四章 5話 異世界の生き物
─人獣対策機関医療病棟にて─
「あぁ……ホントに死ぬかと思った……」
京都で致命傷を受けた晴璃が起き上がる。
「隊長!すみません!私を庇って……」
「いいよ。昔も似たような事あったし……」
「そうなんですか?」
「あぁ。てかこの話副隊長にはまだしていなかったな。実は俺異世界に行ったことがあるんだ。」
(隊長、やっぱり脳にダメージが……)
「私になぜ教えてくれなかったんです?」
「お前そういうの信じるタイプじゃないだろ。」
病室の扉が急に開く。そこには走ってきて息が上がってる天ノ川蛍の姿があった。
「隊長!起きてますか!!」
「ああ。どうした?」
「実は……第七部隊からすぐに桜島に来て欲しいとの連絡が……」
「俺じゃなくてもいいだろ……蛍、その携帯貸しなさい。」
晴璃は溜息をつきながら電話をかける。
「もしもし、ずっと寝込んでた隊長です。あー波瑠斗か?おん。何!?……いや、アイツはあの時俺が……え!?噴火した!?あーあれか?おん。おん。あるよ。俺の自室に置いとるが。俺は病み上がりで動けんから副隊長に持って行かせるわ。とりあえず、アレが産まれる事は無いと思うけど。何?後噴火1回で!?んー分かった。とりあえず、アレがあればダメージは与えられるはずだから。それじゃあ数時間耐えてくれ。じゃあねー。」
「隊長?話の内容が全く分からなかったんですが。」
「簡潔に話すと、ドラゴン産まれそうだから、俺の部屋にある長巻を桜島にいる第六部隊の副隊長まで届けてくれって話。」
「隊長の武器って私たちが持ってるものと何が違うんです?」
「俺の長巻は異世界で作ったものなんだ。」
─桜島にて─
「副隊長!!今から兄貴の刀が届きます!!それまで堪えてください!!」
「え?ええ分かったわ。」
優奈は刀を構える。何度も見えない攻撃を捌き、30分以上戦闘は続いていた。優奈の一振りも一撃必殺だったが、それでも脳と心臓の同時破壊はまだできていなかった。
「はぁ……はぁ……アンタこの攻撃見えてるの?これ見えないし、強いしで私の十八番だったんだけど。」
果蓮は息切れと溜息が止まらなかった。
「いや、空気の揺れ方で分かるって。」
優奈はまた斬撃を飛ばす。果蓮も魔法を発動するものの、優奈の一撃を防ぎきれず体が切り裂かれる。
「ここ!」
優奈はすかさず距離を詰める。が、すぐに体勢を整えられ、反撃の蹴りを食らう。
「アンタ私の事舐めすぎ。」
その時、大きな地震が起こる。背後でまた大きな噴火が発生した。
「まずい!!副隊長!!これ以上は危険っす!!」
「噴火か……これで3度目だな。」
「隊長!!奴が産まれる前に避難しましょう!!あれは異世界の業物が無いと太刀打ち出来ない!!」
「ねぇ波瑠斗。私さぁドラゴンの卵2つ置いてたんだよねぇ。しかも孵化したら目の前にはご飯がたっぷり。」
「まさか!人獣か!」
「隊長さんはすぐに分かったんだ。でももう遅いよ。」
島全体が大きく揺れる。そして噴火口から大きな影が現れる。それはかつてアニメや漫画で見たような生き物。トカゲの体に付いた大きな翼に黒く輝く鱗。そして全てを睨むような目。触れただけで切れそうな歯。
「や、ヤバいヤバいマジであのバカ女召喚しやがった!!それに兄貴のが届くまでまだ数時間はかかるぞ……」
「波瑠斗……お前こんな生き物が居る世界に行ったことがあったのか……そりゃ人の形をした敵なんて怖くないな……」
「産まれたばかりなのにこの大きさ……猫の何倍でしょうか。」
「大輝ちょっと黙れ。隊長!俺一旦本部と連絡取って……」
「太郎さん!連絡なら兄貴の方にして欲しいっす!おそらく兄貴ならまだ何か隠し持ってるはずです!俺はあのクソトカゲの相手してきます!」
そう言って波瑠斗は走り出す。一方、太郎は波瑠斗の携帯で晴璃に電話をかける。
「あ?もしもし?えと……第六部隊の山田太郎っす!弟さんに渡されて電話かけてます!まだ何か隠し持ってるって……え?代表のプライベートジェットで行かせたからもう着く?それに……あぁ分かりました。後30分くらいしたら副隊長が飛行機から飛び降りて持ってくる?了解です。そう伝えて起きます。」
「で?あの隊長さんはなんて言ってたんだ?」
「第七部隊の副隊長に刀二本持たせてて、もう少ししたら飛行機から飛び降りて持ってくるらしいっす。」
「俺でも自分の副隊長に飛行機から飛び降りろなんて命令しないぞ。」
「あぁそれと、副隊長には波瑠斗の愛刀渡せって命令も来てましたね。」
「ん?何でだ?」
