三章 3話 仲間の定義
京都市内にて紺青晴璃と夕闇夜宵の戦闘は激しくなっていた。
(チッ、街中で風圧飛ばしも震脚の瓦礫飛ばしも使えないな……その上奴は俺と近接戦闘は避けているから余計に不愉快だな……)
「やっぱりお前に弟を任せて良かったと思うぞ!!」
「てめぇ俺のカバーできない距離にいる人間をどんどん殺すのやめろや!!」
「コイツらは居なくてもいい人間だからどんどん殺していくぞ!!」
(まずいな奴の武器が大鎌という事もあり、どんどん一般人の首が飛ばされとるな……しかも足が早すぎて追い付けねぇっての!!一旦風圧飛ばして見るか……?)
晴璃が思いっきり空を殴り空気を押し出す。
「……!空気砲って言ったところだな!!だが!!」
夕闇夜宵は近くに居た老人を盾にし防ぐ。
空気砲の衝撃で老人の体が凹み即死する。
「人殺し仲間になったな隊長さんよ!!」
「誰がテメェの仲間になるか!!」
「いや、お前はいずれ俺達の仲間になるぞ。」
空気が一変する。
「俺達管理者とお前たちABHOの違いは人獣を管理するか殺すかの違いだ。だが、HED2を飲んだ俺達は互いに尊重し合う仲間だ。」
(俺が飲んだ薬ってそんな名前なのか。2って事は人獣が飲んだやつの改良版という事か。)
「人獣達が飲まされたHEDは感情が一定ラインを超えると理性が飛ぶが俺達が飲んだものは違う。感情の起伏で体が更に進化するものだ。」
「そうかい!!」
動きが止まった夜宵に空気砲と震脚衝撃波を放つ。
しかし夜宵は難なく受け流す。
「聞けよ隊長。今、知恩院の方には俺の仲間が3人いる。まぁ、一人はアンタが確保した女のストーカーなんだが。」
「知らねぇよそんなこと。」
「ま、最上咲奈の解放も今回の任務の1つなんだわ。だから取引をしようや。」
「あん?言ってみろ。」
「アンタが最上咲奈の解放を約束するならこれ以上京都の人間は殺さないし、人獣も回収して撤退する。これでどうだい?」
「まぁ、なんだ。お前の向こうの仲間達が俺の部下や弟の部隊を攻撃してないなら約束できるぜ。」
「…………」
「取引は失敗でいいんだな。」
「ちょっとだけ待ってくれないか?確認してもいいか。」
「しろよ。」
夜宵がスマホを取りだし電話する。
しかし向こうの状況を知ると頭を抱えた。
「で?結果は?」
「す、すまない。ストーカーの方が暴れて……その……」
「なんだ?」
「全員半殺しにしていたらしくて……その……取引の件だが……」
「いや無理だろ。」
「やっぱり?」
「まぁ、なんだ。これ以上京都の人間を殺さないのと人獣化させない。人獣の回収を約束できるなら、最上咲奈と通話させてやらない事も無い。どうする?」
「……分かった。俺達管理者は今回は撤退しよう。」
晴璃は自分の携帯を夜宵に渡す。
「もう繋いである。好きに話しな。」
─通話中─
「咲奈か!!大丈夫か!!」
「ん?何?管理者側に戻らない!?なんでだ!?」
「え?マジで?と、とりあえず、拷問とかはされてないんだな!?」
「何!?理想郷計画も降りる!?え!?マジで!?」
「い、いやぁそれはあの人が……分かった。」
─通話終了─
「あのー隊長さん。彼女となんかあったんですか?」
「なぜ急に敬語なんだ。特に何も無いけど。」
「あっそうですか。じ、じゃあ俺達管理者は撤退をさせて……」
「いいよ。帰っても」
「......隊長さん、アンタ優しいな」
そういうと夜宵は背中を見せ走っていく。
もちろん晴璃はその隙を見逃さない。
右手を構えて静かに空気砲を放つ。
もちろん夜宵はそれを見越したかのように、すぐ振り返りガードする。
「やっぱ嘘なのバレた?」
「さすがにお前の一言一句一挙手一投足は警戒するさ」
