3ー3
食事が終わると、さっそくジョシュア様に裏庭に連れて行かれた。
いよいよお稽古か。レンチで稽古なんてかっこつかないけど、やるしかない。
「いいか、背筋を伸ばして迷わず一気に振り切るんだ」
「わかった。……これでどう?」
「まぁまぁだ。あとは、迷わないこと。相手が傷つくことを恐れるな。やらなければこっちが傷つけられる。おまえだけじゃなく、ユイニャンが傷つけられると想像するんだ」
「はいっ」
裏庭ではあたしたちと同じように剣の稽古に励んでいる人たちがいた。
最初は、レンチでお稽古しているあたしを見て笑っていた人たちも、こっちが真剣だとわかると、応援してくれるようになった。
「よし。素振り百回」
「ひ、百回!?」
「いいからやれ。俺も一緒にやるから」
「はぁい」
一、二、と素振りをするあたしたちにあわせて、何人か素振りを始めた。
お稽古が終わった時には、お譲ちゃん、本気でこれで戦うのかい、と聞かれたくらいだった。
聞かれたからと言って、ほいほいレンチを持たせたりはしない。
もしかしたらこの中の誰かが盗賊の一味かもしれないからだ。
油断は禁物。
「はい、おわりおわり。あたしたちは見せものじゃないので宿にもどるわ」
「なぁ、譲ちゃん。ちょっとだけそのレンチ見せてくれよ」
「お断りします。自分の武器をほいほい自慢するようなことはしないので」
ああ、だけど。あの中古車、野盗に襲われた時に傷つけられちゃったんだよね。
無事に帰れたら、また整備しよっと。レンチはまた買えばいいや。
ジョシュアと二人で食堂に入って行くと、ユイニャンが赤い顔をしてエリオット様となにか話をしている。
あたしがあなたを守るためにお稽古していたのに、二人の世界を作るなんて、と少しだけ腹が立った。
「そんな顔するなよ。おまえは俺の稽古についてこれた。それだけで立派なんだぜ?」
ジョシュアに言われると、そんな気持ちになってくる。
「わかってるんだけどさぁ。なんかな。……ジョシュアはむなしくならないの? ロザリア様がエリオット様のことを好きでも」
「仕方ないことだからな。俺がロザリアを好きだと言ったところで、ローズヒップティの領土が欲しいからだろと陰口を叩かれるのが関の山だからな。世間なんてそんなものさ」
世間。
ジョシュアの口から意外な言葉が出てきたので、あたしは少し驚いた。
「世間かぁ。魔女の地位もよくなるといいんだけど。そのためには、最強の魔女を探すしかないかな」
「そうだな。二人にかまわず行こうぜ」
「それもそうね」
と、そうっと通り過ぎたところで、ユイニャンに呼び止められてしまった。
「ミカリン、お稽古お疲れ様!」
「ジョシュアも、サンキューな」
ユイニャンとエリオット様に交互に言われたので、あたしたちの方が恥ずかしくなった。
「それじゃま、休むとするか」
ジョシュアの言葉でこの場は解散となった。
つづく