「いやぁちょっと分からないです。なんか特殊なんですかね。おーい波瑠斗!!お兄さんがお前の愛刀は副隊長に渡せって言ってたけど何かギミックでもあるのか!?」
太郎はドラゴンにしがみついて抗っている波瑠斗に叫んで伝える。
「いや!!俺のは一般的な太刀何で慣れてる副隊長に渡すのが効率的だと思ったんでしょう!!」
「そうか!!じゃあお兄さんの刀は!?」
「兄貴の刀……まぁ俺の刀も何ですけど、妖刀何です!!しかもかなり特殊な!!なので、一旦タバコ買ってきて貰ってもいいですか!?」
「そうか妖刀……何でタバコ?」
「うおおおおおもうコイツに刀刺すのが限か……うわあああああ」
波瑠斗は空中に投げ出される。一方地上では優奈と果蓮の戦闘が続いていた。
「アンタの刀、頑丈だけど魔法に耐えられてないじゃない。そろそろ折れるわよ。そのなまくら。」
(確かに刀の刃こぼれが激しい!!それに集中力も体力も限界になってきた……ん?あの指輪……)
「波瑠斗君!!あの指輪って何!?」
優奈は落下してきた波瑠斗を受け止めて聞く。
「あぁ……確かあの指輪は……あれ?確か指輪に溜まってる魔素を人体に送り込む指輪っすね。何であの中の魔素が枯渇すればもう魔法は使えないはずです。」
「分かったわ。要は魔素?が枯渇するまであの女を切り伏せたら良いって事ね。」
優奈は波瑠斗を降ろし、刀を構える。そしてすぐに、距離を詰め喉目掛けて突きを放つ。しかし果蓮は身体を捻り躱す。そこから近くの砂を拾い優奈の顔目掛けて投げる。優奈は後ろに飛び、一閃。カウンターの斬撃を飛ばし、果蓮の胴を袈裟斬りにする。
「ちっ、アンタ強すぎでしょ。異世界にも数人しか居なかったわよ。武器の斬撃や衝撃波を一時間くらいぶっ通しで放てる奴。」
果蓮は溜息を付きながら愚痴る。その時、ドラゴンが雄叫びをあげる。上空には2匹のドラゴンと飛行機が一機。しかし、ドラゴンは飛行機目掛けて炎の息を吹きかける。
「マジか……」
誰もがそう思った時、上から人影が降ってくる。
「俺参上!!なんてな。」
そこには京都で蜂の巣になって意識不明だった兄の姿があった。腰には二本の刀。そして咥えたタバコ。後から飛行機の操縦手を抱えて降りてきた副隊長の藤野美桜の姿もあった。
「兄貴!?何でお前が……副隊長さんだけじゃ無かったのか!?」
「いやータバコ吸う人間が居なくてさ……ま、仕方無いよな。ほれ、副隊長さん。この妖刀を使ってくれや。」
晴璃は優奈に波瑠斗の愛刀を渡す。
「兄貴、それ俺の。」
「今はあの副隊長さんが使った方がいいだろ。それにお前にはこれだ。」
「これって……」
「あぁ。レールガンだ。まぁ5発くらい撃てる魔素量はあるからアレでトカゲちゃんの事撃ち抜いてやれや。」
晴璃が波瑠斗に渡したバズーカ。それは、異世界で作られた弾丸を魔素で覆い打ち出すものだった。弾丸は鉄だったが、既に魔素に覆われた鉄は異世界の生物を殺す事も可能だと晴璃が用意したものだった。
「てか準備いいな。お前この事予想してたのか?」
「いや、元々もう1回あっちに行く予定だったんだ。ま、今はあのドラゴン達を殺すぞ。」
晴璃は長巻を抜く。それは妖しい輝きを放っていた。
「懐かしいな。お前と戦うのは。また俺に力を貸してくれ。妖刀・鉄葉巻。」
「副隊長!俺の妖刀・煙丸ならそのバカ女の魔法攻撃簡単に弾けるんで頑張ってください!!」
波瑠斗と晴璃は上空のドラゴンを見つめる。
「え?隊長の刀が鉄葉巻で弟さんのが煙丸?ダサくない?何でそんなダサい名前になったんです!?ていうか私にその長巻で戦わせる予定だったんですか!?しかもタバコ吸えって……え?何とか言ってくださいよ隊長!!隊長〜!!」
美桜はその場に立ち尽くし、他のメンバーと合流する。
「あ、副隊長。やっぱ任せた!!ちょっと心臓がまだズキズキする……」
晴璃は胸を抑えながら美桜に鉄葉巻を渡す。
「これなんか柄の部分が長すぎません?」
「まぁ長巻だし。槍の様に使えば使いやすいよ。」
「まぁ、あんな見たことない生き物相手ですけど死ぬ気で頑張ります。」
「あ、紺青隊長。一応名前の由来聞いても?」
優奈は不思議そうに聞く。
「ん?この二本の刀を作成した夫婦がヤニカスだったから俺が適当に名付けた。名付けて、妖刀・鉄葉巻と妖刀・煙丸だ!!」
「へぇー。私が聞いたのが間違いでした。」
優奈は刀を抜く。しかし、重さ、刀身の輝き、手の馴染み加減、全てが理想的だった。
「すみませんこれは凄く素晴らしい名刀ですね!!私感激です!!」
「はよ戦えや。」
今までの様子をぼーっと眺めていた龍護が呟いた。




