三章 5話 真っ赤な世界
俺はただそこにいただけなんだ。いつものように散歩して、ただ観光客が居なくなった河原町をいつものように歩いていたんだ。
凄い悲鳴が聞こえる。
気になったので向かってみる。
何があったのか、とんでもない事件なのか。事件どころでは無かった。
いつも見ていた世界が真っ赤に染まっていた。
真っ赤な鴨川、真っ赤な商店街。
声が出なかった。目の前に目が虚ろな人間が大量にいた。奥から大鎌を振り回す男とそれを追いかける低身長の男が走ってきた。
と思ったら世界が回った。
目の前には数十年苦楽を共にした体があった。
「あぁ……」
痛みは無かった。ただ、こう思った。
「なんでこんなことするの」
─12時15分─
「ということで俺達第六部隊はこの河原町の人獣を徹底的に討伐していくぞ。一般人がいたら保護が最優先だ!!」
「今回俺や愛、大輝は全く出番が無かったからなぁ。ここら辺で挽回させて貰うっすわ。」
「ええ。私達も頑張りましょ。」
「猫……最優先……」
一人だけ猫が最優先のバーサーカーがいた。
「お前はホントに俺が言った命令理解したか!?」
─第七部隊─
「ということで今回俺達は4人な訳だが頑張って人獣討伐に行くぞ。ちなみに俺達の担当は京都と大阪の県境を担当する。もし、突破されたら高槻や茨木の人間が人獣に食い殺されそのまま被害が広がる事になる。まじで、ここで食い止めるぞ!!ちなみに俺はフリーダムに京都拡張を走り回り人獣を討伐しろとの事だから3人で頼むな。」
「隊長!大阪の本部から連絡が!」
「どうした?」
「隊長と話したい人がいるそうで……」
「分かった。もしもし?俺だ。」
「こんにちは隊長さん。」
「うげっ、最上咲奈……」
「あら、うげっなんて反応酷いわ。ま、ひとつ提案があるのだけれど。」
「なんだよ。」
「私の見張りって建前で私の事第七部隊に入れてくれないかしら。」
「ダメだろ。裏切られたらどうするんだ。」
「夕闇君との会話聞いてたでしょ?もう別に管理者ってグループにいる気ないし、それに理想郷計画もどうでも良くなってきたから手を貸してあげる。」
「……切るぞ?」
「あらあらお願いだからもう少し通話させて。それに上層部はあなたの許可があれば第七部隊に編入することも許可するって……」
ピッ。晴璃は面倒くさそうな顔して電話を切る。
「た、隊長?」
「あの女面倒いから来て欲しくないんだよなぁ。なんか毎回ダル絡みされるし」
「またあの女ですか。」
「隊長さん。私達がいるので浮気しないでくださいね。」
(まさか女子高生にそんな事言われるなんてな……ちょっとビックリしたぞ……)
「た、隊長。僕たちはこれから移動開始します!!」
「ああ。俺は……」
「途中で電話切るなんて酷いわ。」
「うわぁぁぁぁぁ!!!メンヘラ来たぁぁぁぁぁ!!!」
─第五部隊─
「女神様のあの一振堪んないわ〜♡」
「隊長、俺達はこれからどうすれば……」
「あなた達は兵庫の県境を見張ってなさい。狙撃組は県境と県境から3キロ地点で人獣の様子を確認。できるなら狙撃。近接部隊でその間を叩きます。私は女神様の戦闘を眺めているのでその方向で。」
「了解しました!!」
こうして、京都人獣殲滅作戦が開始された。第四部隊は滋賀、第二部隊は奈良、第一部隊は福井の県境を警備、人獣を発見次第討伐となった。
また、第三部隊は京都の一般人の保護、第六部隊と紺青晴璃は京都中の人獣の各個撃破。
─第六部隊&紺青晴璃─
「紺青隊長!俺達はこれから河原町周辺から人獣の掃討を初めて行きます!!出来れば遠くの方をお願いします!!」
「了解しました!!俺は嵐山方面へ向かいます!!張間隊長!ここら辺お願いします!!」
「兄貴マジで走り回るんだな……背中に怨霊みたいなの張り付いてたけど。」
「あれが宮島で確保した女じゃないのか?綺麗なお姉さんって感じなのになんか悪霊みたいに張り付いてたな。」
「あれ私より面倒い女でしょ」
「愛ちゃんは面倒くさくないよー!」
「猫……保護……」
「隊長、俺と大輝はここら辺で別れます!!大輝、向こうに猫カフェあるからそこの様子見てきてくれ!!」
「分かった。太郎も気をつけるんだ。では隊長、行ってまいります。」
俺達は猫カフェバーサーカーが流暢に人の言葉を喋ってるところを初めて見た。あの人猫カフェしか興味無いのガチだったのか……
「マジでアイツ何なの」
「愛、多分あれはもう俺達の事人として見てないぞ。」
「太郎君が制御してるの見る度に思うけど凄いねぇ」
「副隊長の剣さばきの方が凄いっすよ。隊長!俺も兄貴と同じように走り回ってきます!!」
「いや、お前は第七部隊周辺を頼む!!どうやら彼ら人数が少ないから、どうしても人手が欲しいらしい!!」
「分かりました!!」
─紺青晴璃視点─
「いつまでくっ付いてるんだ!!」
「あら?電話を途中で切るほうが悪いんじゃない。私もう離れないわよ。」
「分かった分かった!第七部隊の入隊認めるから、一旦降りろ!!てか降りてください!!デカイブツが当たってるんだわ。」
「あら、当ててるんだけど。もしかして彼女とかできたこと無いの?」
