に行って数日経って落ち着いた頃。

 シーナが、慎重にそう聞いてきた。

 私はもう大丈夫なんだけどね。


 そもそも知ろうとしたのは私で、わざわざあの家をクロの力を借りてまで再現したのも私。それで放り投げるのは、あまりに無責任だ。


 あそこで諦めたってよかった。

 なんとなく、想像はついてたのだから。

 だけど裏ノア君の工作まで避けたのだ。


 避けたというか——書き換えたというか。うまく言えないけど、あの過去は私でなければ、私が無理やり見ようとしなければ見なかった過去だ。



 そういう、私たちが過去視をする未来にしたのは、間違いなく私。



「聞くよ。私が頼んだんだもん」

「……かしこまりました。それではご報告いたします」


 シーナは少し考えたようだけれど、すぐに仕事モードに戻った。私の侍女は案外優しいよなぁと思うと、少しだけ笑みが出た。


 それに……アレを見て、私はやっぱりノア君を助けたいと思ったし、裏ノア君をしりたいと思ったから——。



 立ち入るべきかは悩みどころだけど!

 暗いまま終わるなんてやっぱりダメ!

 だってそんなの悲しすぎるから‼︎



「過去は変えられないけど、未来は変えられるもん! 私の目に入る全ての人生(エピソード)はハッピーエンドでなきゃ困る‼︎」

「……はぁ。なんですかそれは?」

「私の持論!!!!」

「変な人ですね……」


 む……私の人生の指針でもあるのに! そのために『学プリ』もめっちゃ周回したんですよ⁉︎ まぁそんなこと言えないけどさ!


 ゲームみたいには上手くはいかないけど!

 それでも足掻くのが人間ってもんでしょう⁉︎ 

 それってそんな変なことかなぁ?


 資料を用意し確認するようにめくる無礼侍女シーナさんに、抗議の念を送る。残念ながら全然届いてそうではない。


 だけど仕事だけはしてくれるので、その資料こっちに持ってきてくれた。机に置かれた資料に手を伸ばそうとしたところ……。


「お嬢様は変な方ですが」

「まだ言ってる……そろそろ不服申し立てを行いますけど?」

「それでも、そのおかしなところが救いになる人間は多いでしょうね」

「褒めてる? 貶してる?」

「それを止めない私も私なのでしょう」


 お? なんか今のはデレな気がします。


 そう思ってたしかめようとシーナの顔を覗きこんだけど、その時にはいつもの変わらない仕事用の顔になっていた。


「我々情報屋の集めた報告ですが——まず前提として、シブニー教の目的があります。こちらはご理解いただけていますか?」

「……えーと。『悲願のギフト』の獲得じゃなかった?」

「そうです。よく覚えていらっしゃいますね」


 忘れるわけもない。

 それでシーナは私に助けを求めたのだから。

 出会いのエピソードとしては強烈すぎる。


「そのために、人工的に闇の魔力持ちを生み出すための儀式をするってことでしょ……」

「はい。闇魔法はその力が強大であればあるほど、どんな願いも叶うと信じられています。そしてその願いは汚れたものです」

「まぁ子供を食い物にしながら、お金儲けしてるようなとこだったもんね……」


 シーナやフィーちゃんたち孤児を集めて、悪どいことやってた集まりだ。あれはまだどこかゲーム感覚だった私をびっくりさせた。


 だってどう考えても許されないでしょ。

 でも1人じゃあんなにやらなかったかも。

 私はあまり勇気がある方じゃないし。


 私より全然勇敢なシーナが決死の思いで助けて欲しいと言ってきたから、すぐ動けただけなんだよね……って、あー回想やめやめ!



「今回のことで分かったのは、そのもっとも中枢に関わるところに——現ノアール・ローザ公爵子息が巻き込まれていらっしゃったということですね」



 ぴんっと、空気が張り詰める。

 糸を張ったような緊張感。

 ここからが本題だと言える。


「我々の調べとお嬢様に見せていただいた過去を合わせますと、時系列としましてはまずリリアーヌ王女が駆け落ちなされたことから始まります」

「……闇の魔力持ちとね」

「そうです。そしてその情報は、もちろんシブニー協会幹部には通っています。城の中にも当然、隠密諜報部隊はおりましたので」


 つまり世間では噂程度だったものが、誰と逃げたかまで詳細に知られていた、ということだろうか。そして——。



「……待ったのね。子供が生まれるのを」

「駆け落ちするくらいですから。記録こそありませんが、そうなるだろうという予想はされていたことでしょう」



 ずいぶんグロテスクな話だ。

 王族の血は神に近い血。

 そこに闇の魔力持ちを掛け合わせたら。


 そんな品種改良みたいな、あちらからしたら理想的な組み合わせが起きたのだ。まぁ、喉から手が出るほど欲しかったのだろう。


「……なんで私じゃないんだろ。その条件で行くなら、私だって闇の魔力持ちだけどね」

「冗談でもそのようなことはおっしゃらないで下さい。それにあれが欲しかったのは、あくまでリスクの少ない理想的な器です」

「そうだね……小さい時の私なんか、別に闇魔法そんなに使えないしね。仮にも王子様の婚約者だし」

「やましい事をやる者ほど、巧妙に計画を隠すものです。ましてやそれが攻め入る先であれば……お嬢様が責任を感じる必要はないのですよ」


 わかってる。わかってるんだけど。

 私の方に来てれたら倒せたのに。

 こんなにひどくならずに済んだのに。


 きっとあのノア君の身長の大きさなら、もう空璃(わたし)だから上手くやれただろうに——そう思うとやるせない。


 貴族は王族の血が濃いほど爵位が高い。

 それにうちは闇持ちが出やすい家で。

 だけど私には地位があるから近づかない。



 その程度のことで、運命はこうも別れてしまう。



 ……私がもうちょっと大々的に魔法使ってたら。何かで血迷ってこっちに来たかもしれない。私は儀式が必要ないくらい力が強いのだから。



「……はぁ〜〜〜〜世の中理不尽すぎる……」

「お嬢様、まだご報告は……」

「聞く……聞くけどぉ……。聞けば聞くほど、まぁそりゃ私も恨まれても仕方ないよねって気がしてくるというか……」

「なんの話ですか?」


 お行儀悪く机に突っ伏して、うだうだする。


 誰も悪くない。私も悪くない。

 ノア君も悪くない。シブニー教が悪い。

 裏ノア君は……どうなんだろうか。


「はぁ……聞きたくないけど続き聞かせて。せめて誠実ではありたいから……」


 私の発言に不思議そうにしたシーナを無視して、先を促した。

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