4ー5
あたしは水魔法でユイニャンを救い出そうとしたけれど、三十メートルの滝の前ではまったくの無力だった。
「無駄よ」
「なぜこんなことをしたっ!?」
エリオット様がはけしくアイシアを怒鳴りつける。
「あの子の魔力を引き出すためよ。大丈夫。この滝に落ちても魔女は死なないわ」
「なら、あたしが助けに行くっ!」
「待てミカリン。アイシアの言うことを信用するのか?」
「今はそれしかない」
わかった、とジョシュアは頷いた。
あたしは覚悟を決めて滝へ飛び込んだ。
最初こそ息ができなかったけれど、水魔法を駆使してようやく滝壺の中へ入り込むと、身体がドーム状に包まれて、水の抵抗を感じなくなった。
「どういうこと?」
「おそらく、この滝に魔力を捨てに来たのはあたしだけではないということかもしれない」
「ユイニャン。無事だったの? よかった」
「だけど……」
ユイニャンの魔力測定器とあたしのそれが異音を発する。
「魔力が暴走しちゃったみたい」
くっそう。アイシアのせいでこんなことになるなんて。
「だ、大丈夫だって。魔力制御装置さえつけちゃえば、心配いらないって」
自分でも無責任なことを言っているってわかってる。
「それより、どうやってここから出ればいいんだろう?」
ユイニャンを助けることだけしか考えてなかったあたしは、滝壺の淵から出ることまでは考えてなかった。
今の状態だと、水魔法を使ってもここにとどまっていることしかできない。
少しでも前に出ようものなら、上流の水に打たれて身体が砕けてしまうだろう。
「あたしももがいてみたんだけど、出られなかったの」
ユイニャンはユイニャンなりに、ここから出ようとしたらしい。
三十メートルの滝壺から出て行くには、どうすればいいのだろう?
あれこれと魔法を使ってみるあたしだけれど、そこでユイニャンとは別の人間の気配を感じた。
「誰っ!?」
『怖がらないで』
まるで精霊のような淡い声を発する女性は、はかなげに微笑んでいた。
『あなたたちもここに葬られたの?』
「葬られた? どういうこと?」
『わたくしはリンレイ。始まりの魔女』
始まりの魔女? そんな人がどうして滝壺なんかにいるのかしら?
『くらげ島の安寧を護るために、生贄として捧げられた存在。それがわたくし』
生贄って。そんな時代があったというの!?
つづく




