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オタ嫁が大好きすぎる夫!☆  作者:


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07 ノリと勢いのプロポーズ

 八月の終わりが近づいた日曜日の二十三日。


 駅の1階にあるドーナツ屋のガラス窓の側の席で、俺は少し緊張しながらミユさんを待っていた。


 約束の時間より15分前。彼女が来るのを待つ間に飲茶セットを注文した。


 今日はお盆のお土産を交換する日だ。

 お盆に実家へ帰らなかったミユさんから、夏の祭典の遠征帰りに東京で買ってきたというお土産をもらい、俺からも彼女に渡すものがある。


 ガラス越しにサラサラの綺麗な黒髪を軽く揺らしてこちらに向かうミユさんの姿が見えて、軽く手を振る。


 Limeで窓ぎわの席いると伝えていたので、すぐに見つけてもらえた。


 彼女の今日のコーデは上品なブルーグレーのワンピース。

 相変わらず清楚系の美人なのに、推しカラーのブレスレットが付いているのが、やはりオタクの性なのだろう。


「お待たせしました」

「いえ、俺もさっき来たところです。ミユさん、お席にどうぞ」

「はい」


 彼女が頷いてオレの向かいの席に座ると、メニューを開く。


「すみません、俺は先に頼んでしまいました、飲茶セットを」

「何も問題ないです。店に入ったからには何か頼まないと。じゃあーー私は、この期間限定の有名チョコメーカーのコラボのドーナツにします。赤いハートのやつとトリュフショコラと生ショコラのやつ……」


 ミユさんも注文を終え、運ばれてきたドーナツと飲み物を前に、俺たちは軽く微笑み合った。


 彼女の選んだドーナツは、見た目も美しく、チョコレートが上品に輝いていて、それを一口食べた彼女は目を細めて満足げに小さく息を吐いた。


 赤いハートの乗っているやつを選んだのは、推しのシルヴァンの瞳が赤いからなんじゃないかな? と、俺は思う。


「……美味しい。中里さんの飲茶セットはどうですか?」

「はい、安定して美味しいですよ」


 飲茶セットやドーナツを食べながら、俺たちは自然と近況を話し始めた。


 ミユさんはナプキンで手を拭き、夏の遠征の話を楽しげにしてくれた。


 会話が一段落したところで、俺は小さな紙袋をそっと差し出した。


「あの、これ例の物、ヨーヨーです」


 ミユさんは袋を受け取り、中を開けた瞬間、目を細めて微笑んだ。


「シルヴァンカラーのヨーヨー、ほんとにかわいい! ありがとうございます、嬉しいです!」


 彼女はヨーヨーを両手で大切そうに持ち上げ、光にかざして銀色のラメの輝きを確かめていた。


 その嬉しそうな横顔を見ているだけで、俺の胸が温かくなった。


 そして今度はミユさんが、自分のバッグから小さな箱を取り出した。銘菓の名前が入った包装紙に見覚えがある。


「私からは……なんの捻りもないお菓子ですが、バナナっぽい形のお菓子で、中にホワイトチョコとナッツのクリームが入ってて、意外と美味しいんですよ」


「ありがとうございます。俺、これ好きです」


 俺は箱を受け取りながら、素直に喜びを伝えた。

 飲茶セットやドーナツを食べ終わり、二人して駅の外に出た。


 空が少しずつオレンジ色に染まり始めていた時、夕焼けを見上げつつ、ミユさんがぽつりと呟いた。



「……もうすぐ八月も終わりですね。夏の暑さは苦手だけど、抜けるような空の青さと入道雲は好きなので、少し……それだけが惜しいです。」


 俺も同じ思いだった。

 夏の色は、ほんとに鮮やかで綺麗だから。



「そうですね。季節の変わり目って、いつも何かが惜しくなる気がします」


 俺とミユさんは付き合ってはいない。ただの友達。でも、きっとこんなことが出来るのも、ミユさんにリアルの彼氏が出来るまでだ。今彼女が2次元に夢中でも……いつか親の圧に負けて急に他の誰かのものになってしまうこともあるかもしれない……。


「ミユさん……あっすみません! うっかり下の名前で」


 いつも脳内で名前で読んでたせいで口が滑った!!


