【閑話】ある日のプレゼント
体調がまだ悪いので申し訳ないですが本編は来週にさせていただきます。
毎年、とあるイベントに苦しめられている。
なんとかして凌いできたんだけど。
ついに万策尽きた感があるのだ——それは!
「アルのプレゼント選びが難しすぎる……!」
そう、我らが王子様への誕プレですよ!
貢ぎ物のバリエーションがなくてですね?
最近、悲しげな顔をされるんですよ……!
ちょっとそれにだんだん耐えられなくなってきたんです私は!!!!
というわけで専門家に相談することにしました——そう、プレゼントのアドバイスに適した専門家をね!
「ええと? クリスもドレスなどを殿下から贈られているのでは?」
「そう、だから鉱山とか貴重な染め物とか贈ってきてたんだけど」
「うわ色気なさすぎるだろ……本気で言ってるのか?」
まず専門家その1、ヴィンスさんです。
腐ってもモテ男とアルの親友。
アドバイスを聞くのにはもってこいでしょ!
そしてさっそく仮面が外れるほどドン引きされてる気がするのですが、何故でしょう?
「なに色気って? ヴィンスと違って世の中って色気そんなに振りまかないんだよ?」
「いや……せめて服に仕立てるだろ布じゃなくて。デザインとかできるし姫様にはよくドレスあげてるのに婚約者にそれはない」
「金額的には見合うはずなのに……」
「事務的すぎるだろ……。お前たち婚約者だろ?」
ぐ、返す言葉がない……!
いやでも私だって理由があるんですよ⁉︎
そりゃあげても服なんて何回も着ないけど!
でも婚約解消した時に見たら嫌でしょ!
それが頭をチラつくと、あまり思い出になるようなものは残すべきではない、と思ってしまう……『運命の強制力』の事考えると躊躇しちゃうんだよね。
「それよりなんでオレここにいるんですかねー? 帰っていいです? いま硬い岩でもスライスできるチェーンソーの開発が佳境で」
「いやむしろメインで頼りたいので残っていただきたい所存でして……」
そして専門家その2、レイ君です!
もう飽き始めている! はやすぎる!
たしかにプレゼント興味なさそうだけど!
だけどその知識とモノづくりへの才能はプレゼントに活かせるのではないかと思うんですよ! お願いだよ‼︎
「えぇ〜? 大丈夫ですよ、殿下はクリスちゃんのあげるのならいらないものでもとりあえず喜んではくれますって」
「いらないものあげたくはないから悩んでるんだよ! 前レイ君のアドバイスでユニコーンの角あげたら微妙な顔されちゃったんだから‼︎」
「え⁉︎ あれめっちゃ貴重品だし万能薬なのに⁉︎ 嬉しくない人とかこの世にいるんですか……⁉︎」
「待て待て待てお前らにプレゼントの才能がないことはよくわかった」
ヴィンスに止められて、私たちは不満顔を向ける。だけどそれを目にすることもなく、ヴィンスはやれやれと頭を振っている。
「なんでそうなる……いやレイはまぁわかるけど」
「えー心外です。ユニコーンの角めちゃくちゃ人気あるし、なんでも毒消しできるんですよ? 殿下なら毒殺封じに最適じゃないですか」
「そうそう、そう聞いたから3人でとりに行ったのに……」
「3人?」
「私たちと、あとうちの弟。リリちゃんも来たがってたけど、さすがに危ないから」
「……ブランドンには声かけなかったのか」
「え? かけないよ。止められるに決まってるでしょ?」
そう返すとひとつため息で返事された。アルと同じ反応だなぁ友達って似るんだねと思ってたら、「狩りはなしだ」と言われた。そこも同じだった。
「うんまぁ、そう言われちゃうから悩むんだけどね……別に危ないこととかなかったんだけどな」
「……少なくともピクニックとは訳が違いますからね。そもそも相談相手を間違えられたのでは? それこそブランドンなら、よい選択肢を提案してくれたはずですが」
「んー、ブランは普通すぎるんだよね。あと身につけるものをアドバイスしてくるから困る」
「しかし公爵令嬢は冒険者を目指しておいでとは知りませんでしたね」
「まぁたまにならありかも?」
「楽しいですもんね素材取りに行くの、ヴィン君も今度行きます?」
そんなレイ君の問いには答えず、「誰か世話役を連れてこいよ……」とこぼしている。レイ君のお世話が大変な気持ちはちょっとわかる。
「……とりあえず狩りはナシだナシ」
「じゃあなにあげたらいいと思う? ペンダントとか洋服以外で」
「なんでそこ避けるんだよ……一番喜ぶのそこだろ」
「わー無難が1番モテるってやつですー?」
「社交なんて無難でロマンチックなのが1番に決まってるだろ。少なくとも毒消しを恋人に贈るのがロマンチックなわけないよな?」
「ろ、ロマンチック……⁉︎」
「クリスが驚くのはおかしいだろ当事者なんだから」
縁がない言葉すぎておののいていたら怒られた。やっぱりヴィンスはロマンチストなんだ……だからモテるんだね……?
