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東京陥落  作者: シロップ漬け
四章 覚醒の火山編

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四章 7話 忘却の彼方の記憶

「……紺青隊長……アンタ……」


「…………」


「どう……して……だ……うら……ぎった……のか……」


「…………」


─波瑠斗視点─


「副隊長!!後は俺がケリ付けます!!」


「わ、分かったわ……私もそろそろ体力の限界……」


果蓮との死闘を2時間以上も続けた優奈だったが、疲労困憊でその場で倒れ込む。そんな優奈を美桜が介抱する。


「……波瑠斗、私はただアナタの事が好きなだけなのに……どうして一緒になってくれないの!!」


「いや、普通に俺がお前のことを知らないから。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


どこかで言った気がしたこの一言。どこでだったかは覚えてない。それに今の俺自身果蓮に対しての憎しみや敵意何てこれっぽっちも無い。ただ、果蓮とここで会った時の違和感。それに何故だか分からないがこれを思い出す時は全て良くない方へ傾く気がする。繋がったらダメな記憶。脳の片隅に映る記憶


─3年前─


「俺……4人が……えてる今……」


「わか……した……あな……3人……をま……でけ……した……さような……わた……の……たいせ……な……」


記憶はここまでだった。そこには俺と果蓮、湊と翔也が映っていた。兄貴の姿は無かったが、何かとても切羽詰まった状況だった。そして、目の前で泣きながら魔法を行使する天使のような女性。一体何が……3年前俺達に何があったのか……。頭痛が激しくなる。忘却の彼方に飛ばされた3年前の記憶……。


「は、波瑠斗。私、今の一言で……5年前異世界に行った直後に、フラれた憎しみとか八つ当たりとかの()()()()()()()()()を思い出したよ。」


波瑠斗と果蓮はその場で戦闘態勢を解除し、話し始める。5年前異世界で2人が友達になった事。異世界を波瑠斗、湊、翔也、果蓮、晴璃の5人で生き延びた事。そして、あの最後の記憶の事。2人は徐々に思い出して行く。5人が何をしていたのか、その時の感情も。2人の感情は3()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「果蓮!!ヤバい思い出した!!俺達は争ってる場合じゃない!!」


「ちょっと冷静になって!!私達は思い出したけど……」


2人の様子が代わり、優奈と美桜が近づく。2人の話を聞いて彼らが何故記憶を失っていたのか。そして、優奈と果蓮も互いに死闘を止め、休戦し和解した。少し哲学的な話になる。世の中にはシンクロニシティという概念があるとされている。これは「意味のある偶然の一致」を指すとされている。ここで問題が発生する。記憶を失っていたのは波瑠斗、果蓮、そしてここにはいない湊と翔也の4人は確定している。ここでシンクロニシティという「意味のある偶然の一致」が発生していたとする。つまりこのタイミングで記憶が戻る人間は兄である晴璃も含まれるということになる。ここから波瑠斗や果蓮の記憶に兄の晴璃が居なかったことへの答え合わせが始まる。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


甲高く発狂する声。奥から投げられた妖刀・鉄葉巻。波瑠斗は優奈の持っていた妖刀・煙丸を奪い横に弾き落とす。奥からは記憶が戻った兄の姿があった。それ姿は目が充血し、顔は血管が浮き出ていた。また、強化人間の覚醒状態である四肢が感情に呼応して色が付く状態になっており、色は前よりも濃い赤と黒と混ざったようなドス黒い色になっており、その姿は鬼のようであった。


「この野郎ぅぅぅぅ!!また!!何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も裏切りやがってぇぇぇぇぇ!!!」


錯乱状態の晴璃の様子を優奈と美桜はただ立ち尽くして見ることしか出来なかった。これが3年半前から3年前の紺青晴璃の本当の感情であり記憶。


「お前を今日こそ殺す!!」


波瑠斗は煙丸で晴璃を切りつける。しかし、晴璃は覚醒状態に以降し、素手で煙丸を受け止める。


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁぁぁぁぁ!!!」


晴璃の下段回し蹴りをモロに食らってしまい、波瑠斗は左脚を折られ、追撃の蹴りも食らい吹っ飛んでしまう。


「ぐっ……」


美桜が晴璃の前に立つ。


「た、隊長……どうしたんです……」


赤黒い左腕が美桜の腹部を貫く。晴璃はただ一言。


「誰だテメェ!!」


晴璃は美桜の腹部を貫いた後、地面に落ちていた鉄葉巻を拾い上げ、近くに居た優奈と果蓮の首を刎ねる。そして、吹っ飛ばした波瑠斗の方へ走っていく。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


