6ー4
国王陛下は左後ろにぶら下げていた対魔族用の剣を引き抜いた。
さすがは国王陛下だけあって、一太刀でダメージをあたえることができる素材だ。
あたしたちは国王陛下の邪魔にならないように魔獣と戦いながら、様子をうかがう。
やがて、陛下のフェイントにだまされた魔王が一太刀あびた。
「ぐおっ。ぎゅわっ」
傷口がじくじくと膿んだように溶け出してゆく。
「おのれ、この女がどうなってもよいというのか!?」
「違うな。ユイニャンの身でくらげ島を滅ぼしたとなれば、彼女は自死を選ぶだろう。よってこれが最善策だ」
はっと短い咆哮をあげて、陛下がばすっと魔王を斬り裂く。
「だが心臓はやらないだろう? この女が死ぬからな」
「我の太刀筋をなめてもらっては困るな。ユイニャンを殺すようなことはせん。だが、魔王は殺してもよいであろう?」
魔王も応戦しているけれど、陛下だって負けてない。
正直に言うと、魔王が乗り移ったユイニャンのことが気になったけれど、今は陛下を信じるばかり。
そしてついに、魔王の心臓付近を差し貫いた陛下の剣は、光と氷魔法を併用して魔王を凍りつかせた。
「ぐるるるる……」
低く声を上げた魔王は、魂を逃がすように気体となり、宙を漂い始めた。ユイニャンの身体は倒れ伏し、陛下は気体を凍りつかせて斬りつけ、ばらばらに砕いてしまった。
「すまぬ、ユイニャン。すぐに治癒するぞ」
「ユイニャン!!」
あたしが叫ぶと、ユイニャンはちょっとだけ目を開けてぐったりした。
やがて、ジェインさんとジョシュアもやって来て、治癒に参加した。
燃えるような赤い髪にされたユイニャンだけど、いつもの繊細な茶色の髪と茶色の優しい瞳に戻っている。
よかった。
だけど、あたしはまた大切なことをわすれていたんだ。
「大変!! リンレイがっ」
あたしが彼女を助けに行くと、枷で身動き取れないリンレイが、虫の息でへばっていた。
「始まりの魔女、リンレイ。はじめましてだな。我はジョゼフ。ロイヤルミルクティ国の王をしている」
陛下はリンレイが見えるようで、枷を粉々に砕いて、治癒魔法をかけあたえた。
「ダメ。わたくし、レモンティの滝に行かなければならないの」
はかなげな美女はそれでも自分の役目を果たそうと必死に言い置いた。
「ならば、我らも共に行こう。エリオットとユイニャンはロイヤルミルクティの城で治療をつづけてもらってくれ。他のものはレモンティの滝へリンレイと共にまいるぞ」
なんと、二手に分かれたワープすら、ジェインさんにかかればお手の物だった。
ジョシュアが言うには、魔王が消滅したことでアイシアとダリア、それにユイニャンの魔力も消滅したという。
よっしゃ、これで滝壺までいそぐぞっ!!
つづく




