五章 2話 レイドバトル
─人獣対策機関第六部隊オフィスにてにて─
「みんな集まったな!!これからの作戦を伝える!!」
AM9時頃、第六部隊のオフィスにて紺青晴璃捕縛作戦のメンバーが全員集合していた。
「では、今回の作戦について簡潔に説明していく。まず、俺達は紺青晴璃本人を見つけ出す事から始めなければならない。現在ここには18人の人間がいる。そこで1チーム6人に別れて行動する。また異世界組は被らないように分けていくぞ。1チームごとの戦力に差が出ないように、チームリーダーを決める。チームリーダーは俺、第六部隊隊長張間墨と、第六部隊副隊長霧ヶ崎優奈、第七部隊副隊長藤野美桜の3チームだ。まず、翔也。お前は俺のチームだ。次に湊、お前は副隊長のチームへ。果蓮は藤野副隊長のチームへ。基本的に戦力差は無くしたいため、最上咲菜。アンタは自分の副隊長の援護だ。というかアンタだけで過剰戦力過ぎる。じゃあ決めていくぞ。」
こうしてチーム分けが進んでいく。まず、墨のチームは張間墨、青木翔也、天ノ川蛍、長戸悠、田村海斗、夕闇朧の6人。次に優奈のチームは、霧ヶ崎優奈、中野湊、一条愛、山田太郎、後藤大輝、覇宮龍護の6人となった。そして最後に美桜のチームは、藤野美桜、旭果蓮、最上咲菜、大山由貴、多田みのり、中川陸の6人のチームとなった。
「うーん分けた俺自身が思うがやっぱり1個のチームに管理者の五本指の2人がいるのは過剰過ぎないか?」
「私はそうは思わないわ。だって私もう管理者側じゃ無くて、人獣対策機関の戦闘員って立場だから。」
咲菜は笑顔で返す。元、五本指の第二位の実力者が笑顔になると、周りの空気がヒリついた。
「アンタ何考えてるか分からん。とりあえず、これからの作戦について話して行くぞ。基本的に俺らの目的は紺青晴璃の無力化と精神汚染させている魔法の解除の2つだ。なので、まずは3チームで紺青晴璃とおそらく一足先に戦闘を始めている波瑠斗と合流する事がステップ1。そして、波瑠斗と7人でレイドバトルしてる時に残りの2チームも合流して、19対1の状況を作り出すのがステップ2。ステップ3で紺青晴璃の無力化、精神安定化の後捕縛。流れとしてはこんな感じだ。質問あるやつは?」
咲菜が手を挙げる。
「別に私達のチームだけでやってしまっても構わないのでしょう?」
「それは相当昔のゲームの死亡フラグだぜ。まぁ、できるならって感じになるだろうな。」
咲菜はワクワクしていた。腰には既に太刀を装備し、いつでも戦闘できるといった様子だ。
「他に質問のある奴は?」
龍護が手を挙げる。
「1つ気になったんだが……桜島の時ですらあの暴れようだったのに、無力化及び鎮静化と精神を安定させるって具体的にどうするんだ?」
それは今最も大事な質問だった。桜島での発狂の仕方や暴れ方からして、無力化及び鎮静化なんてとても不可能だと龍護は感じていた。
「それは私から。」
果蓮が話す。
「そもそも、錯乱状態なのは晴璃さんだけじゃない。波瑠斗もそうだった。」
「過去形……か。」
「えぇ。私もここ数日で思い出したけど、錯乱していたのは1人だけじゃなかった。波瑠斗も錯乱状態に入っていて、兄の晴璃さんだけを殺すマシーンになっていたのよ。ま、冷静に考えてそうよね。あそこまで仲良かった兄弟が突然殺し合いしかできなくなるなんておかしいもの。」
墨が間に割って入る。
「だが、アイツも現状魔法で精神が汚染されて錯乱してるんだろ?それじゃあ俺たちはかなり詰んでないか?」
「いえ、波瑠斗の場合は少々事情が特殊なんですよね。まぁその諸々の事情を知ってたのは晴璃さんだけなんですが......おそらく波瑠斗は予想ではありますが......」
「なんだ?」
「パパ......旭慎司が関わってるのかと......パパは彼にかなり執着していたので......」
「ま、とりあえず俺たちがやることは変わらないって訳だな。それに記憶がなかったとはいえ元々仲の良かった兄弟が半年以上も殺し合うなんて辛すぎる。じゃあ早速俺達連合部隊出動!!」