晴璃はただそれだけを呟いていた。そして、倒れ込むでいる波瑠斗の喉仏に鉄葉巻を突き立てる。


「他の奴はどこだ!!言え!!俺を裏切ったテメェらも!!王国も!!ルミエール!!ブリュンヒルデ!!お前らもぶっ壊してやる!!ああああああああああああ!!!」


(コイツ、記憶が戻った途端に3年前の状態に戻りやがった……今よりもあの時のショックの方が大きすぎたのか……?それに、()()()使()()()()()()()()()()()……?)


波瑠斗は突き刺さった鉄葉巻を抜き取り、ただ発狂するだけの晴璃を見つめる。そして確信を得る。


「果蓮!!コイツ記憶が戻った事で、更に錯乱している!!今しか撤退できない!!みんなで桜島から脱出するぞ!!」


何とか首が再生した果蓮と優奈は波瑠斗の言う事を聞き、撤退の準備を始める。優奈は腹部を貫かれた美桜を担ぎ、走り出す。しかし、元々桜島にいた人獣達に囲まれてしまう。


「……しまった。忘れてた。」


「副隊長!!隊長どこ行ったんすか!?って俺と別れたんだった!!」


その時、墨を抱えた太郎達が奥からやってくる。


「波瑠斗!!隊長が何者かに刺された!!あ、紺青隊長……」


奥からやってきた太郎と大輝と愛だったが、晴璃を挟む形で波瑠斗達とエンカウントしてしまった。この時、起こる事はただ一つ。どちらかが標的になるということだった。だが、それは確定していた。


「やっぱ俺や果蓮を狙ってくるよな!!」


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺してやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」


鉄葉巻を振り回しながら突撃してくる。一見コレはただ錯乱しているだけのように見える。しかし、ここには既に自分の素振りの風圧を斬撃として飛ばすという業をやってのける人間が居る。そんな業普通の人間には不可能だ。しかし、強化人間の激怒暴走状態はそれを可能にしてしまう筋力を晴璃に与えてしまっていた。


「みんな伏せろ!!」


波瑠斗の一言で全員体が切断されずに済んだ。という事も束の間。逃げようとせずしゃがんで避けてしまったために波瑠斗は晴璃の距離に入ってしまう。


「やべっ!!」


「まだ笑うのかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


晴璃はしゃがんでいた波瑠斗の頭目掛けて踏みつける。

波瑠斗は何とかバックステップで回避し、立ち上がる。そして、レールガンで晴璃の頭を吹っ飛ばす。3年前は、魔法で肉体が強化され、頭を吹き飛ばせなかったが、今回は成功する。


「なんか知らんが今のうちに本土へ逃げるぞ!!太郎さん!!説明は後でするんで早く桜島出ましょう!!」


「何が起こってるのか理解できねぇ!!」


波瑠斗達は一瞬の隙に逃げ出し、波止場にあった船を強奪し、午後4時15分頃、本土への逃走に成功する。そして、自分たちの本当の記憶、果蓮との和解についてを話す。また、美桜と墨は体が再生し、意識を取り戻す。そこで波瑠斗は過去のことを話し始める。


「俺達5人は3年半くらい前まではみんなで異世界を満喫……していたんです。まぁ色々ありましたが。しかし、ある日兄貴以外の4人で依頼を完遂しなきゃいけないという日があったんです。その日に何があったかは知らないです。ですが、兄貴は錯乱状態に入ったんです。原因が掴めたら良かったんですけどね……。まぁ結局依頼は1日で完遂したんですが、その日のうちに拠点としていた王国に帰れなく次の日に帰ったんです。そしたら、兄貴が告発されて裁判されている状況に合いましてね。そこで俺達は兄貴の擁護をしたんです。が、まぁ兄貴がやらかしたのが俺達のいない昨日だと言うんですね。だから、俺達4人の発言何て聞き入れて貰えない訳なんですよ。だって兄貴の潔白を証明できなかったので。そこまでなら多分兄貴は錯乱する事は無かったんです。良くなかったのはその後に起こった出来事とコンボだったということなんです。」


