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水門のガーディアン——Water Gate Guardian——  作者: 上部乱


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第37話 雲の魔法


戦場の流れは、いつの間にか再びこちらに傾いていた。


第二の岩の龍首が投石機とウォーターカッターの挟撃で崩れ落ちたとき、胸の内にこれまでにない気勢が湧き上がった。


周囲を見渡すと、かつて戦場を跋扈していた龍首の悪魔や、動作の硬直した不死の者たちが、骨の龍首や岩の龍首の消滅とともに次々と潰れ、塵と化していった。


場に残るのは意識の朦朧とした盗賊どもだけだ。超常の力を失った彼らは、もはや砂の塊に過ぎない。


俺は心の中で推測した。おそらく、俺が最初に斬り落としたのは、死と負の力を象徴するあの骨の龍首だったのだ。


悪魔やアンデッドの召喚は、あの存在の力に由来していたのかもしれない。力の源を断たれれば、亡霊の大軍は自然と崩壊する。


だからこそ、後方の兵たちが落ち着いて投石機を組み上げられたのだ。

最強の脅威は、ひとまず取り除かれたのだ。


フェナリの表情はもはや優雅ではなく、歪んだ怒りに満ちていた。紫の瞳が激しく震え、まさか自分の側の頭を次々と斬り落とされるとは思っていなかったのだろう。


「残りの頭を斬れば、君の原初の母神ももう助けには来られないのではないか?」と、俺は横に構えて挑発するように言った。


フェナリは歯を食いしばり、歯の隙間から抑えた声を絞り出した。

「それを本当に成し遂げられるならな!」


彼の怒号とともに、

三つ目の龍首が姿を現した。


それは火の龍だ。鱗は熔岩から引き上げたばかりの鋼のように赤く、ひとつひとつが空気を歪めるほどの高温を放っている。


ファンタジー世界の王道そのものだ。

中二病全開の少年時代、俺は何度も自分が火龍の首を切り落とす妄想をしていた。

しかし、目の前に現れた実物の圧倒的な迫力は、想像の比ではない。


「ふん、火龍でも、さっきの岩龍ほど硬くはあるまい?」と自分を鼓舞して、俺は攻勢に出た。


指を伸ばしてウォーターカッターを噴出し、あの龍首が切り落ちるのを期待した。

だが火龍は素早く首を振り、地獄と繋がるかのような大口を開いて、灼熱の炎を噴き出した。


炎の射程は長く、威力は凄まじい。

俺の水刃は空中で炎に触れた瞬間、高温で蒸発し、白い水蒸気になって消えた。


まずい。俺が最も得意とし、勝算が高い技が、物理的に打ち破られてしまった。


火龍は容赦なく二度目の噴炎を放つ。


「くそっ! 水刃だけが全てじゃない!」と叫び、両手を前に押し出した。


「ジャイアント・ウォーター・キャノン!」

周囲の水分を狂ったように吸い上げ、巨大な水球を形成して火龍へと叩きつける。


水と火が空中で激しく衝突し、耳をつんざくような悲鳴が上がる。

火は一時的に押し留められたが、火龍の首自体には実質的な損傷を与えられなかった。

水球はせいぜい表面を濡らしたに過ぎず、火龍は濡れたことに怒りを増したように見える。


三度目の吐息では、炎の色がさらに深い純白へと変わった。

俺は再び水分を集めて防ごうとしたが、今回は集められる水量が明らかに減っていた。

さらに絶望的なことに、先ほど濡れた火龍の体表の水分は、ほとんど瞬時に蒸発してしまった。


二度の正面衝突で、周囲の水分はほとんど蒸発してしまったのだ。

理論上は蒸気を再び集められるが、ここは砂漠だ。

灼熱の熱風が吹けば、貴重な水蒸気はたちまち高空へと散ってしまい、俺の手の届かない場所へ飛んでいく。


火龍が低く唸り、四度目の吐息を喉の奥で溜めている。

俺は再び水分を集めようと試みたが、空気は乾ききっていて、どうにもならない。


今回は防げない――そう悟り、俺は目を閉じ、熱波が襲い来る前に現実を受け入れた。心の中で祈る。

クルユウドかシーリンが何とかしてくれることを。


そのとき、丸い物体が猛然と突っ込んできた。ボールが鋼のような力で俺の肩を掴み、背後で巨大な翼を広げた。


ボールは炎を真正面から受け止めようとはしなかった。

火焔が生む強烈な上昇気流を正確に捉え、俺たちはその熱気に乗って高く舞い上がった。

まるで風を操る鷹のように、下の火海を辛うじて避けながら旋回する。


高度が上がるにつれて熱波は弱まり、代わりに冷たい高空の風が吹いてきた。

目を開けると、上空に厚い雲層が広がっているのが見えた。


「厚い雲だと?砂漠の上空にあるはずがないだろう」と驚きつつも、すぐに気づいた。


これは偶然ではない、さっきの戦闘が生んだ産物だ。


龍の炎、巨大な水球、激しい蒸発、そして強烈な上昇気流――地理の教科書で習った、雲ができて雨になるプロセスそのものだ。


俺は自分が生み出した濃い雲を見上げ、希望の光を見出した。


「どうしてまだ雨が降らないんだ?」

と焦りながら雲を見つめる。


水分は十分にある。高空の温度も低い。

しかし砂漠の乾いた空気には、水蒸気が付着するための核が足りない。

今必要なのは凝結核だ。


「これは俺にできるはずだ……」

と深く息を吸った。


魔力は残り少ないが、

簡単な土の魔法ならまだ使える。


「砂霧!」


俺は魔力を拡散させ、上空に砂や微細な塵を送り込む。戦場で巻き上がった細かな埃や砂礫を集め、大量に雲の中へ撒き入れた。


雲はどんどん濃く、黒くなっていく。空気中の水分が塵の粒に急速に凝結し、雨滴は重さを増していった。


ポタッ、ポタッ。


最初の一滴が俺の顔に落ちた。続いて、砂漠では滅多に見られない豪雨が、狂ったように降り注ぎ始めた。


よし!これはもう俺の魔力ではない、自然の力だ。


俺は迷わず称号を切り替えた――水門ガーディアン。


雨の中、俺の力は無限だ。


「ボール!降りるぞ!」と叫び、雨に打たれて勢いを失った火の龍首を指差した。


俺は大声で咆哮した。

「奴を仕留めろ!」


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