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転生未来

目を開けると、そこは白い天井。

周囲は、生成りのカーテン。

横には、黒い大きな機械。


(ここは)


ふと腕には、点滴の管があることに気付く。


(どういうことなんだろう?私は先輩の息子になり、海外へ行って・・)

香の記憶と蒼真の記憶が交差している。

明らかに自分はベッドの上にいて、病院だと感じさせる。


違和感を覚えて、目を瞬かせると、手にぬくもりを感じる。

なんだろうと、視線を移すと、嬉しそうな先輩の顔。

手のぬくもりは、先輩が両手で私の手を包んでいるから。


(あれ?でも先輩若返ってる?)

自分が蒼真だと思っているので、年齢に疑問が沸く。


「せ・・(先輩)」

声が擦れて、上手く発音出来ず。

こちらの尋ねたいことが、今聞けないもどかしさ。


「良かった。気が付いたんだね。今、ナースコールを押したから」

先輩が笑顔で言ってくる。


(ナースコ-ル?)



それから直ぐに慌てた足跡が近づいてきて、部屋の隅の扉が開くと、

看護士が何やら持ってきて、手や足を調べてくる。

白衣を着た、いかつい男性医師は、私の顔を覗き込んで

「気分はどうですか?」


私は病人?


「・・・(?)」

「声は出せますか?」

「は・・ぃ(あ、擦れる)」


私の反応に、医師は難しい顔をさせ

「一か月も眠っていたので、声帯に負担が掛かっているのか」

「先生、オールグリーンになっています。脈拍も心臓も体温、血圧も通常に戻っています」

看護士が機械を見て医師に告げる。

医師は看護師に視線を合わせて、頷く。


「指が見えますか」

医師の言葉に、私が頷くと

「意識がはっきりしていますね。手を握ったり、開いたり出来ますか?」

出来ないならしなくてもいいですよ と、前もって伝えてくれたが

私は言われたとおりに手を動かす。


足も動かすと、医師は頷いた。

体を起こしてみるよと言われ、頷くと、ベッドが上半身を起こせるくらいまで変形した。

「どうですか?」

ベッドの居心地を尋ねられたので

私が了承の意味で頷くと、周囲は安堵した雰囲気になる。


医師は看護士に白湯さゆを持ってくるよう支持して、私の目や口の中を診察、

もう1人の看護士と何やら話をしてから先輩に向かって説明を始める。

「目が覚めて、意識もはっきりしています。2日様子を見て、大丈夫のようでしたら

リハビリを始めたいと思います」

「分かりました」




--------------------------------------------------------------------------


医師も看護師も部屋から出ていくと、私は先輩と2人きりになった。

「大丈夫?父さんや母さん、しのの両親にも連絡したから、夕方に来るからね」

白湯を飲み、喉を潤したものの、まだ喉が痛くて

頭を縦に振って意志表示させた。

「君が大量出血で入院をして、1か月。本当に一時はどうなるかと」

「(・・・あれ?)」


凄い違和感を感じ、私は頭を傾げる。


「君は覚えていないかもしれないけど。皆心配したんだよ。いきなり破水はすいしたというから」


(破水?)

破水って、お腹の赤ちゃんが入っている羊水ようすいのこと?

え?

ますます意味が分からなくなり、私は首を傾げる。



違和感が大きくなり、どうして今こんな状態なのかを思い出そうとするが

分からない。

不安な顔をさせる私に、先輩は抱きしめてくれて、1か月前の話しを始めてくれた。




今、病院で1か月眠っていた私は、なんと 「桂木 しの」という27歳の女性。

私、いつのまに性別変わったのかと思ったら、記憶が転生している記憶を呼び覚ませてくれた。


桂木 蒼真は、彼、先輩だと思っていた目の前の彼 

桂木かつらぎ 生眞いくま28歳の祖父。

そして、香の先輩だったはずの桂木かつらぎ 樹生たつきは、蒼真の実父。

これは知っている。

生眞いくまは、蒼真の息子の子供。

親子4代、イケメンで顔が同じだそうだ。

だから、先輩と間違えたんだ。


(ああ、そういえば蒼真は、海外のレストランに就職してから、しばらくして結婚した)