ー現在ー
いち早く、淀川大橋までたどり着いたのは、藤野美桜が率いるグループだった。野次馬と警官達の間を潜り抜け戦場に駆けつける。目のまえでは波瑠斗が柄で殴られ頭から大量の血を流し倒れるところに直面した。
「早かったのは私達のグループでしたね。」
「副隊長、私が隊長の事押さえておくので他の部隊に連絡を。」
咲奈は刀を抜きながら話す。
「咲奈、アナタがいれば万が一ってことにはならないと思うけど油断だけはしないで。私たちは波瑠斗さんの魔法をなんとかして解除して見せます。具体的に10時間ほど戦ってて頂戴。」
「......私の事嫌いだからってパワハラが酷過ぎじゃない?」
咲奈は晴璃との距離を一気に詰め、回し蹴りで晴璃を吹っ飛ばす。そして、間髪いれず両腕を落とす。落下した妖刀・鉄葉巻を拾い晴璃とは逆の方向へ投げる。
「あら、宮島の時より弱くないです?隊長。」
晴璃は少し笑みを浮かべて話す。
「可愛い部下に手出せねぇよ。咲奈。」
油断。普段なら絶対言わないであろう言葉。それでも。それでも気になる人にそう言われると少し体が止まってしまった。
「咲奈、帰ろう。」
その声は甘くまるで恋人に話すかのようだった。なぜ錯乱状態の波瑠斗が絶対に晴璃を殺そうとするのか。それがすぐに分かることとなった。
「ぐはっ!!」
晴璃の足が咲奈の腹をえぐる。見えないほどの速度から繰り出される前蹴り。貫通はしなかったものの橋の支柱まで吹っ飛ばされてしまう。
「あー誰だっけお前。失せろや。」
これが波瑠斗が晴璃を殺すと決めた理由。晴璃自信を思ってくれる人に対してしてはいけない態度を取り続け、果てには殺そうとする。そんな奴は生かしておけないと思ったところからこの殺し合いは長引いてしまっていた。
「咲奈!!果蓮あとは任せます。それに由貴とみのりは果蓮と待機!!陸は私とともに隊長を押さえますついてきなさい!!」
「了解っす。ところで副隊長、俺達で隊長って止められるんですか?」
「無理ね。だからそこで伸びてる女を身代わりに戦います。私は狙撃銃で援護するのであなたはそこにある妖刀で戦いなさい。」
「服隊長さすがにこんなに柄の長い刀俺には......」
「大丈夫。あなたには齢26の頑丈な盾があるわ!!」
陸は思った。それは副隊長も一緒だと。そして今の自分を立場を痛感する。怒れる隊長を抑えなくてはいけないのだと。
「はぁっ......はぁっ......なんで私年齢をバレされて身代わりにされなきゃいけないのよ......」
「さぁ来ますよ。私が援護射撃するので二人は隊長を押さえて!!あと咲奈は被弾しないように注意して。」
「私が!?ちょっとまだ再生しきってない......」
その時橋の反対側から走ってくる人影が見えた。それは優奈のグループだった。
「なんとか間に合ったわね」
優奈のグループ全員戦闘態勢に入る。
「湊は魔法解除の手伝いに行って。それ以外の人は全員で紺青隊長を取り押さえます。行こう!!」
みんながじりじりと晴璃に近づく。冷静になりながら、彼を見極め隙を窺う。しかし、すぐに静寂は消える。晴璃は腕を再生した瞬間バズーカを構える。それは波瑠斗の頭蓋骨をかち割った次いでに奪ったものだった。
「汚物は消毒ってなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
晴璃は波瑠斗の方へレールガンを飛ばす。轟音。蒼く光る閃光が波瑠斗達の方へ向かう。それに気づいた咲奈はすぐに波瑠斗達を抱え間一髪のところでみんなを助ける。その光景を見たみんなは固まってしまった。それは晴璃が本気で異世界で過ごしたメンバーを殺そうとしているということを感じ取ってしまった。
「隊長あなたって人は......」
美桜は晴璃の頭を狙って狙撃する。しかし耳をかすっただけだった。
「しくじった.......!!!」