「波瑠斗、後は私が話すよ。まぁ、今で言うところのNTRやBSSにも満たないのですが、端的に言うと嫉妬され冤罪をかけられ、ハメられるって感じですり。」


その時、太郎が手を挙げる。


「すみません。そのNTRとBSSの部分を詳しく教えて貰っても良いですか!?凄く凄く気になります!!」


果蓮がため息をつきながら話す。


「私達が拠点としていた王国と隣国は争っていたんですね。で、私達の国のお姫様と隣国の王子が結婚するみたいな話があったらしいんですが、お姫様が隣国の王子と会う前に晴璃さんと両思いになったというのが事件の発端ですね。」


「何……だと……」


「そして、あの世界天使が居てですね。王国に1人居るみたいな。隣国の天使に好かれちゃったんですね。晴璃さん。ま、その天使、王子と会う前に晴璃さんのこと好きになったらしいですが。」


「何……だと……」


7人は全員口を揃えて呟く。


「まぁそれが隣国の王子の逆鱗というか嫉妬心に火をつけたらしく……。結局、晴璃さんはまず姫を強姦したという冤罪をかけられ、隣国の天使を洗脳したというデマを世界各地に流され、王子暗殺計画を立てていたたいう噂を流されたんですね。そこにいらん事をしたのが私のパパでした。アイツが裁判中の晴璃さんに幻覚魔法をかけ、幻覚を見せたんです。そこに私達4人が裁判に突撃するという流れになりました。幻覚を見てる晴璃さんにはおそらく私達が告発しに来たように見えたんでしょう。そして私達の後ろからルミエール姫と天使ブリュンヒルデがやって来ました。まぁ冤罪と社会的な死に仲間の裏切りというコンボで彼の心は破壊された訳なんですが、そこで問題が起こります。彼は自信を守るために激怒し、錯乱しました。裁判の途中で発狂した彼はまず、目の前の裁判官を殴り殺しました。そして彼を罪を告発した王子を目の前で食い殺しました。お腹が空いてたんでしょうね。そして、周りの人間を殴り、蹴り殺し、その牙は()()()()の私達に向く事になりました。まぁ、幻覚魔法をかけられたので仕方ないといえば仕方ないのですが。ちなみにパパはあの世界では賢者と畏れられるほど魔法を使いこなしていました。そんな奴の幻覚魔法、半年経っても解除できませんでした。自然に解除されることも第三者が解くこともできませんでした。そこで私達はコッチの世界に帰る事にしました。元々やってきたゲートがあったので、最後は4人で晴璃さんをホールドしていました。首を後ろから締められてるのに発狂しながら頭突きしていました。抑えてた波瑠斗は顔面血まみれでしたよ。また、腕を1人一本押さえ、ふくらはぎに妖刀を突き刺しアキレス腱を断裂させてようやく動かなくなるような状況でした。天使ブリュンヒルデの忘却魔法でこの3年間の記憶を抹消するという手段でコッチに戻ることにしました。まぁ結果として私はフラれた時の気分を2年間感じ続け、それ以外はのほほんと暮らしていたようですけどね。これが私達5人の異世界での出来事です。」


美桜がすかさず聞く。


「つまり、今の隊長は幻覚魔法にかかってる状況という事ですか。」


「それは……五分五分といった感じかもです。そもそも私や波瑠斗もついさっきまで忘却魔法にかかっていたんです。なので、彼も同じだと言えなくは無いですが、今までの生活で支障が無ければ、解除されてると言えなくも無いような状況なので……」


「なるほど……隊長が私達といる時は全くおかしな様子を見せることは……いや、部下のお見合いに突撃したり、部下の学校の教師になり始めたりは有りましたが……私も一部加担していたのでこれは……」


「兄貴……マジでヤバい奴何じゃ……」


波瑠斗は頭を抱えながら呟く。


「あー俺からも良いっすか旭さん。」


車を調達してきた龍護が聞く。


「正直、俺も紺青晴璃と戦った事あるんですけど、戦闘慣れしてる強い男という印象が強かったんです。だから、幻覚が見えていたのも忘れていたのでは?」


「……忘却魔法で上書きされていた……という事かな。その線はあるかもしれない。実際私達が忘却魔法をかけられ、コッチに戻ってきた時は、5年前異世界に行く直前の記憶と感情だから……。」


