序章 2話 邂逅・・・そして・・・
俺は大阪でバイトしてるだけの男だ。名前は紺青波瑠斗。
今日は兄の晴璃共に朝からパチンコを打ちに出掛けている。もちろん18歳で成人済みだ。
「なぁ兄貴、今日は大学いいのかよ?」
「フッ、俺は家族以外の他人と会話すると爆破して死んじまうビョーキなのさ」
という割にはお店の店員と話す時の声量ときたらまぁうるさいのだが。
「そういえばあの災害からもう3ヶ月か。あの頃は大学も休校になって楽だったのになぁ」
とかこのバカ兄貴は言ってるがそもそも1月1日に災害があったわけだから普通は休校の時期なのだ。と言っても明日から大学の講義が始まるらしいが。
「てか1月1日って正月だろ?普通は休みだろ・・・いや、お前今春休みの最中だろ!!」
こいつがおサボりマンだったことを思い出した。そして4月に入ったためやはり大学は休校の時期だ。
なんて他愛もない話をしてたらいつものパチンコ店に着いた。
「弟よ、まずは飯を食って行かんかね?」
そういえば朝は抜いてたな俺も兄貴も。
「それはいいけどどこで食うのさ」
「なら近くのバーガー店なんてどうだ?パンケーキあるぞ」
おいおいバーガー店行くのになぜパンケーキが目的なのだこの甘党は。毎度のことながら兄貴の甘党ぶりには驚かされる。なんて思ってたらいつの間にか店に入っていて、気づいたら大量のミニパンケーキが並んでいた。
このバーガー屋の2階のイートインスペースの奥の方は今はパンケーキの匂いで充満してる頃だろう。
「は?俺のバーガーは?」
「ん?ないよ?バーガーないよ!!パンケーキ食いな!!」
この兄貴はいつの間にかミニパンケーキを俺の分含め10個注文していた。辛いぞ?この量は。
なんて思っていたらおじさんが声をかけてきた。見た目は40代後半くらいの小太りのどこにでもいるようなおじさん。表情は少し笑みを浮かべていた。俺はそんな風に感じた。少なくとも悪人とは思えないような人だった。
だが、兄貴の表情が一気に険しくなった。
「いやー急にすまないねぇ君たち。ここの近所にある山内って名前の質屋さんって知らないかい?」
「知らない」
兄貴はただ一言だけ返す。それはこれ以上俺たちに関わるなと言いたげな感じだった。
俺たちは物心がついた時にはこの街に住んでいたが、そんな名前の質屋さんは知らなかった。
なんて感じてたら違和感に気づいてしまった。
俺たちは2階建ての店の奥に座っていた。と言ってもだ。朝9時と言ってもだ。
静かすぎる。下から従業員が働いてる音や他の客の声や音が止んでいた。
そしてなぜが一番奥の席に座っている俺たちにわざわざ話かけに来るおじさん。
あれ?不審者っぽいな?
