四章 6話 異世界生物と人獣
「おーい副隊長〜頑張れ〜」
晴璃はその場で座り込み、適当な声援を送っていた。
「隊長!上空から火球を吐いてくるの何とかなりませんかー!?」
晴璃は適当に手を振りながら思考を巡らせる。
(……確かにこっちの世界じゃあアレを防ぐ手立てが無いのか……魔法を使えたら問題無いが……ん?待てよ。あのバカ女の指輪ってまだ魔素あるよな……という事は……)
「おーい、第六部隊の副隊長さーん!そのバカ女の右手切り落としてコッチに投げてくれー!!」
晴璃は笑顔で優奈に話しかける。もちろん、優奈は即座に距離を詰め、果蓮の右手を落としにかかる。もちろん、その声は果蓮にも筒抜けだっため、果蓮は優奈から距離を取りつつ、大魔法を発動する。
「あの男やっぱり馬鹿でしょ。ま、これでアンタ達は吹っ飛んで、指輪の魔素も使い果たすわ。死ね!!広範囲殲滅魔法、スーパーノヴァ!!」
晴璃はタバコを吸いながら空を見上げ、何度も何度も心に思って何回も何回も愚痴った事を思い出す。
(厨二病過ぎるだろ……魔法って……無言で使えや……)
刹那、果蓮を中心に爆発が起こる。その名に恥じぬ威力で桜島の頂上の形が変わる威力の爆発が発生した。ドラゴンを追うため、少し離れた地点にいた、波瑠斗と美桜は爆風で吹っ飛ばされるくらいで済んだが、他の人間の姿は消えていた。
「やべぇ!!藤野副隊長!!みんなが!!」
波瑠斗も約3年ぶりに見た大魔法に驚きを隠せなかった。
「波瑠斗君!!今はこっちの生き物に集中して!!」
と言いつつ、美桜も内心焦っていた。戦闘が元々得意では無かった上で今まで頼りにしていた晴璃の姿が消え、若干パニックに陥っていた。その時、波瑠斗の携帯が鳴る。
「なんだこんな時に!!もしもし!!ってえ?兄貴?お前……何!?転移魔法使った!?え?ここにはもう俺と藤野副隊長しか居ない!?あーバカ女は居るのか……分かった。…………てめぇそれ早く言えよ。じゃあ、その作戦で……」
通話を切る。そして、波瑠斗はバズーカの砲身に手を入れ、あるものを取り出す。1つの指輪。それは果蓮が装備していたものと同じもの。
「藤野副隊長!!あのクソ兄貴、指輪がある事隠してやがった!!しかも2個!!」
「隊長は!?みんなは!?」
「どうやら無事みたいです。と言っても、転移したのは麓の方までらしくて、本土の方までは流石に魔素が足らなかったらしく……」
他の隊員達が無事な事を聞いた途端、美桜はその場で崩れ落ちる。
「隊長……もう私……」
「すんません。俺達早くあのトカゲ達をどうにかしないと……」
「ええ。ごめんなさい。」
美桜はすぐに立ち上がり、ドラゴンをどうするか相談する。大きさは全長10m程だろうか。しかし、波瑠斗達の位置から50m程の高さを飛行しつつ、桜島の頂上を焼き始めている。
「アイツら、なんか変じゃないですか?」
「変?」
「なーんか産まれたばかりなのに知能が高すぎません?それに明確に俺達が攻撃できず、しかし自分達は攻撃できる最大のレンジから火球を飛ばす。まるで炎のレールガンっすよ。しかも、アイツら会話してません?」
2人が耳を澄ますとこの世のものとは思えない何かが混ざりあっている声がうっすらと聞こえた。断末魔のようなそんな声。美桜はすぐに悟った。思考した内容はとても現在の科学で証明出来るものなのか、それは本当に生き物なのかと思いつつ、波瑠斗に話し始める。
「アレは多分人の声……じゃないかな……だって出会った時に血塗れだったんでしょ?恐らく、ドラゴン達に食べさせるために全て半殺しにしてきた……のかも……」
(明らかにあの大きさ産まれたてじゃない。それに……って待て待て、俺達が来た時、麓には人獣が居たはず……どういう事だ……そんなに人獣を用意できたのか……?それに噴火から溢れてきた溶岩やドラゴンの炎でだいぶ熱と足場が……まずい!!ドラゴンに気を取られ過ぎた!!ここが火山な事すっかり抜けていた!!)
