9ー1
レモンティの滝付近に近づくと、馬車は止まった。これ以上は地面がぬかるんでいるから馬車は使えない。
ジェインさんが馬を木につなぐと、あたしたちは滝付近へ近づく。
そこに、アイシアの姿を認めた。
「アイシア、なにをしているの? こんなところで」
あたしが聞くと、アイシアは薄ら笑いを浮かべている。
「なにって、この島から出て行く唯一の方法を試すためにここにいるのよ」
「この島のなにがそんなに嫌なの?」
「はん、全部よ。みんなわたしのことが嫌い。生みの親の顔も知らないし、友だちなんてのもいない。島という狭い場所で、おなじみの顔色ばかりうかがうのなんて、もううんざりだわ」
「ここを出たらしあわせになれるとでも思っているの?」
「そうよ」
そう答えたアイシアに、あたしは思いっきり声を荒げた。
「ばっかみたいっ!!」
「なによっ!? のうのうと生きてるあなたなんかに言われたくないわっ」
「この場所でしあわせになれない人は、どこに行ってもしあわせになんかなれるわけないじゃない。そんなの、小さい子供だって知っているわ」
「わたしだってがんばったわよっ。でも、無理なの。この島が嫌いでしょうがないのよ。わかって欲しいなんて言わないし、思われたくもない。ただ、放って置いて」
じょうだんじゃない。なんなのその子供がおもちゃを欲しくて地団駄を踏んでるみたいなその態度は。
「あなた一人のために、島の住人を巻き込まないで欲しいのよ。そんなこともわからないの?」
まったく、どれだけダダこねてるのよ。くだらない。
「それに。あたしはのうのうと生きてるわけじゃないわ。いい? これはね、あなたのための飲み物なの」
あたしはジョシュアから預かった小瓶を取り出した。
「でも、あなたにあげるのは辞めることにした。だって、あなたの曲がりきった根性を叩き直してやりたいからよ」
魔法には魔法で。
あたしはレンチを引き抜いた。
「あら? 攻撃するの?」
「こういうのがお好きなのかしらと思って」
「剣術ならわたしだって得意だわ」
「ミカリン、せめて魔法にしておけ」
ジョシュアが止めるけど、小刀を引き抜いたアイシアに負けるわけにはいかない。
「ジョシュアは黙って見てなさい。アイシアはあたしが根性叩き直してやるんだから」
ふんっ、と鼻息を荒くする。
こうなったらもう誰もあたしを止められないんだからねっ。
つづく