「さぁ続きと行こうか」
「さすがにお前相手にするのは俺も龍護も春果も命を懸けないといけないからな。このまま距離を取りながら相手させてもらうとするかな」
(奴との距離は約5メートル。空気砲なら当たる距離だが簡単にガードされてしまう距離。しかし奴は俺と会話ができる必要最低限の距離にはいたいと感じる。もう少し奴らの事情を探るのもありかね・・・)
「お前は俺達が仲間になると言っていたが、共通の敵がいたりするのかな?」
「それはまだ言えないな。それに俺達だって困ってるのだよ。人獣の管理なんて」
「なぜ管理するんだ?」
「それは俺達がとある博士から頼まれてるからだよ。」
「何を頼まれてるんだ?」
「人獣から人間に戻す薬ができるまでの時間稼ぎさ」
「そんな薬作れるのって......!!」
「もちろん鈴木原のクソ野郎じゃないさ。まぁ奴の研究の関係者ではあるけどな。というかお前達の技術班にもいるだろ。鈴木原の元関係者。だけど鈴木原が生んだ人獣被害を抑えたいと思ってる博士が一人か複数人か。」
「さすがに技術班は分からんな」
「とりあえずお前達は佐竹を信用するな。奴は危険な思想を持っている。」
「一応聞くがなぜ管理者は理想郷計画に賛同していたんだ?」
「そうだな・・・俺達と鈴木原の理想郷計画って一緒の物だと思ってるだろ。違うぜ。」
「何が違うんだ?」
「ま、しゃべりすぎだとは思うが弟が世話になってる礼だ。教えてやる。そもそも俺達の理想郷は人獣を増やし人を管理する。そして人獣になった人間の理性を取り戻させ、肉体の進化を遂げさせる。」
「なら俺達が服薬した薬を使えばいいのでは?」
「それは製造したところで他の人間が飲むか?もし飲む意思がない人間がいたら?そんな奴らをひっくるめてまずは人獣に堕とす。次に理性を取り戻させ人間にする。肉体は人獣のままだから進化が完了するというわけだ。」
「なるほどな」
「だから鈴木原の理想郷に俺達管理者が同意してるわけじゃない。管理者の理想は今の精神のまま肉体を進化させた世界。」
なるほど。これが奴らが目指す世界。鈴木原が目指したのは精神も進化した世界。そして俺達と管理者はいずれ仲間になるという。
だがホントにそうなのか?それにコイツらですら疑っている佐竹隊長。どうにかしてそっちにも探りを入れたいが・・・
「ま、とりあえず今のお前たちは俺らの敵だ。倒すぜお兄ちゃん」
「好戦的な隊長だな」
ー10時35分知恩院周辺にてー
「その力もっと見せて見ろ!!」
(ちっ、コイツマジで強い!兄貴がいても倒せるか怪しいぞ・・・)
「どうした波瑠斗!?覚醒した力はそんなものか!!」
(なんとか攻撃は捌けてはいるが・・・一撃一撃が重い!!)
波瑠斗と龍護の戦闘も激しさを増す。互いに突き蹴りを捌き避け反撃する。
勝利するには何かあともう一手。確実に戦況をひっくり返す何かが足りなかった。
「第四部隊援護に入る!!」
(第四部隊!?あいつら今は中部地方で人獣と戦ってるはずだが・・・)
「ちっ邪魔なのが来たな......春果!!奴らの相手頼む!!」
(まだ仲間がいるのか!!)
「龍護......コイツら倒せばいいの?」
「ああ。俺は波瑠斗の力をもう少し試したい。」
「分かった。」
「そこの手足が青紫がかった坊主!!俺は第四部隊隊長の藤原隼人だ!!お前たちの援護に来た!!そっちの男の相手頼むぞ!!」
(とりあえず、第四部隊も来た......おそらく隊長以外は別のところで戦ってるんだろう.......)
ー11時ー
戦闘は激しさを増す。人獣が増殖していく。そして新たに第四部隊隊長とともう一人の管理者が戦う。
そして波瑠斗と龍護の戦闘は佳境に入っていく。




