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水門のガーディアン——Water Gate Guardian——  作者: 上部乱


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第13話 砂霧と滑空の翼


俺は手を掲げ、指先を三台の軽自動車ほどもある雛鳥たちへと向けた。

 

こいつらだけなら、三発の水弾で事足りる。

だが、本当の脅威は背後で鼓膜を震わせるほどの咆哮を上げている親鳥だ。

 

解放されたばかりの『土属性魔法』が、現状を打破するきっかけになるかもしれない。

何より、砂土を操る魔法なら、水弾のように俺の体内の貴重な水分を直接消耗することはないはずだ。

 

ゴーレム・コアのシステムインターフェースに、新たな魔法が点灯した。

――『サンド・ミスト』。

 

数値上の威力はほぼゼロだが、これには戦術的に極めて重要な効果がある。視界の遮断だ。

 

俺は深く息を吸い込み、掌を急降下してくる巨祖鳥へと向けた。

 

「土属性魔法――サンド・ミスト!」

 

黒煙のような砂嵐が俺の周囲から巻き上がり、巨大な砂の奔流となって、巨鳥の正面へとぶつかっていった。

 

砂塵が舞い上がった瞬間、親鳥の巨大な瞳が収縮した。

 

翻る黒い影を見た巨鳥は、あろうことか恐怖の表情を浮かべた。まるで自分よりも巨大な天敵を目にしたかのように、本能的に飛行ルートを猛然と逸らしたのだ。

 

……なぜ、あんな反応をしたんだ?

まさかこの世界には、この「生ける災厄」よりも巨大な生物が存在するとでもいうのか?

 

そう考えると、背筋に冷たいものが走った。

 

「今だ! チャクルを助けるぞ!」

 

俺の叫びと同時に、シーリンが雷光のごとき速さでチャクルの傍へと駆け寄った。

 

「どきなさい!」

 

彼女は凛とした動きで、一羽目の雛鳥を蹴り飛ばした。

雛鳥は体こそ大きいが、筋肉は未発達だ。まともに反撃もできず、よろめきながら巣の縁で足掻いている。

 

ボールも遅れは取らない。

あの大きく粘つく白い掌――『ペタペタハンド』が、二羽目の雛鳥の頭に「ベチャッ」と叩きつけられた。

 

もともと足取りの覚束ない雛鳥は、スライムに絡め取られ、巣の端でどれだけ抗おうとも逃げ出せなくなっている。

 

俺は三羽目の雛鳥の首筋に飛びつき、レスラーのように強引に組み付いて、チャクルから引き離した。

 

「チャクル、走れ!」

 

ようやく自由になったチャクルは、負傷しながらもその眼光は鋭いままだった。俺たちは急いで奴を連れ、崖の縁へと逃げた。

 

だが、ふと振り返ると、ボールが奇妙な行動をとっていた。

 

巨大な白ボンドの塊のようになったボールが、一羽の雛鳥の頭を完全に包み込んでいる。

中央のコアが強烈な赤い光を放ち、その輝きは粘つく体さえも透過していた。

 

まるで、何かデータを読み取っているような――。

 

『システム警告:遺伝子を解析中。原生動物の本能をロード中――』

 

「ボール! 早く来い!」

 

俺は必死に叫んだ。ボールの『クライミング』能力がなければ、この垂直な岩壁を降りることなど不可能なのだ。

しかし、ボールが合流してもなお、下山の道のりは過酷そのものだった。

 

巨祖鳥はすぐに『サンド・ミスト』の偽装を見破り、怒りに狂って旋回してきた。

 

「くっ……また来るか!」

 

迫りくる巨大な黒影。

この鳥は強大だが、知能はそれほど高くないらしい。同じ手だが、もう一度食らわせてやる。

 

俺は岩壁に張り付き、奴の体臭が鼻を突くほどの距離まで引きつけてから、叫んだ。

 

「サンド・ミスト!」

 

今度は巨鳥の両眼に、直接砂が飛び込んだ。

 

空中での方向感覚を失った巨鳥は、混乱した鳴き声を上げながら、制御を失った戦闘機のように俺たちの頭上をかすめ、背後の断崖絶壁へと激突していった。

 

轟音とともに岩山全体が揺れる。

 

その時、ボールにさらなる変化が起きた。

 

球体だった体が解け、粘つく変形自在の肉体が左右へと極限まで引き伸ばされていく。薄く、そして広く。

 

それはまるで、グライダーの翼のようだった。

 

『システムメッセージ:拡張プログラミング完了。』

『飛行モジュール起動:初級飛行――グライド。』

 

「こいつ……さっきの雛鳥から、飛行の遺伝子を読み取ったのか?」

 

俺は呆然とした。

ボールは俺たちの頭上を優雅な弧を描いて通り過ぎると、二本の長い『ペタペタハンド』を伸ばし、クレーンゲームのように正確に俺とシーリン、そしてチャクルの腰を掴み上げた。

 

「きゃあっ!」

 

シーリンが短い悲鳴を上げ、俺の腕を強く掴んだ。

 

冷たい岩壁を離れ、俺たちは黄昏の気流に乗って遠方へと滑り出す。

 

この高度から見下ろすと、地平線の先に微かな集落の影が見えた。

どうやら、あそこが俺たちの次の目的地――クレントラシュのようだ。

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