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食事を終えて店を出たあたしたちを待っていたのは盗賊だった。野盗と違って人数多いんだけど。
どうやらジェインさんのブラックカードを見てしまったみたい。
「ふん。くだらん盗賊なんぞにかまっている暇はない。火炎魔法で遊んでいろ」
ジョシュア様は盗賊への広い範囲に火炎魔法を打ち出した。
ところがあたしは初心者だよ。いざユイニャンを守ろうにも、レンチを握る手が震える。
「きゃあ!!」
ユイニャンが盗賊の一人に手をつかまれて、あたしはそいつ目がけてレンチを振りかざした。
盗賊はユイニャンを離して昏倒してしまう。死んでないなら問題ないな。たしかに、陛下に加工してもらったこのレンチなら戦える。
その姿をまさかジョシュア様に見られていたとは知らなかった。
「ミカリン、手加減なんてするなよ」
「は、はい」
わかっているんだけどさぁ。やっぱり少しは抵抗あるんだよね。
迷いを捨てよっ!!
そう悟った時には盗賊は居なくなっていた。
「ふぅ〜」
一息ついていると、ジョシュア様が側に居た。
「なかなかいいたち筋だったぞ。今夜から剣……ではなく、レンチの稽古をつけてやろう」
「ありがとうございます」
うひぃ〜。マジかよ、おい。
「ユイニャンを救いたければ、本気でレンチを振るえ。迷うくらいなら武器を手にするな」
「は、はいっ」
見抜かれてる。
「あと、敬語は使わなくていい。様付もなしにしてくれ」
……さすがにそれは抵抗あるんですけど。そうしてくれというのなら、そうするしかないわけで。
「わかったわ。稽古、あんまりきつくしないでね?」
「きつくない稽古は稽古とは呼べないぞ」
どうやらジョシュアって冗談が通じないタイプらしい。
噂ではローズヒップティ国のお姫様であるロザリア様に片想いしているらしいけど、当のロザリア様はエリオット様が好きらしいし、そのエリオット様はユイニャンが好きという、恋の一方通行はどこまでつづくのかしら?
ま、あたしには関係ないけど。
早目の昼食をとったから、とりあえず歩いてみる。
食堂での聞き込みでは、この近辺に魔女らしい人は居ないらしい。
あたしとユイニャンはたまたま魔女だけど、やっぱり特殊な存在なんだなってあらためて思った。
「なぁ、ジョシュア。頼むからそのカードを使わせてくれないか?」
「断る。エリオットになんか触らせるもんか」
エリオット様とジョシュア様の目を盗むようにジェインさんがあたしとユイニャンにだけ聞こえる声音で話しかけてきた。
「普段からこのカードの所有者である僕は、たまにある女性にプレゼントを買ったりしちゃってますけどね」
それはひょっとして、さっきのリリーさんのことかな?
今のは国民の血税であるブラックカードの秘密だから、聞かなかったことにしよう。
つづく




