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ユイニャンを助手席に乗せて、後ろは狭いけどエリオット様に乗ってもらった。
運転するのはもちろんあたし。
ガレージを開けたらエンジン音を確かめてから颯爽とスタートする。
オープンカーは初めてだけど、風が気持ちいい。
「どう? ユイニャン。大丈夫?」
「うん。大丈夫。あの、ありがとうミカリン。あたしのこと怒らないでくれて」
「水くさいこと言わないのっ」
レモンティの森だけど、クルマ一台分走れるだけのスペースはある。
近年では馬車よりクルマの方が多いんだよね。
だってほら、馬は嫌いじゃぬいけど、ね?
そんな感じでドライブを楽しむ。
後部座席のエリオット様が、スピードにあわせて歌を歌ってくれた時だった。
前方に人影が見える。
野盗だ。
「せっかく完璧に整備したのに、あんたたちなんかにいいようにはさせないんだからねっ」
このクルマにはある仕掛けがあるんだ。
そうと知っていて買ったんだから。
赤いボタンを押すと、ぐん、とエンジンがうなる。
「ごめんなさい。飛びます!!」
エリオット様とユイニャンに言い置くと、クルマは野盗を乗り越えて、高く上空を飛び始めた。
ところが、野盗も魔法で空中浮遊すると、しつこく後を追って来る。
「しつっこいなぁ。もぅ!!」
緑のボタンを押すと、マフラーから唐辛子を散布する。
「うぉ。やりやがったな」
「それはこっちのセリフだよ」
それでも野盗はしつこく追いすがる。
ついにクルマに近づいたところで、エリオット様が短剣で野盗を斬りつけた。
一瞬ひるんだ野盗だけど、今度はあたしを狙ってくる。
「これでも食らいなさいっ!!」
自動運転に切り替えると、ポケットにしまったままだったレンチを取り出す。
「……ちぃっ。死んでも責任取らないからねっ」
迷いながらレンチを振るうと、さすがの野盗も遠ざかって行った。
「ふぅ。大丈夫ですか? 二人とも」
「あたしは大丈夫」
「僕も大丈夫だけど、大事なクルマを傷つけられちゃったみたいだよ」
オーマイガッ。まだローン払い始めたばっかりなのにぃっ。
ともかく。そのままひたすら走った。
途中、葉っぱが揺れる音に驚いたけれど、野盗じゃなかったみたい。
そして、あたしがユイニャンにどうしても見せたかった小高い丘へとたどり着く。
「エリオット様にユイニャン。空を見てください」
「わぁ……」
いつの間にこんな時間になったのか、星空が輝いている。
ユイニャンのため息が、今日のがんばりを励ましてくれるようだった。
「すごく神秘的だね」
この景色は、エリオット様も知らなかったみたい。
野盗のせいで、ここまでたどり着くのに時間がかかったけれど、これで目的が果たせた。
だってあたし、この星空をどうしてもユイニャンに見せたかったんだもの。
つづく




