三章 4話 覚醒した力
波瑠斗と龍護の戦いは11頃に佳境に入った。覚醒した波瑠斗と感情暴走状態に移行してない龍護の強さはトントンといったところだった。
「どうした波瑠斗!!力が抜けて来たんじゃないか!?」
「くっ……!」
「大丈夫か波瑠斗!!俺も加勢するぞ!!」
「大丈夫っす隊長!!それより刀を探してきて貰ってもいいすか!?」
「任せろ!!」
「おいおい俺達の体にただの刀は意味無いの覚えてないのか!?」
(そうだ俺達の体は刀や銃弾は基本的には効かない。だが、副隊長の一振ならワンチャンあるかもしれない!!俺は時間稼ぎすればいい!!)
「お前、今のままだと死ぬぞ?」
「は?何言って……」
刹那、波瑠斗の胴体と首が泣き別れる。
「は?」
「胴体が再生するまで話してやるよ。前提として俺達はいずれ仲間になる。」
(コイツ何言ってんだ……)
「そこでだ。その怨嗟暴走状態に入ったお前が感情暴走状態に移行してない俺にボコボコにされたらダメなんだよ。それじゃあ本当の敵に勝てない。」
「本当の敵……?」
「それを教えるのはお前が俺を退ける事ができるのが前提だろ。」
(……やっぱり俺は弱いんだ……コイツが尻尾巻く姿を想像できない……)
「というかお前。本当は兄貴の方より強いだろ。武器があれば尚更だ。」
(何言ってるんだ……それに今の俺は首と胴が……なんだこの感触……もう再生が終わってる!?)
「その再生力、普通に異常だろ。」
蹴り上げながら起き上がる。
「その不意打ちはいい。ただお前の思考が一点になってないんだよ。その自身の無さはなんだ?なぜ覚醒した上でまだ自分より弱い雑魚に頼る?」
「それは……」
「お前の兄貴もあればあれでかなり上澄みの中なんだが……」
「アイツがか?」
「ん?宮島での話を聞いてないのか?アイツは人獣の筋力を抑制させる電磁波を直に浴びながら、最上咲奈のクローンを瞬殺し、人獣を数百と殺し、最上咲奈本体と戦って一度も心臓や頭を潰されていない。というか最上咲奈は最強管理者の五本指の1人だぞ?」
「ソイツの動きも抑制されてたんだろ?」
「いや、最上咲奈自体に電磁波は効果が無い。俺達は効くけどな。しかも電磁波は指数関数的に効力を発揮するって言えば分かるか?」
(兄貴ってそんなに強かったのか……?でも昔は俺と大差無かったぞ……?)
「波瑠斗!!待たせたな!!」
「隊長!!」
「刀を持たせた優奈がもう少しで来る!!アイツならその敵を一撃で縦に両断できる!!俺も加勢するからもう少し耐えるぞ!!」
「ほう……この隊長もやるな。だが覚醒はまだか……」
「うるせぇな!!」
波瑠斗と墨の連携で龍護を抑える。
波瑠斗が突きを出し、龍護が受け流す。その隙を墨が上段回し蹴りを放つ。
龍護はそれも受け止める。そして波瑠斗のローキック。
直撃。
「グッ……」
「兄貴ほど上手くないからあまりだな……」
「いや、いい角度で入ったみたいだぞ。」
「中々いい連携攻撃だな。」
「飛べ!!波瑠斗!!」
その一言で思いっきり横へ飛ぶ。
世界が2つに裂かれたように見えた。
目の前の龍護が袈裟斬りされる。
「ごめん2人とも!!急いで抜刀したから頭と心臓を1回で断てなかった!!」
「グハッ!!ハァハァ……やるな第六部隊の人間達……!!」
「優奈!!まだ刀は使えるか!?」
「亀裂入ってるからあと1回振ったら崩壊するかも!!」
「俺の……ハァ……予想違いだったようだな……隊長も副隊長もただの雑魚では無かったという事か……」
(奴のこの息切れの仕方……もしかして中途半端に切断したから痛みが激しいのか!!)
