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宰相様の想い (グレースside)

お気に入り登録、な 、な、な、なんと!500突破です!(涙)


嬉しさのあまり、家の片隅で小躍りしました!!!


本当に、皆さん、ありがとうございます!

小さくて、華奢な彼女の身体を抱き締める。あまりに強く抱き締めてしまうと折れてしまいそうなほど儚げで、愛しい。


母と同じニホン、という異世界から来たこの少女は、母と似ていた。それは外見などではなく、彼女を纏うその雰囲気だ。


ふわりと周りを包み込むような優しさの中に、凛とした強さを兼ね備えている、そんな彼女に母を見た。


無論、同郷というだけで、彼女と母には恐らく何の繋がりもない。だが、この小さな少女が時折垣間見せる強さは、そう思わずにはいれなかった。


その少女が、今、自分の胸にすがり付いて泣いている。


「ハナコ嬢。今日は何も考えずに眠りましょう?その前に何か食べれそうですか?」


胸の中でふるふると彼女は首を降る。


「では、もう眠りましょう?」


コクン、と小さく頷いたのがわかった。


泣いているのが恥ずかしいのか、顔をあげてくれない。


私がゆっくりと彼女を立たせ、肩を抱きながら寝室へ連れて行き、ベットに寝かせる。


無論、リビングにはアイリーンが控えており、ドアも少し開けたままだ。


ベットに横になっても、やはり恥ずかしいのか、額のところまで掛布を手繰りよせ顔を隠してしまう。


そんな様子が可愛いくて、そっと額に唇を落とす。


「おやすみ、ハナコ嬢。」


そう言ってベットを離れようとすると、ツン、と上着を引っ張られた感覚がして、彼女を見ると、やっと顔を見せてくれていた。


すがるような、また泣き出してしまいそうな大きな黒曜石の瞳に涙をたっぷり溜めて、私を見ている。


クスリ。


そう笑って、ベットの側に椅子を引き寄せ、彼女の手を握り座る。


「眠るまで、側にいても?」


そう言うと、溜まっていた涙が一粒零れる。そして、彼女は微笑み、瞳を閉じた。







「ハナコ殿はもう寝たかの?」


夕食後、書斎で酒の入ったグラスを傾けていると、そう言って父が入って来た。


「ええ。泣き疲れて。」


「…そうか。」


父が向かいのソファーに腰を下ろす。


「父上、ハナコ嬢は、やはり後宮に入らねばならないでしょうか…」


口に出して聞いて、自分で自分に嫌気がさす。


私の口から出たのは、決して質問ではない、確認だったからだ。


そんな問いとも言えぬ問いに、律儀にも父が答える。


「ふむ。そうせねばなるまい。わしとて、無理矢理入れとうない。が、しかし、王太后がハナコ殿の無実を証明した。」


「だか、それは!!」


「王太后の仕組んだ事だろうよ。ハナコ殿の後宮入りを推し進める為に、な。」


そうだ。ハナコ嬢の無実を王太后が証明したなど馬鹿馬鹿しい!あの爆破事件自体、王太后が仕組んだこととみて間違いない。証拠がないだけだ。王太后の目的は端からハナコ嬢を後宮に入れることだ。


「だが、それだけが理由ではないぞ、グレース。」


普段父は飄々としていて掴み所がなく、何を考えているかわからない節があるし、何も考えてないのでは、と思うことさえある。


しかし、実際は常に周囲の状況を把握し、王にとって、果てはこの国にとって最善のことを考え、更には行動している。


常ならば、そんな父を私は尊敬している。だが、しかし、この国にとっての最善は、ハナコ嬢にとっての最善か?


答えは否、だ。


「今回は王太后の謀に我らが負かされたのよ。元々、近頃貴族らの間で王の側にいるハナコ殿は好奇の的であった。真しやかに、王が后に迎えるのでは、王の想いはハナコ殿にあるのでは、との。まあ、実際、王にとって、ハナコ殿は既に特別じゃし、謁見の間での王と王太后のやり取りは、端から見ても王がハナコ殿に好意をもっているのは明確じゃ。」


何時ものように、父が飄々と言ってのける。が、しかし、言葉の節々に苦々しい想いが感じとれる。


父もハナコ嬢を尊重し、大切にしたいのは同じなのだ。


「そのような、状況でじゃ、後宮にハナコ殿を入れぬとなれば、後宮がはりぼてで、無意味なものだと言っているようなものだ。それでは貴族共が更に煩くなるであろうよ。」


その通りだ。だか、王太后がハナコ嬢を後宮に入れたがる、ということは、


「それでも、私はハナコ嬢の後宮入りには反対です。王太后がハナコ嬢を後宮に入れたがるということは、その際に何か仕掛けようと企んでいるのでは?危険です。」


何故、危険なところにわざわざ彼女を放り込まなければならない!?


「うむ、確かに。恐らくこの我が邸に居たのでは手出しが出来ぬ故、とにかくここから引きずり出したかったのだろう。」


だがな、と父は続ける。


「これは、悪い例えじゃとわしも甚だ腹がたったが、ハナコ殿の魔力が脅威となるのは、事実じゃ。あれほどの治癒魔法。…王以上じゃよ。生きてさえいれば治せるのじゃぞ。」


父の発言に、思わず頭に血が上る。


「ではっ!では、父上も、ハナコ嬢に枷などと、そう思っておいでなのですか!?」


思い出しても腹立たしい、あの王太后《女狐》め!あの時、王太后のハナコ嬢に対する、枷、という発言で、王の箍が外れそうになった時、いっそ…と、思ったのは言うまでもない。何とか押し留まったのは、王だけでない。私もだ。


「そうは思っておらぬ。」


「だったら!」


「のう、グレースよ。お主は、例えばこの邸に、他国の王族、御力を継ぐ者がハナコ嬢に害をなしに来たとする。必ず守れると約束できるかの?」


「っ!それは…」


必ず、とは出来ぬ約束だった。我が一族も風の精霊カッパニーニの御力を受け継ぐ者。父も私も、そして息子もその名に恥じぬ魔術師だとは思っている。だか、王族とはまた別だ。


我が国王は桁外れのため論外だが、他国の王族だとて我ら以上か、互角か、だ。現実問題、不甲斐ないが、必ず、とは言い切れなかった。


「王の側におるのが一番安全じゃと、わしは思うぞ。」


クソッ!


思わず胸の内で悪態をつく。


その時、気配がした。


だから、秘めていたことを敢えて口に出す。


「…枷だというなら、私と一緒になり枷とすればよいのに。」


「ならぬ!」


ここにはいないはずの御方の声が聞こえる。


「…王、この様な夜更けに何用で。」


そこには、公務以外ではほぼ王宮を出ることのない、我が国の王の姿があった。

作者的にはグレースなら後妻でも…(殴)


大変失礼しましたm(__)m怒らないで下さい!(涙)

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