「波瑠斗君?どうしたの?」
「藤野副隊長!今すぐ俺達も下山しましょう!!このままだと俺達焼け死んで……」
「分かったわ。でもどうやって?正直、さっきの爆発で地形が変わり過ぎててもう下山すら厳しいかも……そこら辺に溶岩湖が出来始めてるし……」
「あ、そういえば指輪。3年ぶりだけど魔法使ってみるか……」
波瑠斗は指輪を付け、自分と美桜に魔法を使う。
(思い出せ、イメージしろ……魔法はイメージの具現化……魔素は俺達の思考や意思を反映するための媒体であり特殊な元素……思い出せ……今の俺達に必要かつ、ドラゴンを倒せる魔法……アレだ……思い出せ……昔の俺は詠唱無しでもアレを使えた……キタ!!)
「波瑠斗君!!もうそこまで溶岩が!!」
「藤野副隊長!!魔法かけました!!ジャンプしてください!!」
2人は一斉に思いっきりジャンプする。すると5mくらい高く飛び上がった。波瑠斗は美桜を抱え、空を飛ぶ。
「波瑠斗君!!飛んでるよ!?」
「えぇ。これが魔素があればできる魔法ってやつです。藤野副隊長!!今から一気に距離詰めるんでこのバズーカでドラゴンの頭狙って撃ってください!!5発位は撃てるそうです!!」
「これって私指輪無いけど使えるの?」
美桜は不思議そうに聞く。
「ええ。これ内部に魔素が溜まってるので、弾があれば使えます!!ほら、この通り弾があるでしょう?これをドラゴンの頭部にぶち当てたら討伐できます!!」
「分かったわ。頭部ね。」
波瑠斗は美桜を抱えたまま、ドラゴンに突っ込む。反応の遅れた一体の頭部に近づき、一撃。轟音と共にドラゴンの側頭部に綺麗で大きな穴が空く。しかし、飛んでくる2人に気づいたもう1体はさらに上空へ飛んで行ってしまった。
「クソッ!!」
波瑠斗も更に上昇するものの、レールガンの射程距離には届かない。
「レールガンの射程距離さえ伸ばせたら……」
「ねぇ……その魔素って言うのでこれ打ち出してるんでしょ?だったら君の指輪の魔素も送り込んだら射程距離伸びるんじゃないの?」
美桜の一言で波瑠斗は指輪の魔素をレールガンに送り始める。しかし、飛行魔法を使いつつ、レールガンにも魔素を込め始めたために、徐々に高度が下がりつつあった。
「大丈夫。私はいつでも頭打ち抜けるわ。」
「了解です。溜まりきったら伝えます。」
その時、ドラゴンは降下を始めた。波瑠斗と美桜をここで殺すために。自分の攻撃可能範囲の限界を理解しているドラゴン。しかし、計算していなかったのは、レールガンの飛距離。自分の頭を余裕で打ち抜け殺す距離。その計算ができていなかった。
「溜まりました!!」
その一言に合わせ、美桜はレールガンを発射する。その速度は凄まじく、マッハ30は到達していた。1匹目に撃った時の衝撃は耐えられたものの、今回は約5倍の速度で打ち出した。砲身は溶け、打ち出した衝撃で地上までものすごい勢いで落下し始める。
「や、やべぇっすよ藤野副隊長!!これ夫婦で……もう動けない……」
(いくら私達が強化人間とは言えこの速度で地上、もしくは海上に叩きつけられたら木っ端微塵ね……再生も不可能な程……)