「流石に皮一枚残された状態は痛みが激しいな……そこら辺に臓物も転がっちまって……」
「隊長どうします!?」
「いやぁとりあえず、確保かな。あと藤原隊長がどこかで戦ってるんだろう?」
「あの人急に現れてカッコつけてどっか消えて行きましたよ!!」
「あの人誰と戦ってるんだ?」
「なんか春果って呼ばれた女とどこか消えましたけど。」
「あぁー女の子が相手なのね。アイツ自分がイケメンなのいい事にナンパしてワンナイトする事しか興味無いからなぁ。」
「最低な男ですね。私達女の子の敵です。」
「まぁあの人槍術は卓越してるからなぁ。」
「春果!!そろそろ撤退の準備だ!!」
龍後がそう叫ぶと女の子は戻ってきた。
「第四部隊の隊長はどうだった?」
「強いけどナンパしてくるからウザかった。」
「そうか。ま、今回は俺らの負けという事にしておいてやるよ。京都中の人獣はお前たちでどうにかしな。」
そう言うと龍護と春果は去っていった。
その時奥から、激しい音がした。
「もういいだろ!!」
「うるせぇ!!もうイライラが収まらねぇんだよ!!」
どこかで聞いた事のある声だった。しかも相当暴れてる様子だ。
「龍護……撤退しよう……あの男もう止まらねぇ……」
「夜宵……分かった……」
「ふん!!」
晴璃は容赦なく空気砲を放つ。
「避けろ龍護!!」
「グッ……」
龍護は晴璃が飛ばした空気砲によって吹き飛ばされる。
「兄貴どこ行ってたんだ!!」
「ん?お前らいたのか。」
「いたわ!!てかアイツ……!」
「ん?ああ夕闇夜宵……朧の兄だろ?もしかして再開したかったのか?」
「アイツ弟いたんだ……」
「ああ。俺の隊にいるぞ。てか、うちの隊員達はどこ行ったんだ?」
「じ、実はかなりこっぴどくやられてて……」
「ほーううちの可愛い隊員達を良くもボコってくれたなぁ!!」
「待て!ソイツはもう俺が処理した……」
晴璃は龍護、春果、夜宵の3人をぶん殴る。
「アイツもしかしてかなりイライラしてたのか?」
「お兄さん思いっきり女の子に腹パンしてたね……」
「年下の隊長だけどこれから敬語付けようかな……」
龍護は吹き飛ばされ、夜宵はノックダウン。春果はお腹を抑え蹲る。
「た、隊長!!」
奥からどんどん他の隊員が集まってくる。
「ん?副隊長と蛍、朧、お前達無事か?」
「ええ。また首を撥ねられた位なので死んでは……」
「そうか。じゃ、コイツらは今から私刑してもいいな?」
「え?」
「話が長い罪、俺の仕事を増やさせてた罪、俺の隊員をイジメた罪、馬鹿な性欲の塊男を助けざるを得ない状況を作った罪、などがある。」
(藤原隊長苦戦してたんだ……)
「おいおい、俺が苦戦したわけじゃない……誘ってたんだ!!」
「うるせぇなかなりボロボロにされてた癖に。」
龍護が立ち上がる。
「これ以上はもう意味が無いだろう。それに俺達とお前達はいずれ手を組む関係だ。これ以上互いに戦うのは関係を更に悪化させるだけだろう……」
「た、隊長!そういえばこの人達の仲間の1人が隊長の事探してて……」
「なんで俺?」
「いやぁそいつはもう俺が処理したから無かった話になって……」
晴璃は震脚の衝撃波で龍護を吹き飛ばす。
「ハハハイライラが収まらねぇ」
─11時54分頃夜宵が吹き飛ばされた地点にて─
「あ、朧……」
「兄さん……」
「お前は……理想郷計画ともこの隊とも離れて学生生活を送るんだ……」
「な、なんで兄さんはそっちにいるんだよ……僕が腹違いの弟だから嫌なの!?」