「兄貴は多分魔法にかかってる。けど、矛盾点があるぞ。果蓮、お前の親父を兄貴が殺した時、兄貴は既に錯乱していた時だったろ?だがアイツは電話した時に俺に言った。旭慎司は俺が蹴り殺したって。それに旭慎司が用意していたドラゴンの卵も破壊したって喋っていたぞ。だからアイツ、錯乱状態の事も覚えてるんじゃないか?」


墨が話に割って入る。


「あーちょっといいか。お前達は2人で考えているが、まだもう2人一緒に異世界に行った仲間が居るんだろ?だからそいつらにも聞けばいいんじゃないか?」


2人は顔を見合わせそうだったと頷く。8月4日、波瑠斗は今でも仲の良い親友2人と再開する。もちろん、2人は異世界の記憶が戻っていた。波瑠斗は現状を話し、2人を人獣対策機関の戦闘部隊に入隊させる。もちろん2人は即承諾し、部隊は第六部隊。中野湊と青木翔也は、第六部隊のメンバーと交流を深めた後、会議室で紺青晴璃捕縛作戦についての会議に参加した。メンバーは第六部隊と第七部隊の全員と旭果蓮と覇宮龍護が参加した。また、この事は上層部に報告をしておらず、紺青晴璃失踪についてもみんな黙っていた。理由は色々あるが、本気になった鬼灯明が出張ったら恐らく紺青晴璃は殺されるという事だった。


「よし、会議を始めるぞー。司会は第六部隊隊長、張間墨が進めていくからなー。そして、今回やる紺青晴璃捕縛作戦だが、かなりの死闘になるだろう。しかし、俺達はこの事実を知るこのメンバーだけであの暴れる暴走兵器を止めなきゃならん。それに組織がやつを衛星で見つけ、鬼灯第二部隊隊長が出張ると恐らく、ゲームオーバーだ。あのむっつりスケベ錯乱隊長は殺されちまう。」


第六部隊隊員山田太郎が手を挙げる。


「隊長、何故紺青隊長はむっつりスケベなのでありましょうか?」


「それは、桜島でそこにいる旭果蓮さんとうちの生物破壊兵器が戦ってる時に揺れてる胸を双眼鏡で眺めてニヤニヤしていたからだ。」


「隊長も一緒に見ていたという事でありますか?」


「……なんでバレてるの……」


墨は女性陣からゴミを投げつけられ会議室を追い出された。


「えー第七部隊副隊長藤野美桜が変態の代わりに進行致します。この紺青晴璃捕縛作戦でまずどうすれば彼と接敵できるか考えていきます。案がある人は挙手を。」


奥で手が上がる。そこに居たのはゲームオーバーの人間だった。


「あーテステス。第二部隊隊長の鬼灯明オジサンだよ。君たちはどうして僕に相談してくれなかったのかな……オジサンショックだよ……それに僕が弟子を殺すわけ無いだろう!?心外だよ……以上……オジサンの手伝いが必要なら教えてね……僕は書類仕事残ってるからここで失礼するよ……」


頼られない事が相当ショックな様子で部屋を後にする明。みんなは内心ヒヤヒヤしていたが、これで紺青晴璃が殺される心配は無くなった。しかし、訓練時代にボコボコにされていたため、頼りにはしないと心に誓っていた。


「えーゲームオーバーオジサンが消えた事で捜索は多少時間かかってもいいでしょう。では、改めて、紺青晴璃を探す案があれば挙手をお願いします。」


湊が手を挙げる。


「皆さん初めまして。俺は中野湊。ここにいる紺青波瑠斗の親友です。ここで提案が1つあります。それは妖刀を使うという事です。波瑠斗の持ってる妖刀と兄、晴璃が所持している妖刀は元々1つの魔鉄鋼から作成されたものになります。なので、昔は共鳴反応で互いの位置を知るというような作戦も使っていたので、これが使えるのではと愚考します。」


波瑠斗と翔也と果蓮はそういえばそんな能力あったなと言うような顔をする。


「……そこ3人は後で私と記憶力改善トレーニングをします。中野隊員貴重な意見ありがとうございます。他に意見がある人はいますか?」


龍護が手を挙げる。


「あー管理者の覇宮龍護だ。俺が提案するのは、奴をおびき寄せるものを用意するという手段だ。例えば、異世界への転送ゲート。あればの話だがそれで釣るというのはどうだろうか。」


