一章 3話 初戦闘
俺たちは鹿児島の海水浴場から沖縄本島まで泳いだ。東京の災害の影響だろうか。泳いでるときに気づいたが、魚が異常な大きさになり、かなりの数が繁殖していた。そして、サメは太古の姿を取り戻していた。15メートル以上。
泳げない俺と愛さんは体長に担がれながら、スリリングなひと時を過ごした。
そしてついに・・・
「お前たち!!沖縄の本島が見えてきたぞ!!」
「隊・・・長・・・ゆっくり・・・泳いで・・・吐きそう・・・」
愛さんは普通に横で吐いていた。
「うわぁぁぁ!波瑠斗、お前は耐えてくれ!!」
「隊長、ここもう足つきます」
「・・・ここでバシャバシャ遊んでるのお前だけ」
「私が隊長になって、あなたが副隊長になれば?」
隊長は約10分くらい余裕で足がつく浅瀬で俺たちを担ぎ、暴れていたようだ。少し情けないと思った。
「波瑠斗、お前今情けないとか思った?」
「いえ。」
「愛、お前今2人担いでメガロドンから逃げ切った俺のこと情けないと思った?」
「浅瀬でもまだ慌てるなとか言ってるのはダサいと思ったわ。あなた隊長でしょう?」
「お前ら一回殴らせろ」
なんて言いつつ沖縄本島の北側の市である国頭村にある宇佐浜ビーチについた。ここから、今回人獣被害が出ている那覇市に向かう予定だ。ただし、徒歩で1日ちょっとかかるらしい。ん?1日とちょっと?これは予想外だった。
「隊長、報告が」
「どうした太郎?」
「ここから被害が出ている那覇市まで徒歩で1日かかるんですが、」
「仕方ないだろう・・・それで?」
「現在台風が沖縄に上陸するらしく・・・」
「うーんもう帰りたい」
「さらに物価高の影響もあり、大食い副隊長の影響もあり、」
「嫌だ、やめてくれ。それ以上言うn」
「今夜は台風直撃の中野宿になりそうです」
「俺たちこれ戦闘風と言ってもただのちょっと頑丈になったジャージみたいなものだぞ。風邪引くぞ。」
「流石に私達女子組はホテルに泊まれますよね?」
実はこの副隊長、第六部隊のお金の管理を担当していたのだった。なので、小遣い以外は基本副隊長の許可がいるのだ。だが、第六部隊がホテルに泊まれない原因も副隊長であったのだ。
「10倍の食品の物価高の中、20人前食べようとしたバカは誰だよ。」
「すみませんでした。」
「災害前の一人前の客単価はだいたい2000円くらいが平均らしんだわ。その20倍以上食ってさ、しかも食料品は災害前後で10倍くらい変わってるんだわ。」
「はい。」
「ファミレスで50万以上の会計なんて聞いたことないぞ」
「はい。」
一体この金髪副隊長はどれだけ食べたんだろう・・・第六部隊の資金全部溶かして・・・
「隊長、雨が降ってきましたけど・・・」
「・・・お前ら、とりあえず走るか?」
俺たちは走った。その間副隊長はサバ読んでいたことが発覚し、実は3桁万円の会計だったらしい。
特にワイン類が高かったらしい。まぁ皿洗いでどうにかなるレベルではなかったので、第五部隊隊長の妹にツケて逃亡してきたらしい。もう何かの犯罪だろ。
「だってあの娘の月収私の5倍はあるのよ?いいでしょ、ツケくらい。」
俺は気づいた。多分この第六部隊は上層部が手に負えないから適度にパワハラして、関わりたくない部隊なんだと。ならず者たちの集団なんだと。隊長は酒カス、アホみたいに食べまくる副隊長、ギャンブル中毒の3人、猫カフェバーサーカー。文字に起こすだけで分かる。多分俺たちは、大阪から追い出されたんだと。
「あ、隊長。そういえば新しい部隊ができたの知ってる〜?」
「え?知らないけど。副隊長は何か知ってるのか?」
「ふふふ実はね・・・波瑠斗君のお兄さんが隊長なんだよ〜!!」
「マジか!?」
「マジです。なぜか兄貴が選ばれて・・・」
「なんかねー中学生や高校生の子達を育成して戦闘する部隊らしいよ」
「うーん俺的にはこのバカ副隊長を育成してほしいものだが・・・」
「話してる場合?雨風強くなってきたわよ?」
「愛、太郎、大丈夫か!?」俺たちについて来れてるか?」
「俺たちは大丈夫ですけど、大輝は消えました」
「あれはいいや。」
結局12時間ほど走った挙句、俺たちはなんとか那覇市にたどり着いた。
ここにはどれほどの人獣がいるのか。
どれだけの人間が被害に合っているのか。
そんな情報が何もない中、戦闘が始まろうとしていた。
「よーしお前ら、なんとか国際通りまで来たな」
「そろそろ初戦闘ってわけね」
「波瑠斗君と愛ちゃんは私が守るよ!!」
「オタクの俺も守ってほしいんだけどな・・・」
「戦闘か・・・鍛え上げたこの力が発揮されるとき・・・」
(初めては殺されかけたな・・・パニックになりながら意識も朦朧としていた。でもあの時とは違う。人獣は俺たち、生き残った人類を恨んだ果ての獣・・・コイツらにあの時の復讐をしてやる・・・)
「いいか!!副隊長は知ってると思うが、人獣たちは話かけてくるが、流暢には喋れない!!話せば1発で分かる。」
違和感だった。流暢で話せない?思い出してほしい。俺と兄貴があのおじさんに殺されかけた時。
あのおじさんは片言で話していたか?兄貴に看破された後も言葉が詰まっていたのか?