美桜に向かって晴璃は走り出す。そこに大輝と龍護が割込み肉弾戦を始める。大輝の渾身の左ストレートと龍護の掌底を同時に顔面に受け、その場でよろける。
「いってぇなぁぁぁ......どうやって始末してくれようかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「怒髪天といったところだな。」
「ええ。この様子では猫カフェには入れませんね。」
その発言を聞き晴璃は話す。
「俺猫にはモテるんだよな。お前とは違って。」
この発言が猫カフェバーサーカーに刺さってしまう。
「殺す!!」
大輝は晴璃と殴り合いを始める。しかし、体格差の分大輝がやや優勢だった。しかし晴璃はまたすぐに機転を変え距離を取る。そして、落ちてた鉄葉巻を拾い上げ、優奈たちに向け斬撃を飛ばす。
「また距離が遠い相手を狙うのですか!!」
「お前にはこれやるよ。」
晴璃が大輝に投げつけたもの。それは体中にダイナマイトを装着された猫だった。
「ここまでやるか!!」
猫を受け取った瞬間ダイナマイトは爆発する。
「おいおいぬいぐるみだぜ?普通はどっかになげるだろバカか?ま、受け取った瞬間に爆発するようにしかけたのは俺だけどな。ははっ。」
波瑠斗が目を覚ます。そこで見たのは兄が仲間にぬいぐるみ爆弾を投げつけるところだった。
「アイツまだそんなこと......」
フラフラにながら立ち上がる。
「波瑠斗、まだ座ってて。ちょっとアンタの魔法解除するから。」
「あ?俺の?忘却魔法ならとっくに......」
「よく聞いて。あなたはまだ忘却魔法にかかってる。それにもう一つ。」
「もう一つ?」
「傀儡魔法をかけられてる。」
「何?」
「だからそれを解除する。なんであんた晴璃さんのこと執拗に殺そうとするの?別に動けないように取り押さえたらいいだけなのに。」
ここで晴璃は気づく。今までの自分の発言。そして兄、晴璃との死闘の日々。思い返せば、いつでも拘束できるときはあった。だけど毎回波瑠斗は兄を殺そうとしていた。なぜ殺そうとしていたのか。そこが忘却されていて思い出せなかった。
「あんたが殺そうとするから錯乱した晴璃さんが余計暴走するの。ようは火に油を注いでいたのよあの半年の間。だから、今の晴璃さんはあの頃より殺意や錯乱はしていない。だからあんたにかけられている魔法を解除しないといけないの。」
「そう......だっけ......俺は......今まで......」
果蓮は解除魔法を発動する。
(これが私が持ってる最後の指輪の最後の魔素。これ以降私は魔法を使えないな。後は誰かが魔法リングを持っているかだけどおそらく晴璃さんだけ。だとしたらこれ以上レールガンを発射されるのはマズイな。)
一方他のメンバーの戦闘は激しさを増していた。晴璃の騙し討ちに何度も合い、どんどん消耗していった。自分の部隊の隊員も殴り飛ばし、蹴り、切り捨てていった。普段ならこの人数でかかれば取り押さえるくらいはなんてことはない。しかし、晴璃は一人一人の弱点や不意を突いていった。
「ははっ。この人数でも俺を捕縛できないなんてなぁ!!王国も落ちたものだな!!」
晴璃の錯乱はさらに悪化していった。2年半前の記憶と今の記憶が混ざりあい、正直一人一人を意識的に認識はしていなかった。その時墨のグループも合流する。PM12時。戦闘はいよいよ連合部隊全員を含んだ戦いになっていく。墨の携帯が鳴る。それは人獣被害が出たというものだ。
(こんな時に俺が呼ばれるのか場所は大阪!?しかも淀川方面......まさか、紺青隊長の事か!!上層部はこれを機に紺青隊長を始末しようとしているということか......!!なに!?第四、第三部隊が増援に来るだと!?なら俺達が取る行動は一つ!!)
「お前ら聞け!!今すぐ紺青隊長を取り押さえる!!おそらくこれ以上時間をかけると本部から別の隊が送られてきて本当にゲームオーバーだ!!30分!!これが俺達のタイムリミットだ!!気張れよ!!」




