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水門のガーディアン——Water Gate Guardian——  作者: 上部乱


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第36話 崩壊する岩山


凄惨な戦場を越え、俺はフェナリの目前に立っていた。


両者の距離は十メートルを切っている。戦闘開始以来、これほどまでにこの黒幕に近づいたことはなかった。


彼の純白のローブ、は、周囲の穢れた血や断ち切られた四肢と対照を成して、ひどく皮肉な光景を作り出している。


「奴を止めろ。」フェナリは淡々と三文字を吐き出した。


彼の側に残された龍首の悪魔たちは、まるで血に飢えた命令を受けたかのように、耳をつんざく咆哮を上げて一斉に襲いかかってきた。


「ボール、ここは頼む!」

俺のゴーレム、

ボールが、この瞬間に驚異的な戦闘機能を発揮した。


まるで高空から獲物を狙う鷹のように、ボールは鋼鉄の滑空翼をたたみ、落下の重力加速度を利用して、目標の一体に装備されたシャムシールを振り下ろした。


完璧な空中斬首だ。


鋼の重みと驚異的な速度が生む運動エネルギーに、龍首の悪魔は反応する間もなく、その醜い頭部が宙を舞った。


墨緑色の悪魔の血が噴き出す。俺は躊躇なく手を差し出した。


『浴血者』の称号が作動し、空中に散った魔力と水分を強制的に吸収する。


ボールは着地しても止まらない。丸い胴体を素早く回転させ、側面の装甲板を跳ね上げると、内蔵された連発の機弩を露出させ、悪魔群に対して近距離掃射を開始した。


どうやら悪魔側はしばらく俺の手を煩わせないようだ。


俺はフェナリを凝視し、片手にシャムシールを固く握り、もう一方の手の指先には魔力を込めたウォーターカッターが嗡嗡と鳴っている。


「来い!剣を見せろ!」一歩踏み出し、戦意は頂点に達した。

「正々堂々、勝負しよう!」


だがフェナリは剣を抜く気配すら見せない。


彼はただ軽く首を振り、相変わらず上品で優雅な姿勢のまま、野蛮人を見下すような哀れみを帯びた表情を浮かべた。


「まあ……私がこんな格好で一対一の肉弾戦をすると思うかね?」

彼は優雅に右手を上げ、軽く指を鳴らした。


嗡――!


空間が震える鈍い響きとともに、彼の背後に残っていた四つの龍影のうちの一つが再び実体を帯びた。


今回現れた頭は、先ほどの骨龍よりもさらに巨大だった。


灰白、土色、深い黒が混ざり合った異様な龍首。皮膚は凹凸のある奇怪な鱗で覆われている。


いや、それは鱗ではない。目を凝らすと、それは石の塊だった――石灰岩、砂岩、そして冷たい光を放つ黒曜岩まで混じっている。まるで大地の深部から掘り出された鉱山そのものだ。


「今回は腐った肉や骨ではないよ」フェナリは薄く笑い、嘲るような目を向ける。

「そう簡単には切り落とせまい。」


「そんなことはない!」

俺は叫び、全身の魔力を指先に注ぎ込む。ウォーターカッターを最細かつ最高圧に調整し、岩石の龍首へと青い弧を叩きつけた。


パチッ――!


水刃と岩が衝突し、確かに岩層は割れ、無数の石屑が降り落ちる。


だがその防御力は想像を超えていた。表面の岩層は厚く、俺の全力の一撃でも十センチにも満たない切り込みしか入らない。小山のような龍頸にとって、それはただの引っ掻きに過ぎない。


だが俺の魔力は尽きない。血さえあれば、使い切れないほどの資源があるのだ。


同じ箇所を少しずつ削ればいい。一撃で駄目なら十撃、百撃すればいつかは断ち切れるはずだ。


俺は踏ん張り、ウォーターカッターを最も細く、最も切断力のあるモードに切り替えた。


しかしこの岩龍は生きている。首をわずかに振るだけで、俺が苦労して刻んだ切り傷はずれてしまう。


そしてその巨大な頭が、まるで天から落ちてきた隕石のように、俺めがけて叩きつけられた。


龍族が火や毒を吐くと思っていた俺の予想は外れた。こいつは純粋で防ぎにくい物理的な衝撃を使う。


「くそっ!」

俺は後方へ転がり、立っていた場所は一瞬で大きな穴になった。まるで巨大な戦槌を振るう巨人と対峙しているかのように、岩の頭の下を逃げ回るしかない。


どうすればいい?焦燥が胸を締め付ける。ここ二日間の戦況推理にも、移動する岩山とどう戦うかの想定はなかった。


俺と岩龍の一騎打ちは、まったく互角とは言えない。こっちはほとんどダメージを与えられず、動作は遅いが追いつかれると致命的だ。だがそれは問題の本質ではない。俺が倒せない限り、フェナリは後方で死者の魔力を吸い続けるだろう。


膠着状態のまま時間が過ぎていった――


「シュウ――!」

遠方の防衛線から鋭い悲鳴のような音が響いた。巨大な物体が高速で空を切る音だ。


音の方へ目を向けると、完璧な放物線を描いて巨大な岩塊が飛んできて、岩龍の頭に正確に命中した。


ドゴン!


激しい衝撃で岩龍の胴体が揺れた。


こんな大きな石を持ち上げて投げる者がいるのか――巨人の援軍か?そんな味方がいた覚えはない。


顔の砂を拭い、戦場の後方を凝視すると、ワハーの村の縁に一列の黒い影が動いているのが見えた。


それは投石機だった。


攻城を想定していなかったため、これらの重機は第一線には置かれていなかったが、絶望的な状況に臨機応変なベイの兵たちが、投石機を急造してティアマトの幻影に向けて組み上げていたのだ。


「撃て!」

遠方から兵士たちの奮い立つ叫びが聞こえる。


雨のように落ちる巨大な石が暗闇を切り裂き、岩龍の頭部に連続して叩きつけられた。


頑強だった外殻は連撃で次々と砕け、石屑が雪のように舞い上がる。


ついに、層状に崩れ落ちた岩の隙間から、鮮やかな赤い「柔肉」が露出した。


「チャンスだ!」


その鮮紅を見つけた瞬間、全身の血が沸き立つのを感じた。


俺はウォーターカッターに全ての残存魔力と、『浴血者』で吸収したエネルギーを注ぎ込んだ。


「ウォーターカッター――!」


青い流光が走る。今回は妨げるものはなく、刃は脆い皮膚と肉を一気に切り裂き、投石で入った亀裂に沿って一閃した。


第二の龍首が、音を立てて落ちた。


普段は冷静なフェナリの顔に、ついに驚愕の色が浮かんだ。


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