「でもアルってロマンチストかな……? リアリスト寄りじゃない?」
「そうですよー? 殿下、いつもオレの発明品喜んでくれますよ?」
「恋人からのプレゼントに実用性を求めるほどリアリストではないだろ……デート中に実用的なプレゼントされたら萎えるタイプじゃないか?」
「うわー、殿下ってワガママなんですねー」
「いや普通……というかそれはそうだろ⁉︎ 実用性とロマンチックを兼ね備えてるならまだしも、実用性だけなんて他と同じ扱いだろ⁉︎」
「うっ」
そう言われると痛い。
私はアルを気にしすぎている。
気にしすぎた結果冷たくなってる気はする。
でも手元に残るものは困る……!
あげる以上は捨ててほしくないし! あげる以上はちゃんと使えるものであって欲しいし! あげる以上は、邪魔になるものであっては——。
「いやまって。実用的でロマンチックならいいんだよね?」
「は?」
「この世界にはロマンチックじゃないものが実はあると思っていて」
「な、なんだ?」
「馬車だよ! 馬車の乗り心地、全然ロマンチックじゃないんだよ……‼︎」
車のないこの世界では移動手段は馬車。
だけど道は全然砂利とかもあるし!
クッション性……つまり乗り心地が微妙‼︎
「夜は暗いしあと安全性も微妙! 事故が起きたら普通に怪我をしてしまいますよね⁉︎」
「はぁ……それは当たり前だろ?」
「いいえ! ロマンチックには安全性と安心感と美しさがあってこそ憧れに昇華されるんです! お尻の痛くなる馬車にロマンチックは求められません‼︎」
「あ、いやそれは最悪風魔法でなんとかし……」
「レイ君‼︎」
「はいー?」
「クッション性を高めるために、そして安全性を高めるために衝撃吸収としてスライムを使えないかな⁉︎」
「お? なんですか面白そうですね? 具体的には?」
何か言われかけた気がしたけど、馬車ぐらい優雅に休めるところであれという心情に従い勢いで進める!
「車輪と椅子の部分、あとは壁の部分にいい感じにクッション性を持たせたい!」
「あはっいいですねぇそれ! それぞれ硬さと強度が変えなきゃ快適とは言い難そうですけど! 外壁にドラゴンの革とか使います?」
「いやそれは外観がゴツくなって美しくないから却下‼︎」
いくら丈夫でも見た目損なうのはダメ!
王族の馬車よ⁉︎ 優雅で上品でなくては!
王子様が乗ってて欲しいものであれ!!!
——こうしてロマンチックかつ実用性を目指したプレゼントは、その製造方法の権利とともにアルバート王子に献上することになり。
革命的なその馬車の技術はフィンセント王国の産業を変えることになることなど、全然考えてもいなかった。
【おまけ】
「どうですかこの乗り心地、ティアが素晴らしい発明を私にプレゼントしてくれたんですよ。内装も彼女の洗練されたデザインで、実用性と優美を備えた素晴らしく革新的な馬車——」
「……お前、これのために城に来た僕を馬車で送るって言ったな?」
「当然でしょう? そうでなければわざわざ送るはずがありません。用もないのに男同士で馬車に乗るなんて、正気の沙汰じゃないですからね」
「全然冷静じゃない自覚あったのか」
「自慢相手は限られますから、有効活用しないと」
「アルバ。オレという親友に感謝しろよ。あとお前たちはお似合いだ、間違いない」
「当然でしょう? 私の他に誰がティアの隣に立てるというのですか? この素晴らしさを伝え広め、後世まで残せる力も私にはあります」
「……黙って聞いて祝福してやる僕に、もっと感謝したほうがいいぞ。まったく……面白くて飽きない友人たちを持ったもんだな」