「違うさ。だけど、お前はこの戦いから身を引くんだ。」
「どうして!?」
「この先は誰も得しない戦いばっかりなんだ。」
「何が敵なの……」
「敵は……鈴木原だ。奴は奈落の底で自分の世界で夢を見続けている。だから俺達は地上の人間を進化させて、奴の侵攻に備えたいんだ。」
「だったらそれを隊長達に……」
「確かに紺青晴璃は強いし、相談すれば奴は乗ってくれるだろう。だが、他の隊員が弱すぎる。それにお前達は人獣を討伐して平和をもたらす組織のはずだ。そんな組織に人獣を増やしたいだなんて無理があるんだよ。」
「兄さん……」
「今話したことは誰にも言わないでくれ……もし話したら異端者としてお前が処理されかねない……」
「分かったよ。話してくれてありがとう兄さん……」
「俺達は生みの親が違えども血は繋がってる。兄が弟を守るのは当然の事だろう?さぁ、行くんだ。」
─12時3分知恩院周辺にて─
「龍護……お腹が痛いよ……」
「おい!第7部隊の隊長!!お前俺の彼女に腹パンしやがって!!」
「なんで藤原隊長がキレてるんだ……」
「……そういえば隊長。霧ヶ崎隊長は?」
「ああ。実は体が再生した後、大阪に行ってな武器を取りに行くとか言ってたぞ。」
「マジすか。」
「なんかウチの姫が刀あればあんなカス共余裕なんだとか叫んで走って消えたぞ。」
「シスコンレベル100……」
「え、桜大阪まで走っていったんですか。しかも本部大阪市なんで相当時間かかるんじゃ……」
「姉様!!ただいま姉様の奴隷が戻って参りました!!技術部にパワハラして作らせてた姉様専用の刀になってます!!」
((自分で奴隷って言ったよこの妹。))
「え?桜この刀……」
「えぇ。姉様が振っても壊れないと思われます。人獣の骨と玉鋼の合金で作った硬骨鉄鋼という合金からできてます。」
「桜……これ振ってもいい?」
「えぇ!!」
「まだ戦う気なのか!?俺達はもう撤退するっ……」
「えい」
優奈は片手でいつものように軽く刀を振った。もちろんどんな角度であろうと正確に振る。力もブレさせずいつものように。
龍護の横の木に衝撃が伝わる。
「ありゃ切れなかったね。」
「姉様この木よく見てください。」
優奈の一撃を受けた木は切れ込みが見えないほど正確に切れていた。押せば倒れるくらいに。
「……春果、全力で逃げるぞ。」
そう言うと龍護と春果は山の中へ姿を消して行った。そして晴璃にぶっ飛ばされた夜宵も現れることは無かった。
「とりあえず一件落着って感じか?」
「いや、張間さん。俺達はこれから京都市内いや、京都中に広がっている人獣の増殖を止める仕事があります。」
「じゃあすぐ行かなきゃな。」
「ここに来るまで何体も人獣を討伐してきましたけど、奴ら俺達と同じ身体能力してるので、逃げるスピードもかなりのものです。正直、もう俺達だけじゃ人手が足りないです。それに一般人への被害が凄いことになっていて……」
「分かった。俺ら第六部隊はすぐにこの周辺の人獣の討伐を始める。」
「ええ。一応、大阪、兵庫、奈良、滋賀、福井の県境も他の部隊に連絡して向かってもらってます。」
こうして、午後の地獄が始まる。増殖した人獣の被害。人獣の増殖を目的とする管理者と、今の日本を守りたいABHOによる争いが始まる。
最初は京都の増えすぎた人獣の駆逐。
宮島の時とは違う地理的な状況。海が無く陸続きのため逃げられたら他の県にも被害が起き始める。




