3ー1
なるべく人のいる方向に歩いて行くと、武器屋があったり防具屋があったり、アクセサリーを売るお店があったりした。
普段レモンティの森に住んでいるあたしにとって、それらはすべて珍しかったんだけど、あたし以上に食いつきのいい人がいた。
エリオット様だ。
特にアクセサリーショップの前を通るたびに、ユイニャンに似合いそうなあれこれをウィンドウで見つけてしまう。
「いい加減そういうのはあきらめろよ、エリオット。どうしてもって言うんなら、自分のお金で買え」
さすがにその都度足を止められたのではかなわないとばかりにジョシュアが苦言を呈す。
「そっかぁ! その手があった!」
「でもユイニャンはそれを望んでないだろうよ?」
突然話を振られたユイニャンは、あわあわと顔の前で手を振った。
「あ、あたしはこれ以上買ってもらうつもりはありませんから」
な、とジョシュアが口を挟む。
「む〜。それならいいけど。ジョシュアはなんか買わないのか? 愛しのロザリアのためにさ」
「彼女は欲しいものは自力で手に入れるタイプだよ。そんなことより早く先を急ごうぜ。くらくなってしまうとまた盗賊に襲われかねない」
とりあえずあたしは初戦で相手を昏倒させただけなのにものすごい後悔と疲労感にさいなまれている。
人が人を襲うのも、襲われて防御で昏倒させるのも、気が滅入ることを知った。
できればこれ以上犠牲を出したくないな。
「ねぇ、ジョシュア。ユイニャンが盗賊につかまらない魔法とかってある?」
「ドーム状に守る魔法はあるが、物理的に手をつかまれたりするのをやめさせる魔法はないな」
それは困った。
「まぁでも。エリオットとミカリンが守るから大丈夫だろう?」
「そりゃあたしが守るけど。あたしもまだ未熟だしな」
魔法もちょっとした水魔法しか使えないからな。
「そうぼやくな。ちゃんと剣の稽古をつけてやるから」
「うん。そこはお願いします。それで、みんなはどんな魔法を使えるの?」
俺は火炎魔法、とジョシュアが早口で言った。
「僕は魔法が使えないんだ」
これはエリオット様。なんだか以外。
そしてさらに以外なのが。
「僕はなんでも使えるよう特訓してきましたから。なんなりとお申し付けください」
そう、ジェインさん。なんかぼーっとしているから、魔法なんて使えないんじゃないかと思っていただけに、不思議な感じがした。
それに、弓も背負っているし、本当になんでもできるんだな。
「おい、ミカリン。ジェインは基本道化師だからな。あまり色々と期待をしない方がいいぞ」
「道化師? なにかおもしろいことをやる人のこと?」
「そうですっ!!」
ジェインさんはその場で華麗に一回転すると、口上を口にした。
「俺様、イカサマ、ジェイン様とは僕のことなのです」
「……はぁ?」
まぁいいや。道化師って言うから、おもしろすぎることを期待したあたしが悪いんだ。
「時に、こんなこともできるのですよ」
ジェインさんは、チョッキの内側から真っ赤な薔薇の花を一輪出した。
「もしかしてこの花もみんなの血税?」
「バレましたか」
お〜い、道化師って強いのだろうか。冷や汗が出てきたよ。
つづく




