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音楽祭

「それでは、一次審査の順番を決めるくじを代表者に引いていただきます!」


司会者に呼び込まれて、伸之のぶゆきに続いてステージにでた。

大きな歓声にくらくらしてくる。

3000人と聞いていたが、ステージに立つとそれ以上にいるように見える。

順番を決めるくじは、伸之が引いた。

この人数に見つめられながらくじを引くなんて私には出来そうもない。


「9番目か」

9番透明デイズと画面に表示された。

良い順番のなのかはわからないが、10組出るので最初でも、最後でもないだけいい。

まだまだ時間があるとホッとしていたが、緊張していると時の流れは早い。

あっという間に次の番になり、スタッフに声をかけられた。

震えながらステージの袖へ向かう。


美由紀みゆき

「何?」


「ありがとうな」


「え?」

「一緒に演奏してくれたおかげで今があるからさ」

「何よ、急に」

「楽しもうな」

伸之が手を差し出した。


「次は、9組目!透明デイズです」

司会者の声が聞こえる。


差し出された手をグッと握った。

「行くぞ」

「うん」


光り輝くステージへ足を踏み出した。


「僕たちは透明デイズというバンドで2人でやってます!今日はぜひ僕たちのことを覚えて帰ってください!」


キーボードに手を乗せる。


(今日もよろしくね)


いつものように演奏を始める。指が待ってましたと言わんばかりに軽やかに動き出す。


「では聞いてください!スターナイト!」


元々POPで軽快な音楽だが、さらに盛り上がれるように美由紀がリミックスした。

ギターとキーボードなので、ドラムがいるバンドに負けないように作ってきた。

笑顔を出しながらキーボードを弾き続ける。

胸は緊張でいっぱいのはずだが、場数だけは踏んできたから耐えられる。

伸之が観客に手拍子を求め、大きな手拍子がメロディーになっていく。


演奏が終わると割れんばかりの拍手に包まれた。

まずは掴みはOKというところだ。


次は新曲だ。

伸之がファミレスのようにみんなに親しんで聞いてもらえるように作った曲。


「次の曲は、相方である美由紀が親しみやすい楽曲を演奏できるような、ファミレスのようなバンドにしたいといったことから作成した楽曲です」


伸之が笑顔でこっちを見てくる。

美由紀は照れながらも頷いた。


「皆さんに親しんでもらえる曲になるように、精一杯演奏します!」

伸之が大きな声で宣言すると、観客も答えるように「おー!」と声を上げた。


「それでは聞いてください。Friendly familiar」


明るく軽快なギターの音で始まる。

ポップな曲調はスターナイトと変わらないが、スターナイトのように穏やかなメロディーの部分はない。

終始明るい曲調だ。

でも、歌詞は切ない部分も残すようにした。

フレンドリーもファミリアも親しみという意味を持っている。

親しみがあるからこそ、本音でケンカをしたり、時には言いたいことを言えなかったり、という誰もが経験したことあるような内容の歌詞になっている。

伸之が手を振り、観客達も合わせて手を左右に振る。


(すごい)


綺麗な波が描かれ、一枚の絵の様だ。

星夜祭でも多くの観客の前で演奏した。

その時もライブで演奏することがかなり気持ちいいと感じたが、今日はその上をいく。

多くの人が同じ楽曲で、しかも自分たちの曲で盛り上がってくれている。


(やばい・・・はまりそう)


演奏を終えると、さらに大きな拍手が音を立てた。

「この曲で、友人、家族、恋人、きっと大事な人を思い浮かんだと思います。ぜひ親しい誰かとまたこの曲を聞いてください」


「ありがとうございました」

二人で同時に頭を下げる。

大きな拍手に包まれながら、ステージを降りた。


「良かったよー!」

控室に戻ると、すぐに亜由美あゆみが駆け寄ってきた。

「今汗やべぇから近寄るなよ」

伸之はそう言いながらフラフラと椅子に座った。

「絶対審査通ったと思う!」

亜由美はキャッキャとその場で跳ねて嬉しそうにしている。

そして行きつく暇もなく、すぐにステージに再度呼ばれ、1次審査の発表がされた。


「では、観客投票1位を発表します!」


バンという効果音と共にステージに用意された液晶にバンド名が出た。


「ナイトスロウ」


亜由美が、控室で言っていたライブハウスで何度もステージをこなしているというバンドだ。


「そして続いて2位!」


「透明デイズ」


バンと名前が表示され、美由紀たちの顔がカメラに抜かれた。


「・・・!」

驚きで声が出ないとはこういうことだ。

その後3位が発表され、ステージを降りたが、ほぼ記憶がない。


「マジ・・?マジなの?」

気づいたら繰り返し呪文のように唱えていた。

「マジだよ!ほんとにすごい!」

亜由美は伸之の周りをくるくる回っている。


「ねぇ、伸くん?どうしたの?!伸くん!!」


亜由美の悲鳴のような声が聞こえたと思うと、バンという大きな音がした。

何事かと振り返ると伸之が横たわっていた。

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