「無いし作らない!!」
「あら、悲しいこと言うのね。」
「待て、お前は先に嵐山行ってろ。あの男……」
「あら、あれ五本指の人間よ。あれは……誰だっけ?私管理者にいた時他の五本指の人間の事興味無くて、写真でしか見た事ないから誰だか分からないわ。」
「やっぱりこうゆうボス的なのいるよなぁ。しかも全戦力が京都周辺に集まってるから応援呼べないぞ。」
「あら、私とあなたの2人で充分よ♡」
「ハートはいらん。接敵するぞ!」
─紺青波瑠斗と第七部隊─
「すみません!第七部隊の副隊長さんですか!?応援に来ました!!」
「ありがとうございます!!実は管理者の一人が来てて……天ノ川隊員だけでは対処できないので加勢に行ってあげてください!!私と夕闇君で人獣達の討伐しておきます!!」
「了解です!!」
そこに居たのはやっぱり奴だった。
「来たな波瑠斗!」
「またお前か覇宮龍護!!」
「弟さん!!すみません加勢お願いします!!」
「ほう今回は第七部隊の女とタッグで俺と戦うか。いいぞ!来い!!」
「俺はお前との戦いに飽きてるんだよ!!」
波瑠斗は怨嗟暴走状態に入る。一度覚醒したら分かるこの感覚。力がみなぎるのと同時にフラッシュバックする嫌な記憶。思い出す度に映る大事な人が痛めつけられる光景。それに対する怒りや不快な感情。怨念が増す。覇宮龍護にどのような復讐をしてやろうか……
どんな敵も恨んで憎く見えてしまう状態がこの怨嗟暴走状態なのだ。
「やはりその状態を扱うか波瑠斗!!そこの女隊員も早く覚醒するといい!!俺をもっと楽しませてくれ!!」
戦闘が始まる。さっきの戦いでは3対1でしかも、副隊長の一撃があった。しかし今回はただの隊員だけ。それに、隊長も副隊長も兄貴も第七の副隊長も誰も助けに行けない状況……
「俺がやらなきゃ……」
「大丈夫です弟さん!!私、隊長と同じ暴走状態使えます!!」
朗報だった。しかし、この娘はどうやって覚醒状態を会得したんだ?さっきまではすぐに瞬殺されていたのに……
「私今かなり怒ってるんですよ。許せないあの女。殺してやりたいと本気で思いましたよ。好きな人を取られるのってこんな気分なんですね。」
まさかこの娘、兄貴の事が好きなのか……?という事はさっき兄貴にダル絡みしてたメンヘラ女に嫉妬してるのか?
それだけでここまでなるのか?この数十分で?
肉体が覚醒してしまうほどのストレスという事なのか?
「まさか、こんな事があるなんてな……ただの隊員だと思っていたが覚醒していたなんて……しかもその色緑がかっているな。嫉妬か!!」
「嫉妬?どうでもいいですけど鬱憤ばらしに付き合ってくださいよ。あなた達の仲間さんが隊長にベタベタしてるの見るとイライラするんですよ。」
「ん?あの女が誰かを好いているのか……?しかもそれが影響して覚醒……?」
「もうあなた五月蝿いので叩き潰しますね。」
蛍は空気砲を飛ばす。
しかし、予想外の連続で龍護は反応が遅れる。
「ぐっ、あの隊長と同じ技を……」
「俺も使えるかな……」
波瑠斗も空を思いっきり叩く。
しかし空気砲が飛んで行った様子は無かった。
「なんで俺は覚醒してるのに……」
波瑠斗と蛍と龍護の戦闘が始まる。しかし、ここでも龍護が覚醒状態に移行する様子はなかった。
波瑠斗と蛍の突きと蹴りを簡単に捌いていく。
「ちっ、天ノ川さん!!戦法を変えよう!!」
「いいですけどどう戦うんです!?」
「俺が前に出るから空気砲連打で戦ってくれ!!」
「分かりました!!」
「ほう?俺と近接戦闘するのはお前だけか!!それもいいぞ!!さぁどんどん力を覚醒させるんだ波瑠斗!!」
「毎回毎回うるさいんだよ!!」
(というものの、コイツタイマンだとちょっちキツイ……)
「弟さん!!どんどんいきますよ!!」
蛍は連続で空を叩く。その風圧を龍護は全てガードして致命傷を避ける。
(ダメだ!まだ連携ができない!)
「天ノ川さん!俺目掛けて空気砲打ってくれ!!」
「それは……っ!分かりました!!」
蛍は波瑠斗目掛けて空気砲を放つ。その風圧が波瑠斗に当たる直前で波瑠斗は風圧を龍護に向けて受け流す。
咄嗟の風圧の方向転換に龍護は対応できず直撃し、吹っ飛ぶ。
「やるな!」
「天ノ川さん!この調子でもっと頼む!!」
「分かりました!!」
蛍は連続して風圧を飛ばす。龍護は自分に向かって飛んできた空気砲の風圧をガードする。波瑠斗は全て龍護に向けて受け流す。
「おいおいこれじゃあ意味無いぞ!」
横から一撃。蛍は龍護の意識が波瑠斗に向いた瞬間に側頭部に不意打ちの回し蹴りを放つ。
「ぐっ……!」
「そこだぁぁぁぁぁ!!!」
波瑠斗の前蹴りが龍護の胴体に直撃する。貫通とはいかなかったものの、かなりの大ダメージとなった。
「この数時間でここまで成長するなんてな……」
「そろそろ決着を着けましょうか。」
「天ノ川さんコイツまだ覚醒状態を残してる!油断しないで!」
「そろそろ俺も感情暴走状態に移行するとしよう。俺の感情は……」
─14時27分─
感情暴走状態の人間達の戦いが始まる。