私は自分の事なのに、思い出して驚く。




蒼真だった頃の記憶では、樹生は医師で、生眞が生まれるよりも前に寿命で他界。


先輩の死に、蒼真はかなり落ち込んだ。

死が中々受け入れられず、お酒を大量に飲んで、病院へ運ばれたな。


蒼真は高校卒業して海外留学し、海外のレストランで就職。


あの料理大学は、ハードだった。

ソムリエの資格も取ろうと、ワインの試飲でぶっ倒れたな。


その後、日本に帰国し個人経営で始めた店のシェフ(海外留学し、有名シェフ)で、

蒼真の息子は、高校卒で蒼真と同じように海外へ留学し、その後 蒼真の店を継いだ。

蒼真は、孫が生まれて1年後に、仕事で無理をしていた為に倒れて他界。


年齢と体力考えず、仕事に打ち込む過ぎて、周囲に迷惑を掛けたことを思い出す。


祖母は、な、なんと皐月さつき 瑠璃るり


そういえば、瑠璃だった。

香と同じようなさっぱりした性格だった。

俺が自分の前世で悩み、何度も諦めようとしたのに、彼女は粘った。

凄い懐の大きな女性だった。


流れてくる記憶では、海外のレストランへ瑠璃が訪ねて来て、

日本と遠距離恋愛をしていた時期を思い出す。


3年。瑠璃を待たせたな。


生眞いくまの母は、彼の父である蒼真の息子が、やはり仕事先の

海外で知り合った女性とのことで、

私の中の登場人物には、登場していなくてまだ分からない。


でも、会ったことはあるような記憶がある。


そして、私は誰?ということになる。

(香でもなく、蒼真でもなく・・・桂木しの?)

まだ今の自分の記憶までたどり着けないので、不安な顔になってくると。


「君は俺の奥さんなんだけど」


「へ?」


生眞は抱きしめた腕を緩めて、私の顔を覗き込む。

「もしかして、記憶喪失なんて言わないでくれよ」


私は、今までの記憶(前世の記憶なのか、夢なのか自分で対処出来ていない)の内容を全部、

擦れた声で彼に打ち明けてみると

彼は驚いたようだ。


「君は、皐月 香の記憶があるのか?」

「うん。蒼真・・あ・・と、その貴方のお爺さんの記憶も」

生眞は、しばらく黙りこんでから、くすりと笑った。


「そうか。それは凄い運命の巡り合わせだ」

「運命?」

再度、ぎゅっと抱き着くと

「そう、運命だ。前世で出会えなかった2人が、未来で出会えるというね」

「どういう・・」


ちゅっと、キスをされて、彼は笑みを深くして、それでいて目から涙が溢れている。

「俺も前世の記憶を持ってる。しかも、桂木かつらぎ 樹生たつきの」

「え、先輩?」

「やっと会えた、香。今度こそ、あの時言えなかった言葉を」

「言葉?」

茫然としている私に、先輩は両手を頬に沿えてくる。

「結婚してください。もう結婚はしているんだけどね」


言われた言葉が脳に届くまで数秒。

顔が熱い。

それから、私も返事をした。

「はい」



しばらく、香と樹生の頃に戻って、当時のあれこれを話していく。

もちろん、父と子の頃の記憶も。

今は、そのひ孫とその妻なのに、不思議な感覚だ。


話をしていくうちに、現代の話しになり、今の体、しのの記憶も少しづつ思い出していく。

しのに生まれ変わって、香と蒼真の記憶はなかったのに

出産で生死を彷徨ったことで、

どうやら前世の記憶を思い出したようだ。


イケメンの生眞と出会ったのは、やはりあの高校。

シェフを目指している生眞とパティシエを目指していた私。


「君があまりにも皐月 香に似ていたんだ」

「香に?」

「今更なんだけど、転生した君を見つけられて、俺は嬉しい」


どこかで接点があったようだ。

また、巡り合えるなんて、本当に奇跡。






それから、赤ちゃんを見に行かないとね と、

車椅子でNICU(新生児特定集中治療室)へ、向かうことになった。

「許可が直ぐ出るとは思わなかったけど。やっと家族対面だ」


「あの、本当に私が産んだの?」

保育器で眠る小さな赤ちゃん達。

「そう。君が、しのが産んだ。双子なんだ。君は体調が悪くなるようだから、

早くから入院していたけど破水したとかで、

2か月早く緊急出産。お腹に帝王切開の跡があるはずだよ」

「そうなんだ」

お腹を摩ると、少しちくちく痛みを感じる。チラッと患者用の衣服を捲ってみると、

横スジが一本。見た目は綺麗になっている。1か月でここまで回復したのかと思うと驚き。

(出産の記憶・・、まだ曖昧だわ)



帝王切開で緊急になったのはいいが、出血が酷く輸血しながらだったけど、意識不明になり、

1か月入院していたというのが今の私だそうだ。


「意識が戻らなくてね」

「心配かけてごめんなさい」

「いいよ。無事に目覚めてくれたから」


まだ私が本調子でないということで、2人でガラス越しから、

2人の赤ちゃんを見る。

未熟児として生まれてきたけど、2人とも元気だということで、一安心。

「名前、2人で考えていたものを届けてある」

「うん」



病院の廊下で、先輩と私は

これからの未来を語り合うのだった。





私の転生の話は、これでおしまい。









香 → 蒼真 → しの という転生。


樹生 → 生眞 


海外へ行っての話、就職、社会人と書く予定でしたが

どんどん話しが広がり過ぎていくので

話しをここまでにさせて頂きました。


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