2ー1
翌朝、小屋のドアがやたら乱暴に叩かれた。
「はいはい。どなた?」
「ミカリン・アールグレイとはお前か?」
「そっちが先に名乗りなさいよっ」
朝っぱらからから腹が立つなぁ。
「俺はロイヤルミルクティ国の第一王子、ジョシュア・ロイヤルミルクティだ」
王子かよ。イメージしていた王子とずいぶん違うなぁ。もっとも、エリオット様と比べちゃったらみんな粗雑に見えるけど。
「あたしがミカリンですけど、なんの用ですか?」
「ただちに支度しろ。これは命令だ。これからロイヤルミルクティ城に行って、我が父上であるジョゼフ国王陛下と謁見する」
「はぁ? 人違いなんじゃないですか? あたし、王様になんて会ったこともないんですけど?」
これが冗談でなくて、なにが冗談なんだ?
「ユイニャン・セイロンはもう馬車で待たせている。あとはお前を乗せるだけだ」
「はぁ。そこまで言うなら行きますけど」
「レンチを忘れるなよ?」
「レンチ?」
なにゆえに?
ま、いっか。テーブルに置きっぱなしにしておいたレンチを腰にぶらさげて、あたしは小屋に鍵をかけた。
「中古車を整備したと聞いたが、本当か?」
「はい。本当ですけど。なんでそんなことまで知ってるんですか?」
「悪いが色々調べさせてもらった」
なんなん?
朝っぱらからなんなん?
ロイヤルミルクティ国の第一王子だったら、もっとこう、物腰穏やかな美少年を期待してるんだけど。なんか違うんだよなぁ。
「乗れ」
はいはい。あたしは返事もなく、雑にエスコートされながら馬車に乗り込む。
「ミカリン」
「ユイニャン。本当にいたんだ?」
馬車の中ではユイニャンが不安そうな顔をしていた。
あたしが馬車に乗り込むと、すぐにジョシュア様が乗り込んできた。
「出してくれ」
ジョシュア様のひと言で、馬車は走り出した。
「それで、王様がおたしたちになんの用なんですか?」
「俺にもよくわからん。ただ、エリオットも呼ばれていることは確かだ」
エリオット様も? なんだろう。ユイニャンとエリオット様の身分差の恋か問題とか?
それにしたって、ロイヤルミルクティがとやかく言える立場にないはずなんだけどなぁ。
「昨日はプラグ男爵とコーダー夫人が失礼した」
今か? このタイミング?
なんだかこの王子様。エリオット様とはまったく毛色の違う王子様みたい。
馬車は丁寧に操縦されていて、あまり揺れなかった。
王室御用達の馬車だからなのかしら?
これで空飛んだら馬いらないよね。
なんて考えていたら、あっという間にお城に着いた。
どうやら瞬間移動の魔法を使ったみたい。
しっかしまったく。なんの用なのかしら?
つづく




