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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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553話 うちの子が優秀すぎる

***


 私はここに来たことがある。

 だから、慢心していた。

 あるもんだって、当然思ってた。



「うそでしょ……燃えたってこと……?」



 呆然と立ちつくす私の前に広がっていたのは、ただ黒焦げの家の跡だった。


 こんなとこで燃えるとかある⁉

 だいぶ隠されてる無人の家だよ⁉

 山火事とか起こったってこと⁉


 そう思って周りを見たけれど、周りの木から燃え移った感じじゃない。だって、家の周り以外は燃えていないから。


「ここに主様の調べたい家があったということですけれど……これは」

「トリス。それはお嬢様が一番わかっていることです」

「し、失礼いたしました!」


 シーナがいさめてるけど、その通り。燃えかすから調べるなんて技術は、ここの世界にはない。


 明らかに人為的。そして逆に言えば。

 それだけ見られたくなかった。

 そういう場所だったんだろう。


 どうしよう……と困っていたら。ブレスレットになっておとなしくしていたクロが、突然スライムの姿になってこっちに跳ねてきた。


「わぁっど、どうしたのクロ!」


 とっさに手のひらですくうと、そのままぽよぽよと小さく跳ねている。つぶらなひとみが、何か語りたそうにしてる気がするけど……。



 正直、なにもわかりません!!!!



 私は光使いじゃないから、心のなかは読めないんだってばー! ……ただなにかできるって言ってる? いや言ってないけど。


 そんな気はするときは信じるのが一番!


「オッケー! クロの好きなようにして!」


 そのまま投げるように放つ。するとアメーバ状に広がったと思ったら、銀の光をまといながらその形を変えた——。


「! これって……!」



 そして現れたのは、そう、あの目的だった家だ。



「なるほど!? 私の記憶を読んだってわけね⁉ えっ頭いい~! うちの子天才かもしれない‼」

「お嬢様、これは……?」

「クロが再現してくれたから、確認ができるってこと! 中入りましょう!」

「ま、魔獣の体内にはいるんですか……?」


 この主正気か? という空気を感じたビスから感じた。というか、全員思ってそうだ。でも四の五の言ってられないのだ。


「私が先に入るから! 様子見てからでいいからついてきて‼」

「そんな! 主様にそのような事させられません‼」

「いや、本当に私が入った方が安全なんだよ。クロは私の魔力でしか生きられないから、クロに殺されることってほぼないからね」

「ほぼは100%ではないです主ー!」

「まぁまぁ。大丈夫大丈夫、どうせ入らないと始まらないからね」


 男性陣は大袈裟だなぁと思いながら、扉を開ける。中に入ってしまえば、あの時セツと見た光景が目の前に広がっている。


 ……クロがついてきてくれてよかった。

 私だと、再現が曖昧になりそうだから。

 思い出せないと思えば再現できない。


 その点クロなら、私の記憶を読んでいるから可能だと私も思える。これが結構、大事なんじゃないかと思う。クロ様々だね。


 一歩踏み入れた時点で素早く中に入ったらしく、なんだかんだみんな家の中にいる。


 さすが隠密にたけてるだけあるなぁと思いながら振り返ると、シーナ以外はちょっと顔が引き攣ってた。やっぱり怖いのかなぁ、魔獣は。



「大丈夫だって。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()——確信を持って言える時は予言と同じことなの。私に魔力がある限りはね」



 これみよがしに髪を払ってなびかせてみせる。この黒髪を見たら思い出すだろう。君たちの主人はこれだけが取り柄ですよ〜。


 ついでに小首を傾げてにやりと笑えば、まぁなんと悪役令嬢ぽい仕草でしょうか。でもそれは、有無を言わせぬ力も持つと知っている。


「……! 申し訳ございません! 主を疑うなどと……!」

「出過ぎた真似をお許しください主! でも今の姿が素敵だったのでもう一度お願いできませんか⁉︎」

「我らが主が偉大な方だと失念しておりました! 主の言葉は神の言葉と同等だと身に刻みます‼︎」


 うん? なんか雲行き怪しいなぁ。

 あとちゃっかりなんかお願いしてません?

