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Uさんによる投稿・その3

 しばらく歩いてRちゃんの家に着くと、私たちはRちゃんのお母さんに早退の理由を問い詰められました。中学時代の元カレがうちの制服に変装して学校に上がり込んできた、という不出来な出まかせのせいで、私は学校に戻って先生に報告するフリまでしなければなりませんでした。それでも信じてもらえたのは、私たちの怯えように嘘がなかったからなのでしょう。ただ、漸く安心したRちゃんの横顔を見て、自分の選択が正しかったという実感が湧いたのを覚えています。

 勿論、天使が待ち受けているかもしれないと思うと道を引き返す気さえ起きず、私も浜に近づかないよう遠回りをして自宅に戻りました。母がパートに出る日だったので余計な言い訳はせずに済みましたが、一人で待っていると天使が来るような気がして、ずっと机の下で三角座りをしていました。

 そうして昼の3時を回った頃だったと思います。急にスマホが振動したことに驚き、私は頭を机にぶつけてしまいました。ラインを確かめてみると、Rちゃんから一件の新着が入っていました。アバウトにしか思い出せませんが、こんな感じだったと思います。

『Uちゃん、今日は助けてくれてありがと!! ショージキUちゃんがいなかったら、ガチで連れて行かれたと思う。っていうか、そもそも先月にそうなってたのにズっとお礼言えてなかったんだよね。ゴメン。とりあえず明日は晴れるらしいから、一緒にガッコ行こ!』

 その後もいくつかやり取りがありましたが、クラスの中の世間話とか、明日どんな言い訳をするかとか、架空の元カレのプロフィールとか、そんな内容でした。無事母が帰宅して人心地ついた後は、本当にのほほんと過ごしていました。

 ところが、夜になって母が私を呼び、Rちゃんのお母さんから電話がかかっているというのです。はじめは嘘がバレたのだと思い、それはそれで怖かったのですが、電話を代わってそれどころではなかったことを知りました。Rちゃんが失踪したというのです。お風呂に入った後、着替えを残したまま、荷物どころか、靴さえ履かずに。私は電話の前に座り込み、何も答えることが出来ませんでした。

 Rちゃんの失踪は警察沙汰になり、半年ほども本格的な捜索を続けていましたが、案の定というべきか、今日に至るまでRちゃんの骨一つ見つかっていません。結局あの短いラインが、私たちが交わした最後の言葉になってしまったのです。私も雨の日に出かけるのが恐ろしくなり、一度高校を中退したあと、高卒認定を受けて今の大学を受験しました。そう遠くはないけれど、あの街に住み続けることは出来ませんでした。



 投稿から1年後、怪談収集のためにF市を訪れる機会があり、私はもう一度Uさんに会えないか、消息を町中華の店主に尋ねてみた。Uさんがバイトを辞めたり、卒業して引っ越したといった類の話なら、私は落胆したかもしれない。だがそれどころか、店主によればUさんは年末には行方不明になっていたというのである。

「無断欠勤が続くからね、親御さんにも電話してみたんだけど、実家からも連絡つかないってんで、アパートを見に行ったそうでして」

 Uさんの部屋には誰もおらず、荒らされた形跡もなかった。貴重品が残されていなかったことから、警察はUさんが自ら部屋を出たきりだと判断したが、彼女の財布や学生証はすでに警察に届けられていたという。それらは遺失物としてスーパー銭湯に残されていたもので、目撃証言も映像記録も、彼女の受付を最後に途絶えている。

 勿論、二人の失踪が天使の手によるものだと断言することは出来ない。犯罪白書の数字を見ても、Rさんが失踪した当時の行方不明者は前後の年とほぼ同じである。この国では、毎年それくらい多くの人間が様々な理由でいなくなっているのだ。ただ、Uさんが私に怪談を提供してくれた時、既に自分の運命を悟っていたのではないか、だからこそ誰かに真相を伝えようと考えたのではないか、私にはそのように感ぜられてならない。

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