「いいですよ、別に下の名前で。そもそも、私のほうが年下だし、呼び捨てでも」

「ゲームで色々お世話になってる先輩に呼び捨てはちょっとハードル高いですね」


「あはは、そんなのいいのに。あ、これから私は書店に向かいますけど」

「あ、俺もちょうど書店に行きたかったんで、つきあいます」


 嘘だ。ただ、もっと長く、少しでも長く、彼女のそばにいたかっただけだ。


 そして二人で本屋に来て、ミユさんが小説のコミカライズの本を特典つきで買って、それから駅近の公園に来た。

 買った本の表紙を見ると、俺の知ってる漫画だった。


「ミユさん、貴族令嬢ものもお好きなんですね、俺も学生時代の同級生がラノベ作家になったから、そーゆーのも読みますよ」

「そうなんですね、じゃあもしやこの本も知ってたり?」

「それは……契約結婚ものですよね、アプリにあったし、絵が綺麗なので読みました」

「ですです! 契約結婚もの!」


 その契約結婚の響きを聞いて、俺は凄いことを思いついた。


「ミユさん、以前、実家に帰ると、結婚しろの圧が強いって言ってましたよね」

「ええ、このままだと高齢出産になって孫の顔も見れないだの孤独死するとか脅してくるんですよー」


 ミユさんは苦笑いをした。


「じゃあ、俺と、契約結婚してみませんか?」



 もう、契約結婚でかまわないから、言ってしまえ!と、思った。

 不意打ちで知らない間に彼女が誰かに取られる前に!


「え!?」

「俺の両親はもう亡くなってるので、よくある嫁姑問題もないですし、あ、兄はいますけど、基本的に海外なので、うるさい身内はいません」


「待って、それって、中里さんにはメリットあるの?」

「俺も兄貴が遠くからたまに心配してるみたいな連絡くるので、Limeで。それと、一緒にいる人がいたら孤独死は回避できるでしょ? 一人で床やベッドの染みになる前に発見してもらえる」


 ミユさんは、驚きで眼を見開いた後、しばらく固まって、それからよくやく口を開いた。


「2次元以外の恋愛は痛い目みるから、そなたを愛することはないと思うが……」


『そなたを愛することはない』


「すげぇ! それ今日ミユさんが買った令嬢漫画でも見たフレーズ! 氷の公爵が言うやつですよね!? 俺、知ってますよ!」

「そう、それ。で、こんなんでもほんとに大丈夫そうです?」


「はい! 大丈夫です! お互い身内に心配されて結婚はまだかって言われるの辛いですよね!」

「マジそれな。です。……でも、なんで私なんですか?」


「ミユさん、以前、俺のズボン張り裂けた時に、ヒーローみたいにかっこよくさっと上衣脱いで隠してくれたあげくにソーイングセット持ってて、ボタンつけしてくれて優しいなって!」


「言っておきますけど、私がソーイングセットを持ってたのは家庭的とかじゃないですよ」

「分かってますよ! 推しのぬいぐるみの着替えを塗ったりするためにたまたま持ち歩いてたんでしょう?」


「そ、そこまで分かってるなら……いい……か?」


 あと一押しでいけるか!?


「あ、俺んとこ、両親亡くなってますけど、生前贈与で親にアパート貰ってて、そのアパートの管理人もやってるんで、いつでも一緒に住めます!」


 ここでもダメ押しとばかりに共にいることにメリットがある事を伝え、一気にたたみかける。


「ワオ! 家賃収入もあるんですね!」

「はい、なのでいつでも転がり込んで来てください!」

「よし、契約、しましょう!」


 やったあーーっ!!


「あ、ミユさん、結婚式はどうします? 希望とかあります?」

「籍は入れるけど、契約結婚なんだし、フォト婚で写真だけ撮ればいいでしょう」

「じゃあドレス姿は見れるんだ!」


「……私のドレス姿なんて見て嬉しいですか?」


 当たり前だ!!


「それは、もちろん! 美人のドレス姿なんてなんぼあってもいいですし、それにミユさんは貴族の漫画も好きなんだし、ドレスは着てみたいでしょ!?」


「それはまぁ、確かに? あ、それと偽装とはいえ結婚するんだしミユでいいですから」

「ミユさ……ミユちゃん」


 脳内では何度も名前で呼んでたけど、本人の前だと流石に緊張する。


「それが妥当なとこよね」

「じゃあ俺のことは友次でいいから」

「ユウジ……君」

「まぁ、よしとしましょう」


 こうして、勢いで契約結婚を申し出てしまったが、了承してもらえた! なんというラッキー! ミユさんに結婚しろと圧をかけてくれたご両親に感謝!


「えーと、私は結婚してもすぐに仕事辞めたりはできないのですが、まず、うちの親に挨拶してもらっていいですか?」


「あ、はい、それはもちろん! 頑張ります!」

「よろしくお願いします、あ、コンビニでゼクシ〇ゲットしましょ、婚姻届がついてるから」

「はい!」


 こうして、俺とミユさんは、軽いノリでコンビニに寄ってゼクシ〇を買い、付録の婚姻届をゲットし、契約結婚をする事になった!


 同じ熱量で愛されてなくても、好きな人が、側に居て生きているだけで、きっと俺は幸せになれると思うから!


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― 新着の感想 ―
まぁ、ありですかね。ちょっと現実的には色々ありそうですけど、、今後、ゆっくり育んでいけば良いですからね。人生長いようで、あっという間ですから、
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