2人は思考している間に光に包まれる。目を閉じていたが違和感を感じた。消えた風圧、落下する感覚が消え、目を覚ますと桜島の麓にいた。周りには人獣に囲まれた仲間達が居た。
「2人共大丈夫か?」
墨が駆け寄る。
「隊長、俺は全然平気っす。」
「張間隊長、私も平気です。それより今は……」
墨は現在の状況を話し始める。
「今の状況は……正直酷いものだ。まず、俺達は紺青隊長の転移魔法?とやらでここまで転移してきたんだが、人獣の数が多すぎる。恐らく、俺達第七部隊が来た時より島の人獣が増えている。次に、あの女の子も転移してきてそこからがまぁしっちゃかめっちゃかというかもう混沌としていてな。まず、紺青隊長とうちの副隊長が戦いに行ったんだがまぁボコボコにしていたな。そして、脳と心臓の同時破壊をしたんだが、奴は生きていた。そして最後にこの人獣達。どうやら異世界の人間らしい。」
「は?隊長、もうこれ俺達だけじゃ対処不可能っすよ。」
「そうなんだよなぁ。それにあの女の子も覚醒しているから余計タチが悪いというかなんというかなぁ……」
墨は周りの景色を見ながらつぶやく。
─少し離れた場所にて─
「何でこの女死なないんだ!!」
晴璃は覚醒した筋力で長巻で容赦無く切りつける。また、晴璃が距離を取ったタイミングで、優奈は距離を詰め突きの連打を決めるものの、致命的なダメージにはなっていなかった。
「ねぇ、ここの人獣って何かおかしいと思わない?」
果蓮はニヤケながら話し始める。
「実はあっちの世界の人間なんだよねぇ。」
「だからどうしたってんだ。」
「だからさ、魔素の補給何て簡単に出来るわけ。それに私の脳と心臓魔法で他の人獣に入れ替えてるし。」
(何!?そんな事が可能なのか……というかそれをイメージでき続ける思考能力と俺達の攻撃を捌ける脳ってどうなってんだ?流石に脳に負担がかかりすぎるだろ……)
「お兄さん!!周り!!」
2人が気づくと人獣数百体に囲まれていた。360°みっちりと人獣が居た。逃げ場は無く、そしてその中に溶け込んだ果蓮。状況は徐々にに不利となっていた。
「まずいな……正直やつが何するか分かったものじゃ……!!」
晴璃は何かを察知したのか、優奈を抱え上空にジャンプする。すると、自分達に1番近い距離にいた人獣達が爆発する。それはまさに人間爆弾であった。
「やりやがったあの女……」
その時、轟音が響く。先程も1度だけあったが今回は凄まじく衝撃が地上にまで届く程だった。そして、上空からドラゴンの死骸が落ちてくる。そして、波瑠斗と美桜も落下してきた。
(転移魔法を使うには……魔素が!!)
「副隊長さん、あのバカ女探してくれないか。俺は人獣の魔素を奪ってくる。」
地上に降りた2人は別れ、晴璃は指輪を付けている右手で1番近くに居た人獣の首を掴み、魔素を吸収する。そして、すぐに転移魔法を発動し、戦闘に復帰する。が、前京都でやられた傷が悪化し思わずその場に倒れ込んでしまう。
(やべぇ心臓が……ん?これ心臓が傷付いたままなんだよな……腹をくくれ!!)
