28 暑い夜
~ ユウジサイド ~
春だ。梅雨入り前。最近の異常気象で5月なのにもう暑い。 夜になった今でもそれなりに暑いので、網戸にして風を入れてる。
そう、最近ミユちゃんが薄着になっているのだ!!
今はキッチンで明日の弁当の仕込みをしてる。
……暑いし、仕方ない。
自宅でキャミソールに短パン姿とか、普通だ。
その上から今は料理中ゆえ、エプロンをしてはいる。でも露出が多い。綺麗な生足も見えてるし、巨乳なのも丸わかりなんだ。
短パンの素材も柔らかそうなやつで、全体的にボディラインがよく分かる。
目が幸せなのと同時に目に毒!
……いっそ性欲を食欲で打ち消してもらおうか?
と、キッチンに向かい、料理をガン見することにする!
契約結婚だ。孤独死を避けるための、ただの相互扶助。お互いそれをちゃんとわかっている。
だからこそ、こんな夜更けの家庭的な光景に、胸がざわつくのはいけないことのはずだった。それでも鼓動は、勝手に速くなる。
ミユちゃんはまな板の上で、春キャベツを刻んでいて、しゃきしゃきと瑞々しい音が響く。
シンク近くのテーブルの上では、鶏肉が醤油とみりん、すりおろした生姜に漬け込まれ、じっくりと味を染み込ませている。
彼女は小さく鼻歌を口ずさみながら、フライパンを火にかけた。
ごま油が熱せられる香ばしい匂いが、ふわりと鼻腔をくすぐる。
「ん……しょっと」
ミユちゃんが軽く身を乗り出すようにしてフライパンを振る。
「えっと、俺、何か手伝うことある?」
俺は斜め横あたりから声をかけて料理を見学。
「大丈夫、ユウジ君はくつろいでていいよ」
「んー……」
俺は曖昧な返事で流しつつ、料理を拝見。
鶏肉の表面がこんがりと狐色に焼け、甘辛いタレが絡まっていい感じに照りが出てる。
美味そう。
そこへ刻んだキャベツを投入すると、ジュワッと音を立てて水分を飛ばし、甘みが増していく。彩りににんじんの細切りと、茹でたスナップエンドウを加える。
どれも春の野菜らしい、みずみずしくて生命力に溢れた色合いだ。
次に彼女は卵焼きを作り始めた。薄焼きを何枚も重ね、ふんわりと巻いていく。
「そこで料理見てるの楽しいの?」
生足見てると変な気分になるから、俺は料理を集中して見ていた。
「うん、美味そうだなって……てか、こんなでかい男が側に立ってたら、邪魔か」
「あはは、多少圧はあるけど大丈夫よ、味見したい?」
「いや、大丈夫、明日のお弁当のお楽しみにする」
出来上がった卵焼きは、優しい黄色で断面が美しく、ほんのり甘い香りが漂う。
ご飯を詰めた弁当箱に、鶏の照り焼きを並べ、卵焼きを詰め、野菜を隙間に彩りよく盛り付けていく。
桜の塩漬けをちょこんと添え、梅干しを一つ。
シンプルなのに、どこか春らしい華やかさがあった。
ミユちゃんの細い指が器用に動き、2人分の弁当箱を丁寧に仕上げていく。
その時、キャミソールの肩紐が少しずれ、鎖骨のラインから、豊かな谷間へと視線が誘導された。
心臓が、うるさいほどに鳴っていた。
そうだ、心頭滅却しよ!
俺はキッチンから風呂に向かい、冷水のままシャワーを浴びた。
しばし冷静になった。
リビングに向かい、ソファに腰を落とす。
ミユちゃんは既にキッチンからいなくなってるので、引き戸の向こうの自室へ行ったのだろう。
よし、この隙にミユちゃんにおすすめされたアニメを見よう。
原作漫画が良かったらしいから、これもいいものなんだろう。
面白かったけど、2話分のアニメを見て、眠くなった。
俺はそのままリビングのソファに横になって目を閉じてしまった。動くのがめんどうだったから。
~ ミユサイド ~
弁当の仕込みを終えてから、自室で薄いブックを読んだ後、お風呂に行く為にリビングを通過しようとしたら、ユウジ君がソファで寝てた。
タンクトップに短パンというシンプルで、いかにも風呂上がりって格好でくつろいで寝てる。
いやしかし、見事な筋肉!!
こいつはかっこよくてセクシーだな、とくに男らしい足がいい。私が漫画家ならいい参考資料だと思うことだろう。
写真に撮りたいけど、勝手に撮ると盗撮になってしまうな。
いくら男性の生足でも。短パン履いてても。
……夫といえど!!
……諦めてお風呂に行こう。
私はユウジ君を起こさないようにそーっと抜き足差しで移動した。




