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リンレイと名乗った女性は、これまた儚げな笑顔を浮かべる。まるで幻のように消えてしまいそうに見えた。
『このくらげ島で初めて捧げられた生贄。だけどどうしてかな? わたくし、どうしても死なないの』
リンレイは両手を挙げて水を受け止める。その姿は神々しくもある。
『だから、ずっと見ていたわ。ユイニャン、あなたは毎日ここに魔力を捨てに来たわよね。他にも魔力を捨てに来た者たちがいる。そのせいでわたくしは生きているのかもしれない』
「始まりの魔女っていうのは、初めて捧げられた生贄だから? 他にも生贄に捧げられた魔女がいたってこと?」
そうだとしたら、この滝壺自体が枯れない理由がそこにありそうに感じる。
『そう。でも不思議と、わたくし以外の魔女は滝壺の淵から外に出ようとして命を落としたの。それでもう、最近では生贄すら捧げられてなかったのだけれど。あなたたちが来た』
「あたしたちはここに落とされたの。お願い、どうすればここから出られるか教えて」
『くらげ島は生きた島だから、磁場の影響で魔力が増減するの。魔法使いが誕生する理由はそれだけ』
「そんなことを聞きたいわけじゃなくて」
あたしは一秒でも早くここから出たくてリンレイをせかした。
だけどリンレイは肩をすくめるだけだった。
『あなたたちは、ここから出たいの? 他の魔女たちみたいに命を落とすかもしれないのに?』
「逆に。どうしてここでとどまっていられるの? ここから出たいと思ったことはないの?」
『ないわ。わたくしがいなくなれば、くらげ島が揺らいでしまう』
あ〜もうっ! じゃあどうするのよっ。
『くらげ島が崩落するとしたら、わたくしの責任になってしまう。あなたたちはここから出たい。そうよね?』
「そうです。どうすればいい?」
リンレイはただ力なく頭を左右に振るばかり。
途方に暮れていたあたしたちの前方が突然開いた。
「大丈夫ですか!?」
そこにはジェインさんとジョシュアがいてくれている。
「早く出てください。僕の魔法でもそう長く持ちません」
「ユイニャン、行こう!」
あたしがユイニャンの手を引くと、ユイニャンはリンレイさんの方を見た。
『わたくしは行きません。まだここで成し遂げなければならないことがありますから。それに、そこの殿方たちにはわたくしの姿は見えませんから』
ばいばい、というように両手を振ったリンレイさんを振り切るように淵から表に脱出した。
すぐにジョシュアの風魔法で宙に浮くと、ユイニャンの無事を喜ぶエリオット様の姿と、二人の魔女の姿が見えた。
助かった。
だけど、とても苦いものが口の中に残る。リンレイがいなかったら、あたしたちは死んでいたかもしれない。
そう思うとリンレイの存在を口外しない方がいいねとユイニャンと頷きあうのだった。
つづく




