一章 4話 理想郷(ユートピア)計画
突如現れた夕闇夜宵と言う男。コイツは理想郷計画とかいう胡散臭い話を俺たちに話し始めた。
「理想郷計画…リーダー鈴木原が現在進行形で進めている俺たちの悲願…」
鈴木原博士…この人獣被害を出したとも言える男はまだ生きていて、しかもどうやら暗躍している様子だ。
「おっと…これから殺されるお前たちに喋っても仕方ないか。」
「…俺が部下を見殺しにさせるとでも?」
「アンタはまだまだ発展途上と行ったところか…それに比べ、他の5人はカスも同然だな…見苦しい…」
「俺の部下を分かりきったような顔で見下すのはやめてもらおうか」
「だが、隊長のアンタは俺には勝てない…俺に勝てるのは、第一、第二、第五、そして新しい第七部隊の隊長と言った所か…」
「なんでお前にウチの組織の内情が漏れてるんだ」
「ん?ただスパイとして潜り込んだら意外にも成功してしまっただけの事さ。」
俺たちは確信した。この組織はもう既に乗っ取られはじめているんだと。
「いやー今回は第六部隊の殲滅とはなら無かったが次は…」
「次は皆殺しだ。」
そう言うと男は去っていった。
あの男の出す殺気や、オーラで俺たちは言葉すら出なかった。そして、なんでこの人が隊長なのか理解した感じがする。この人は精神的に強いんだと。
「お前ら、大丈夫か!?」
「ごめんなさい。私副隊長なのに…また動けなくて…」
「…私も足が動かないわ…」
「隊長、俺も大輝も怯んで動け無くてすんません!」
「た、隊長、俺、」
「…お前たちがそこまで話せるようになったのならいいさ。それにアイツは俺のペットが皆殺しにされたと言ったろ?もうこの沖縄攻略は完了したんじゃないか?」
俺たちはその場で固まる。正直、あの男はいつでも俺たちを殺せただろう。それでもあの男は殺さなかった。
それはただの気まぐれだろう。それでも俺たちは…
「全員で大阪に戻ろう…俺たちの任務はまだまだこれからなんだからさ…」
「隊長、帰りは…」
「誰かに迎えに来てもらうか?正直、あの男との会話で俺は精神的にしんどい…あんなに自分の死をイメージしたのは初めてだったよ…」
俺たちは比較的怪我は無いものの、精神的にすり減って、歩くことすら辛かった。何も出来ない事への怒り、自分の死の連想、初めての戦闘の恐怖、大阪から沖縄まで徒歩で行かされたこと…一番はこれだと思うが…
「てか、他の隊って誰が来ると思う?」
「多分誰も来ないわよ。私たち最弱部隊だからリソース割きたくないんでしょ?」
「兄貴に一旦電話かけてみます。アイツなら多分来てはくれると思います。」
「頼む…俺は鬼灯さんにでも連絡取るか…」
数十分後…
「あっ、兄貴から返信きました。」
「どうだ!?」
「無免だが車をパチって来た。迎えには行くけどフェリーとかの関係でちょいと遅くなるって来てます。」
「おい、絶対に来させるな」
「あ、運転は俺の副隊長にやらせとるから安心しなって来てます。」
「副隊長は?免許あるのか?」
「あ、第七部隊の副隊長さんは免許取得済みだそうです。」
「ならいいや。」
「隊長、大輝をもう抑えられないっす!!」
「今度はなんだ…」
「猫カフェバーサーカーっすよ!?猫カフェ以外行くところ無いじゃないっすか!?」
「……俺たちはこれから迎えが来るまで、観光の時間にする!!1人にはなるなよ!!以上!!」
兄貴が迎えくるまでの数日間観光を楽しんだ。
そして3日後、兄貴が迎えに来た。
「弟よ元気だったか?」
「兄貴…普通に疲れたわ…あれ?横の人が副隊長さん?」
兄貴の横には高身長の美女がいた。正直、この人はカス兄貴の隊から早く別の隊に行った方がいいと思った。
「こんにちは。私は藤野美桜。第七部隊の副隊長を務めています。」
「ど、どうも。弟の波瑠斗です。」
「ところで、隊長。帰りも私が運転を?」
「ああ。人数が多いから俺は飛行機で帰るわ」
コイツは平気でそう言うこと言う男なのを思い出した。
正直、部下に運転させて1人だけ飛行機で帰ろうとしてるのはどうなんだ?
「なら私着いていきます。」
なんですと!?これウチの隊は結局自力で帰らんとダメなのか?
「いやいや、美桜さんアンタの運転はヤダ」
このクソ兄貴隠し事してるな?
「大丈夫です。次はもう少し優しめの運転を…」
「嘘だ」
「おーい!波瑠斗ー!」
続々と他のメンバーが揃ってくる。
「あ、あなたが波瑠斗のお兄さんですか。初めまして、第六部隊隊長の、張間墨です。」
「あ、ウチの弟が世話になってます。第七部隊隊長の紺青晴璃です。」
結局、車には8人で乗ることになった。
フェリーに乗るまで地獄のようなドライブが続いた。ぎゅうぎゅうの車内にかかる重力。速度超過と急ブレーキのコントラスト。
「う、うぉぉぉぇぇぇ…」
「波瑠斗、これレンタカーだから吐くなよ?」
「さすがに…あっ…」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
数時間後、フェリーに乗った。なんと快適な事だろう。
「…紺青隊長少しいいですか?」
「あぁはい。大丈夫です。」
「今回俺たちは明確な敵と出会いました。そして、」
「理想郷計画ですか?」
「っ!何故それを…」
「実は俺もそんな事をほざく敵と会いました。約2週間くらい前、俺が隊長として初めて任務に行った時です。初めて会った隊員達を守りながら戦いました。」
「そんな事が…」
「…張間隊長、俺は人間と会話をしたらある程度相手の本性やどういった人間なのか分かります。」
「今日あなたと会って俺は全ての隊長と会話しました。そして、特に怪しい隊長が数名いました。」
「…誰なんです?」
「若輩者の戯言と思って聞いて貰えたら…
怪しいと違和感を感じたのは、第一部隊、第三部隊、第四部隊の隊長に対して違和感を感じました。」
「…そうか。君がそう思うってことはホントにそうなのかもしれないな。」
「もちろんただ相性が悪いだけかもしれないです。でも、第一部隊の隊長だけは確定で黒だと思ってます。」
「それはなぜ?」
「人獣側の人間に理想郷計画がという話をしたらただ一言。そうかと言われました。」
「それはただ適当な反応をしただけじゃ…」
「俺はあの時の嬉しそうな顔を忘れません。多分何か知ってますよ。」
「さすがにそう言われると疑っちまうな…」
「俺の考えすぎですかね…」
「いや、俺たちは明確にスパイがいると言われたんだ。ただ、どの隊長にしても証拠がない。ま、もう暫く静観するのが安牌かな。」
「そこでもう一つお話が。」