答えはすぐに出た。
うめくような声。
自然な人間を振る舞おうとする不自然さ。
「ぁの・・・tすkええええてくだ、だssssssい」
笑顔だがまともに喋れない男がいた。
これが人獣なのだ。
じゃあ俺と兄貴が遭遇したのは?
「隊長!!俺と兄貴はこんなやつに遭遇してない!!人獣はホントに人間の擬態じゃないんですか!?」
混乱が起こる。彼ら第六・・・いや、ABHOの人間は全員、この人に似た何かというのが人獣の定義なのだろう。
「波瑠斗!!お前何言ってんだ!!いいから戦うぞ!!」
隊長が人獣との距離を詰めて戦闘を始める。
ここで人獣の倒し方について解説しよう。
人獣の倒し方は、頭と心臓の同時破壊。約1分以内にそれを達成したら、人獣は完全停止後、蒸発して死んでいくという流れなのだ。
「俺たちは武器が素手しかない部隊だ!!」
なんて叫びながら隊長の正拳突きが人獣の心臓部に直撃する。しかし、心臓破壊とはならず戦闘が続く。
人獣も抹殺モードに入ったのか、人獣としてのスペックを発動していく。
「!?はやい!!」
「隊長、後ろ!!」
咄嗟に副隊長が人獣を蹴り飛ばす。
しかし、胴体に直撃だったため、大したダメージにはなっていないようだった。
他にも太郎さんや愛さんの攻撃も人獣は難なく躱し、大輝さんの一撃で何とか動きが遅くなったくらいだった。
「今だ波瑠斗!!」
俺は渾身の一撃を 人獣に放った。と言っても、訓練期間中、兄貴と戦闘してた時と同じくらいの力。
刹那、人獣の頭が吹き飛ぶ。
「…は?」
「波瑠斗!心臓も潰せ!」
隊長の掛け声と共に人獣の心臓の辺りに前蹴りを放つ。
これも全力とはいえ、兄貴や鬼灯さんなら余裕で耐えるそんな蹴り。
しかし、人獣の心臓付近に大穴が空く。
「…へ?」
「よくやったな!波瑠斗!」
「やっぱり君は強いね〜私副隊長でいいのかな〜」
「ち、ちょっと待ってください!今の攻撃なんか兄貴や鬼灯さんは余裕で耐え…」
「…あのな、波瑠斗。多分だけどソイツらが異常なんだわ。俺たちは人獣と大差ない身体能力と筋力を得てはいる。でも、実戦経験なんて無いし、訓練だけじゃ中々上手くいかないもんなんだよ。」
「俺は別に兄貴達に比べて…」
「あぁ。でも勝ったのはお前だ。誇っていいんだぜ。俺たち5人は人と戦ったことなんて無いさ。それも全力で。正直、怖いと思った。隊長失格だな…」
「俺は…」
「すまん!まだ人獣はいる!話はそっからでもいいか!?」
どうやら太郎さんが他のところから人獣を引き連れて来たらしい。
さっきの俺の人獣討伐から隊長達は人獣討伐に必要な力の出し方を知り、どんどん討伐することに成功して言った。
そして1時間ほど湧き続けた人獣を討伐して行った時だった。
「…まさか俺のペット達が皆殺しにされてるとは…」
背後から声がする。全く気づかなかった。
「…アンタは?」
「ん?俺か?俺は夕闇夜宵。理想郷計画を達成するために奔走している進化した人類だ。」




