26 ミユサイド3
ミユサイド3 ~メモリアル~
クリスマスは最高だった。
ケーキもチキンも美味しかったし、ゲームのレイドイベントも沢山キャラの育成素材を狩れたし、お風呂から上がると枕元に課金カードが靴下に入ってた。
パステルカラーのふわふわのジェラピコの靴下の両方にカードが入っていたのだ。
その課金カードをスマホにチャージして、推しのいるゲームでガチャしたらちゃんと推しが引けたので、ユウジくんは私の完璧なサンタさんだった。
その日は大変ハッピーな気持ちで眠りについた。
そして来たる冬コミの日の事。
ユウジ君は私の友人のレイコさんの手伝いでコスプレで売り子をする事になった。
別に断ってくれても良かったのだけど、ユウジ君は人がいいから引き受けてくれた。
私の友好関係を気にしてくれたのかもしれない。
とはいえ私もユウジ君のコスプレする乙女ゲームキャラのヒナタ兄さんというキャラは大好きなので、コスプレは内心見たいなと思ってた。
友人の当初の予定では肌色面積の多いコスを着てもらう予定だったけど、会場のコスプレ規定で男性のチクビも出せないのを忘れてたって事だったのでガードマン風の衣装に変更された。ハーネス姿がかっこいいやつだ。
普段は本ばかり作っててコスプレは自宅内のコスプレ(宅コス)とかたまに依頼作るくらいで自分はあまりやってないからうっかり忘れてたらしい。
おおかたユウジ君の見事なガタイの良さ、筋肉を見て、これは絶対に似合うやつだ!と、はしゃいでしまって大事な事が頭から抜け落ちたのだろう。
レイコさんはしっかりしてるようでたまに抜けてる人だから……欲望が絡むと。
私は当日、宝の地図を持って薄い本の為に会場内をかけずり廻ったけど、売り子のユウジ君が困ったことになってないか、たまに様子を見に行った。
案の定、イケメンでもある彼のコスプレはゲームのファンに大変好評で握手を求められたり、女性に抱きつかれたりして、胸のあたりがなぜか、ザワついた。
表面的には笑顔を崩さない私であったが、なんとなく複雑だった。
なんで、偽装の契約結婚でこんなヤキモチみたいな独占欲的な感情が浮上してくるのだろう。
とはいえ、仲良い女の子の友達同士でも友達というものは取られたりすることもあり、その時はやはり嫉妬もしたりすることがあるから、その手のものである可能性もある。
何せオタクトークを出来る友達は貴重なもんだし。
別に孤独死を回避するためだけなら、私と離婚して他の人と一緒にいる選択肢も、彼にはあるんだから。
秋の新婚旅行も、彼は私にとても親切だった。
荷物が重いなら持ってくれようとするし、私の行きたい所ばかり連れ回しても嫌な顔一つしなかった。これが本物の彼氏や旦那であれば、いわゆるスパダリってやつではないかな?
なんで、私なんぞの偽装旦那さんやってんだろうってなもんだ。
彼の仕事中にアクシデントで張り裂けたズボンを縫ってあげたくらいで……。
あの日の私はぬいぐるみの着替えの服を休憩中時間に縫う予定でたまたまソーイングセットを持っていただけで……そう、特別女子力が高い訳ではなく、ただのオタ活してるオタク女だった。
世の男性がときめく要素はない。
一応私は女子力が高いからソーイングセットを持ってたわけではないのだと、説明はしたんだけど。
最近フォトフレームを購入した。
プリンス・エドワード島の思い出写真を飾るために。
海を背景にいい感じの写真を撮っていたので。
そして聖地に行けることで浮かれていて失念していたが、よく考えてみたら彼の両親は海外で事故って亡くなったのだし、新婚旅行も海外はホントは嫌だったんじゃないかな?
と、思い至って一人青ざめる私。
彼にその事を訊いても、景色のいいところは自分も好きだし、治安も悪くないところだから、大丈夫みたいな事を言ってた。
ほんと? 無理してない?と、心配にはなるけど、小さな不満がつもりにつもったら、いつか側にいるのも苦痛になるのではないか? それを考えると、今から胸が痛む。
別に肉体関係とかもまったくないのだけど……友達同士が同居してる感じだし。
異性ではあるんだけど。
せめてなにか彼の喜ぶことをしてあげられたらいいんだけど、欲しいものある?って聞いてもクリスマスリースだの、たいして金もかからないものばかり言う。
物欲が薄いのか、私に遠慮してるのかな?
もっと、わがまま言ってくれてもいいのに。




