五章 1話 死闘の始まり
それは花火が打ち上がるまでの数時間、とある兄弟が殺し合う話。2人は互いの位置を何となくだが妖刀を通じて理解していた。もちろん、完全武装であり、銃刀法を踏みつけるかのように大量の銃と刀を用意していた。AM11時26分、兄弟は淀川大橋でエンカウントする。晴璃は一言だけ喋る。
「俺は……お前達を殺してやる……」
目は前よりも充血していた。
「お前本当は魔法解除できてるんだろ。もう幻覚魔法かかってるフリなんて止めろよ。」
波瑠斗は魔素を探知できる指輪をはめていた。コレはもし、紺青晴璃がまだ幻覚魔法にかかっていたらその魔法の魔素に反応するというものだった。結果として反応はあった。
(まだ……幻覚魔法にかかっていたのか……?やっぱり止められ無いのか……)
そして指輪が反応していたのは兄だけでは無かった。自分自身にも反応していた。つまり、波瑠斗はまだ本当の記憶が戻っておらず、ツギハギの記憶の断片にある怨嗟だけを思い出している状態だった。
(俺にも……反応している……?ま、いいや。どうせコイツは殺さないといけないから関係ない。)
波瑠斗は晴璃との距離が5mくらいになったタイミングで不意打ちのレールガンを発射する。しかし、晴璃は体を捻り躱す。それと同時に遠くで爆発が起こる。人々の叫び声、パトカーのサイレン、救急車の音、消防車の音、色んな音が雑音となり混じっていく。そして懐に隠してたリボルバーを晴璃の胴体に5発命中させる。
「ぐぁぁぁぁっっっっ!!」
しかし晴璃はすぐに手榴弾を波瑠斗に投げつける。波瑠斗は後方に飛んだものの、右足の膝からしたが吹っ飛ぶ。そして、警察達が駆けつける。
「お前達!!何をしている!!」
しかし、晴璃は妖刀を抜き警察目掛けて斬撃を飛ばす。1人の警官が左肩を斬られ気絶する。すぐ横にいたもう1人の警官はその様子にパニックになり、腰を抜かす。波瑠斗はすぐに叫ぶ。
「アンタらじゃ対処できねえ!!淀川大橋の交通を規制しとけ!!」
─人獣対策機関会議室─
「郷道代表、今回はお時間をお取りいただきありがとうございます。」
「いえ、総理の要求とあらばいつでも……」
郷道はいつも報告書を読む時より緊張していた。というのも人獣対策機関は赤一文恵首相の独断で結成された組織であり、郷道の直属の上司ともいえる存在だったからだ。また、いつもより郷道が緊張していた理由として、桜島の件であることが予想できていたからだった。ここで問題があった。郷道は桜島の件に関する報告書がまだ届いておらず、そもそも桜島でなにがあったのか、なぜ紺青晴璃が行方不明になったのか把握していなかった。
「総理......やはり桜島の件ですか?」
「はい。現在マスメディアが桜島のドラゴンについての事や人獣の増加、東京の現在の様子などを追及されていまして、そこで進展があればお話を聞きたかったのですが。」
郷道は報告書にあった京都までの出来事を話した。管理者の存在と覚醒者の存在など。そして、桜島に関する情報は自分の元にすら届いておらず、自身のプライベートジェットが一機墜落したことしか報告できなかった。
「......あなた方の現状は理解しました。引き続き人獣対策をお願いします。また、あなた方は公にはできない存在ということを忘れないよう......」
その時会議室の扉が勢いよく開く。開けたのは、第三部隊隊長の黒淵だった。
「代表!!テレビのあの騒ぎは何です!?なぜあの兄弟は戦闘をしているのです!?」
ー淀川大橋ー
波瑠斗はリボルバーの最後の1発を脳天に直撃させる。晴璃はその場に倒れこむ。周りには人だかりができ始めていた。波瑠斗は違和感を覚える。半年も殺し合ったうえで殺し切れなかった兄貴が簡単に気絶するのかと。心臓を潰せば勝利だ。だが、誘い込んでいる気がしてならなかった。その時晴璃の体が爆音とともに吹っ飛ぶ。自爆。これは異世界で錯乱していた晴璃の十八番ともいえる戦法だった。その時の記憶が体に染みついていたのだろう。近づいたら、油断した時に、特攻してゼロ距離になったタイミング、など様々なタイミングで魔法攻撃で自爆する。今回も魔法による自爆攻撃を仕掛けて来ていたのは波瑠斗から見れば明白だった。
「てめぇまだそんな戦法取ってくるのかよ。」
「あぁん?あひゃひゃひゃひゃひゃ何度でも自爆してやるよ!!」
晴璃は鉄葉巻を手に取り、波瑠斗に近づく。そして二人妖刀での白兵戦を始める。互いに切り合っては切られた部位がすぐに再生し、また切りつけた。そうして斬り合いが1時間ほど続いた時、晴璃は長巻特有の戦い方に切り替える。晴璃は長巻の柄のリーチを生かし、柄の部分で波瑠斗の側頭部をぶん殴る。
「ぐうっ......」
晴璃は頭を押さえしゃがみ込む波瑠斗に長巻を振り下ろす。波瑠斗は煙丸で何とか受け止めるものの、殴られた衝撃で脳震盪を起こしていた。耐えてはいるものの、切り落とされるのは時間の問題だった。かすかな意識の中、突然自分にかかっていた力が消える。ぼやけた世界の中、錯乱状態の兄が吹っ飛ぶのを横目に気絶してしまった。