 言ってることとやってること逆では?


 だけど私は女の子に甘い。手を組みきゅるきゅるおめめを向けてくる懇願ポーズに負けて、もう1回やってあげた。


 「はぅ! 美しすぎる……!」と胸を押さえている。テトラさんの趣味はそういう感じらしい。この子、悪役を好きになるタイプだ……。


「こほん。失礼いたしましたお嬢様。あとで言って聞かせますので……」

「貴女がそれを言いますか、モノ」

「そうですよー! モノだってこっち側でしたでしょう⁉︎」

「そうだそうだー! モノだけ逃げるの反対だー!」

「間違えました。今黙らせてもよろしいですか?」


 私なんかよりよほど暗黒微笑の似合うシーナの言葉に、ひぃ! と声がそろう。どんだけシーナ怖がられてるんだか。


 それと同時に仲良いんだなぁと思いつつ、この場所との空気のミスマッチを噛みしめた。ここ君たちの怖がってた魔獣のお腹の中なんだけど。


「あとにしてね。多分大丈夫だけど早めにここ調べないと、クロが元の姿に戻っちゃうかもしれないし」

「あ、主、それはつまり……」

「うん。お腹の中に入って消化されちゃうかもね?」


 これが効いたらしい。もともと素早さに富んだ彼らは、我先にと言わんばかりに散らばり調査に動き出した。


 ……まぁないけどね。

 魔力足りなくても私と接触してれば。

 クロは私から勝手に魔力食べるから。


 さて。だけど私はどこから調べようか。みんなみたいに専門的な知識はないし……。


 あぁ、でもあった。

 私にできること。

 そして私だけにしかできないこと。



 闇魔法が使えるなら、過去視をすればいい。



 なんで思いつかなかったんだろう……いや、怖かったからだ。ただ本物を見るのが怖かった。残された跡からでも、十分惨劇はわかることだから。


 しかもここは、クロの中。

 過去視を再現もしやすい。

 無防備になっても大丈夫。


 例え裏ノア君が邪魔をしようと、現場にいる私の方がイメージの力は強い。見せようと思えばみんなにも見せられるけど……どうしようか。


「お嬢様、何かわかったのですか?」


 こういう時、変化に気づいてくれるのは、やっぱり侍女として隣にいるのが長いからなのか。シーナが後ろから声をかけてきた。


 私だけでは決めかねる……なら!

 迷った時は人に聞いてしまえ!

 断られても別にいいし!


 そう考えて、いっそ聞いてみることにした。


「ここの過去視をしようか迷ってたの。いや、正しくは私だけで見るか、かな。多分刺激が強いから……」

「あぁ。そんなことですか。お嬢様が支障をきたさないようであれば、見た方がよいでしょうね」

「で、でも、結構ひどいかもよ?」

「そういうものに()()()()()()()()()。そもそも人間を相手にすることもありますよ……必要であれば。スペードは特に、です」


 シーナは素知らぬ顔でしれっと言ってみせる。


 あぁ、そういえば。

 この子たちはシブニー教の生き残り。

 そういう訓練もされているのか……。


 ふとその後ろを見れば、うんうんと頷いている3人が見える。耳ざといなぁ……さすが元諜報部隊?


「……じゃあやってみるけど。もし辛かったら、目と耳を閉じてね。あまり楽しくはないからね」

「主命とあらば、心得ました」

「主人様こそ、無理なさらないでくださいませ」

「我々は元より、主人様のお役に立つためにここにおりますので!」


 その返事に少し笑って頷いて、目を閉じて意識を集中させる。


 意識を潜らせる。

 誰にも邪魔されないように。

 クロとのリンクも意識して。


 夢見の——アランドルフ王とドロシア様のことを見た感覚を思い出しながら。


 今、そっと目を開ける。

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