─波瑠斗達の様子─
「そんな事が……で隊長、今からどうします?」
「うーんそうだなぁ。正直、俺も他の隊員も疲弊しきってる。あの龍護とかいう管理者も戦ってくれてるが、人獣が多すぎてなぁ。しかもアイツら魔法?とやらを使ってくるからかなり面倒くさくてな……」
「魔法ですか?だったら妖刀を使えば……あ、今はあの二人が持ってるんでしたっけ。」
「ああそうだが。そういえば、何で妖刀なんだ?」
「実は俺と兄貴の妖刀はタバコや葉巻の煙を吸収するとですね。10分間くらい自分に飛んできた全ての魔法を制限無く吸収し、刀を振ったタイミングでその魔法を打ち返す事が出来ます。」
「ほう……ん?なんだそれチートってやつか?」
「まぁ当時でも無法みたいな武器だったのは認めますよ。だからタバコが必要なんです。」
「タバコと妖刀があればあの人獣達の魔法攻撃を防ぐ事ができるんだな!?」
墨はタバコを取り出す。それは日本で昔からある有名な銘柄のハイライト。比較的タール値がキツイものの、以外と吸いやすいという人気のタバコだった。
「まぁ……兄貴のに比べたら軽いですけどまぁ……大丈夫かな……」
「え?何?妖刀はニコチンとかタールとか重くないとダメなのか?」
「えぇ。効果時間10分はだいたいタール値10~14ミリくらいの時間何で……ハイライトでも大差ないっすね……」
「他には無いぞ。それこそ葉巻とか……」
「あのー良かったらこれどうぞ。」
美桜は懐から赤いタバコ缶を取り出す。それはインドネシアのタバコだった。
「これ隊長がたまに吸ってるやつなんですけど、これじゃダメ……ですか?」
「ほうスーリヤか。は?ガラム?これニコチン1.9mgでタールが42mgだぞ。ふざけんな誰がこんなもの笑顔で吸えるんだよ……ってまさか……」
「あ、私と隊長です……」
「アンタもかよ!!まぁ、波瑠斗、とりあえず副隊長と紺青隊長のどちらかを探さないとだな……」
「そうですね。じゃあ俺桜島ホテルの方角行ってきます!!」
「おう見つけたら連絡してくれー」
「じゃあ私は近辺の人獣と交戦しつつ、飛行機の操縦手の保護に向かいます。」
「了解。俺はあの人体破壊兵器である副隊長を探しに行くんで後で合流しましょう!!」
─優奈と果蓮視点─
「ハァ……ハァ……その妖刀の特殊効果使わず私をここまでボコる何て……ハァ……サイテー……」
「特殊効果何て知らないわよ。それに私まだ波瑠斗君の事真っ二つにした事怒ってるんだけど。」
「何?アンタも波瑠斗の事好きなんだ……絶対に引かないわ。」
「殺すわ。」
2人はまだ戦闘を続けていた。優奈は人獣達から魔素を奪いつつ、魔法攻撃で戦う。一方優奈は飛んでくる魔法を全て捌き切り、強化人間としての肉体と妖刀の斬れ味でゴリ押していた。
「何で火炎弾や落雷も効かないわけ!?」
「切れる魔法を使うな!!」
「魔法攻撃が切られてたまるか!!」
果蓮は趣向を変え、手のひらから水流を発射する。しかし、優奈はすぐに躱し斬撃を飛ばす。
「ちっ!!何であの速度の水流も躱せるのよ。おかしいでしょアンタ。」
「強化人間になってからも鍛練を続けたからよ!!」
優奈は距離を詰め、左手を切り落とす。今度はすかさず、切り上げて肋骨も切り付けるが果蓮の体勢が後ろに傾いていた事もあり、切りつけは浅かった。
「仕留め損なった……」
「アンタ30回は仕留め損なってるわよ。」
「違うでしょ。アンタを30回も見逃してあげてるのよ。バカじゃないの?」
─晴璃視点─
「やはり我ながら傷付いた心臓取り出し、新しく再生するのを耐える作戦は成功だ!!ついでに目の位置から上を切り落とし再生させる事で新品ホヤホヤの脳みそもゲットだぜ!!クソ痛かったが何とか成功だ!!ん?」
晴璃は双眼鏡を取り出して、女性陣の戦いを観察する。
するとそこに墨も合流する。
「紺青隊長!!無事でしたか!!ん?何見てるんです?」
「あぁ張間隊長。実は今女性陣の戦いを見ていたんですけど、やっぱ胸の揺れ方がえっちぃなと思いつつ一服していて……」
「お、俺にも見せてくださいよ!!」
「はい。」
双眼鏡を墨に渡す。二人でしばらく揺れる胸を堪能し、雑談を始めていた。
「やっぱいつ見てもデカいブツを見るのは良いっすね〜」
「俺もそう思いますよ。ハァ……もう30手前ですよコッチは……なのにまだ相手が居なくて……」
「分かりますその気持ち。俺の周りの人間も付き合っただの別れただの、浮気されただの寝盗られただのばかりなのに俺にはそんな異性との関わり合いが無くてですね。正直もう諦めてますよ。はは一本どうぞ。」
「おっ、じゃあいただきます。コレ、フィルター甘いですね〜あ、クセは強いけど吸いやすいな。」
「はは。スーリヤなんでね。」
「ぶふぉっ!!」