「おや?僕が何か君にしたかな?ただ質問をしただけなのだけど」
「はっきり言わせてもらう。俺は今初めて会話した瞬間からお前に対し、ものすごく不快で気持ち悪い違和感を感じた。」
兄貴は昔の経験から、相手の本性や性格が分かるようになったと言っていた。
俺はそれを話半分に聞いていた。
だけど、今回は違った。いや、兄貴からすれば今回も的中したというところだろうか。
「アンタ、もしかして人獣ってやつか?」
兄貴の一言で相手の表情が一気に笑顔になる。
いや、実際は怒っているのだろうか。
「なぁぁぁぁぁぜぇぇ分かっっったのかなぁぁぁぁぁ坊やぁぁぁぁぁ」
「逃げるぞ波瑠斗!!」
刹那、兄貴は立ち上がり人獣に殴りかかった。人獣は反撃を食らうとは思っておらず、驚きで1歩下がった。兄貴が次に殴りかかった瞬間、人獣の平手打ちを食らい吹っ飛ばされた。店の奥にいた兄貴が、気づけば自分たちが登ってきた階段の方で気絶していた。
動かなきゃ。動かなきゃ殺される。人獣は人間を殺すことだけ考えているらしい。だからここでなんとしても逃げなくては。兄貴を担いでどこか開けた場所へ。人通りが多く、助けてくれそうな場所へ。
ここで音が止んだ理由が分かってしまった。窓から見えた景色には大量の死体が転がっていた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ヤケクソになり人獣に殴りかかる。ヒット。ただし、とても人間とは思えないほどの筋肉の密度と硬さをしていた。
鋼鉄のように硬いのか?答えは簡単。鋼鉄がマシに思えるくらいの硬さだった。
「君たちは初めて会った人間にそんな酷いことをするのかいぃぃぃ!!!」
体を人獣に捕まれ、窓の方に投げられた。最悪なことに後頭部から窓にぶち当たったため、脳震盪や、ガラスの破片が身体中に刺さった。もちろん人獣の筋力で投げられたため窓は割れ、体は店の外に放り出され、どんどん地面へと落下していく。
(やばい・・・意識が・・・もう・・・)
なんて感じた時に、誰かに受け止められた感触があった。少しいい香りもしたような・・・
「・・・う・・・ま・・・があり・・・す」
人の会話がうっすらと聞こえる。
「・・・のじ・・・が・・・こちらに・・・」
最後に見た景色は長い金髪の女性と複数の人間だった。
次に目が覚めた時は1ヶ月が経っていた。
結論として俺たち兄弟は仮死状態だったらしい。そこで治療が施され俺たちはなんとか一命を取り留めたらしい。
俺たちを救ったのは人獣対策機関(通称:Anti Beast human organization)縮めてABHOという組織が俺たちを救ってくれたらしい。そして、俺たちのこれからについて話があるそうだ。
「やぁ弟よ生きてたか!!」
病室の横で寝ていたのは兄貴だった。
「なんとかなぁ。兄貴も無事そうじゃないか」
「うーむそうなのだ。あの時確かに平手打ちで吹っ飛ばされ、首の骨と背骨が完全にへし折れたと感じたのだがなぁ。もう動けるのだ。それも激しい運動もできるくらい」
「いや、お前頑丈すぎだろ!!」
二人でこんな話で笑い合っているものの、確かにあの時俺は兄貴は死んだと思っていた。人間が平手打ちで数メートル先まで吹っ飛ばされる?しかも全身が宙に浮くほどの威力で。
「波瑠斗、お前もやっぱどこか怪我してるのか?」
「うーん俺は放り投げられてから、強い衝撃を感じてそこから意識が朦朧としてすぐに気絶したから、よく知らない。」
なんて話してたら病室のドアが開く。
「君たちはもうすっかり元気のようだね」
見たことがあるようなないようなそんなおじさんがやってきた。テレビで見たくらいのおじさん。
そしておじさんの後ろには2人いることが確認できた。
「あぁすまない。自己紹介が遅れたね。私は人獣対策機関の最高責任者として機関の運営や管理などを任されている、郷道和真という者だ。そして隣にいる二人が・・・」
「初めましてお二人さん。僕は鬼灯明。まぁこの郷道さんまでは行かないけどただのオジサンだよ。」
アロハシャツと短パンとサンダルという格好の変なオジサンだった。兄貴はジャージズボンにアロハシャツにサングラス、サンダルに結ばれた髪という格好がデフォルトのため少し被るところがあった。
結局、胡散臭いなという雰囲気が話を終えるまで拭えなかった。
「えー私が黒渕紗英。よろしくね」
こっちの女の人は兄貴と同じくらいの歳の人だった。笑顔で話しかけてくるものの、なんとなく苦手なタイプだった。
「じゃあまずは君たちの現状に関しておじさんから説明させてもらってもいいかな?」
「お願いします」
俺と兄貴は即答した。
「まず、君たちの現状としては・・・肉体的には人獣と同じ肉体になっている。」