しかし、果蓮がすぐに割って入る。


「ごめん覇宮君。それは多分無理。パパの転送ゲートはもう今は無いと思う。当時、あの人は実験と称して中学校の体育館に設置していたけど、実際立ち寄った人間全員を転送ゲートに送り込んで隠蔽してて、しかもあのゲートパパが認証して10分間使用可能というものだったから、私達からは用意できないわ。それに私達がコッチに帰ってきたのは魔法なの。ゲートじゃないわ。」


「そっすか。じゃあ奴の一番の思い出とかは?例えば祭りとか……」


全員が黙り込む。そもそもを思い出すが紺青晴璃がそういったイベントが好きだと話した事が無かった。それにここにいるみんな本当に紺青晴璃が好きだと、本当に大切だと思っている事が何なのか弟の波瑠斗でさえ理解していなかった。しかし、波瑠斗はある一言を思い出す。


「3人で見た花火。アレだけは忘れられない……そうだ!兄貴は錯乱する前に、花火を見に行ってたんすよ!!」


「花火……その件の女の子と天使……天使って女の子なの?私も一緒に……じゃなくて!!それなら今の時期ならおびき出せるかも知れないわね。」


(あ、この人もあの男が好きなんだ……)


「ちょっと副隊長!!隊長は私のことを強姦したんですよ!!私の両親の前で娘さんの鳴き声良かったぜなんて言う人ですよ!!私の事が好きに決まってるじゃないですか!!」


「蛍、ちょっと黙ってなさい。というかそれ隊長が貴方の両親についた嘘でしょ。てかその話はややこしくなるから止めて。」


「え?彼は私のものよ。広島で殺し合った時に運命感じたの……」


(あ、紺青晴璃という男は面倒くさい女に好かれるんだ……)


美桜、蛍、最上咲奈以外の人間は思った。そして、異世界組4人も思い出す。晴璃が姫に監禁されかけ、天使の女に誘拐されロボトミー手術で人格を奪われかけていたあの頃の記憶を。


「はは。兄貴アイツ厄介な女ばかりに目付けられて大変だな〜」


「ロボトミー手術されかけていたな〜」


「俺なんか、翔也、身代わりになってくれ〜って泣きつかれた事もあるぜ〜」


「私はどうやったら心を支配できるかあの二人に延々と相談されていたっけ〜」


(錯乱したのはその女達が原因なのでは?)


この世組のみんなはそう思った。しかし、ここで翔也から衝撃の発言が飛び出る。


「てか波瑠斗ってだいぶ大人しくなったよな。向こうに居た時はお前、兄さん殺す事しか考えて無かったのにな。」


「え?」


波瑠斗は自分の当時を振り返る。確かに兄貴と敵対する羽目になったがそれは裁判のせいで……そう思っていた。しかし、錯乱状態の晴璃との会話を思い出す。


「俺……だれに……すか……ない」


「違う!お前が心を開けば……」


「で?それで何になる?()()()()()()()()()()()()()()()()()()。てかそんな奴らもう忘れた。」


波瑠斗は思い出す。錯乱状態の晴璃とタイマンした時に話した内容。錯乱状態とは思えない程、冷静で淡々と喋る紺青晴璃の姿が。それは普段の様子で、少し笑いながら話していた。だからあの時に感じたのは、人の心をワザと傷付ける悪人だと。全てを思い出す。晴璃とタイマンする前に、彼を連れ戻して欲しいと本気で涙を流す2人の女性の姿。そんな女性達の事を居なかったかのように話し、忘れたと適当な事をしゃべり、裏切ってはいけない人達を平気で裏切った奴の姿を。幻覚は1時間程度で治ったと話した奴の姿。発狂して暴れるのも面白いと話す奴の姿。


「ごめんみんな。俺、アイツは殺すべきだと思う。だからアイツは俺が1人でぶっ殺す。」


何故忘れていたのだろう。これ程人を憎んだことは無かった。どうして忘れていたのだろう。奴の言葉と奴を思って涙を流す彼女達の姿が反芻する。1人の人間に対し、絶対に殺してやると、そんな怨嗟を抱いた気持ちを何故忘れていたのだろう。奴が人の事を考えられない虚無だと言うことを何故忘れていたのだろう。奴は本気でずっと1人だと思い込むような奴だと何故忘れていたのだろう。波瑠斗は会議室を出る。


魔王(兄貴)、テメェは殺す。」

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