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翌朝、目が覚めたら知らないか宿屋だったことにパニックを起こした。
「ミカリン、大丈夫?」
「ゆ、ユイニャン? ここどこ?」
「宿屋だよ? 旅に出たことをわすれているの?」
……わすれていた。
「びっくりしたぁ。ユイニャン、このことはみんなには秘密にしてね」
「うん。ミカリンってなんでもできるけど、意外なところに弱点があるんだね」
「あたしゃ弱点だらけじゃぁ」
おどけてそう言ったけど、あせったことは間違いない。
最強の魔女探しのために旅に出たわけだから、知らない宿屋に泊まっていても不思議はないわけだ。
それにしてもあせったぁ。こんなにパニクったのは、レモンティの森の小屋で初めて朝をむかえた時以来だよ。
とにかく目覚めてから知らない場所ってのに弱いことを学んだ。
それよか……。
「ユイニャン〜、治癒魔法できるぅ?」
「あたしはそのようなものは使えなくて。ごめんなさい」
「いいのよ。なんか昨日お稽古頑張りすぎたみたいで筋肉痛なのよ。笑ってやって」
「たしか、ジェインさんが治癒魔法を使えるみたいだよ?」
「そうなんだ。あの神出鬼没だよね。夕べも食堂に居なかったし、どこにいたんだろう?」
いや、この際ジェインさんがどこに居ようとどうでもいいわけなのだけど。
「筋肉痛になったことをジョシュアに知られるの嫌。また皮肉言われそう」
「まぁそう言わずに。たち筋がいいって褒められたじゃない?」
「そうだけどさ。武器はレンチだよ。あたしが使えるのは水魔法だけだし、せっかく買ってもらった魔剣の出番があってもこまるし」
「うんうん。なんか青春だね、ミカリン」
「青春はユイニャンの方でしょ? 夕べだってあたし、お稽古終わって食堂に入った途端、ユイニャンたちのむつまじい姿に口からお砂糖吐きそうになったもん」
そう、あますぎることをこの島の住人はお砂糖を吐くという言葉を使うのだ。
それくらいあまあまな二人ってこと。
「冷やかさないでよ、ミカリン。もしかしたらジョシュア様だって……。ね? そう思わない?」
「いや、わからない話をされてもこまるなぁ」
本当にわけのわからないことを言うんだもん、ユイニャン。
ジョシュアがどうだってのよ。あんな奴、ロザリア様にひざまずいてさっさと結ばれちゃえばいいのよ。
「乙女心は複雑ね。ミカリンってひょっとして、恋をしたことがない?」
「恋より機械の方が好き。手間かけて製作すれば、応えてくれるもん。だからこの前のプラグ男爵とコーダー夫人をどうやって作ったのか知りたいよ、まったく」
あたしがそうぼやくと、ユイニャンはそんなものかしらねぇと首を傾げていた。
つづく




