17 プリンス・エドワード島
カナダへ入国後にシャーロットタウン空港へ。
カナダの公用語は英語とフランス語だけど、翻訳アプリがあるからなんとかなるだろ。
俺達は世界で1番美しい島と言われるプリンス・エドワード島へ向かう。ぶっちゃけパプアニューギニア島も同じようなこと言われてるけども。
あちらは天国に1番近い島だっけか? ま、いいか。
プリンス・エドワード島に着いたその日、ミユちゃんは朝からテンションが限界突破していた。
彼女は赤毛のウイッグこそ使ってはいないが、長い黒髪を三つ編みにして、茶色の上品なワンピを着てる。さすがに袖はパフスリーブではないが、絶妙なイメージコーデ。母が好きでDVD持ちだったので、俺も赤毛のア〇のアニメは見てた。
「ユウジ君、ごらんよ、あの赤土に彩られた大地を」
「うん、感慨深いね」
ホテルまでタクシーでB&Bへ。ア〇の家に似た作りのものだ。屋根は青いが、玄関も似てる。
ベンチのようなものがある。
「似てる似てる! 家の入口から似てる!」
「うん、寄せてあるんだね、荷物を置く為に俺たちの部屋に行こう」
「はい!」
壁には手書きのウェルカムボードがあり、黒板にチョークで描かれたア〇の後ろ姿もいけてる。
部屋に到着して、重い荷物を置く。
「あ、出窓! あそこからダイア〇に合図送るやつー」
ミユちゃんがウキウキしつつ早速カメラで撮影した。
ついでに出窓には彼女が持ってきていた三つ編みのリ〇ちゃんフレンドを置いた。
そこはア〇を置くべきところだろうが、さすがにア〇のドールは持ってないらしい。なのでそれっぽいエプロンドレスを着せた赤毛のお人形さんだ。
「最終回でもあそこにいたね」
「そうそう、ブラウニングの詩を詠んで綺麗に終わる、感動する」
ここに来る途中、タクシーの窓からも紅葉する木々が見れた。
「紅葉も綺麗だよね。ア〇が秋が好きだって言ってた理由も分かる」
「そうそう、あの子は木とか自然が大好きだから」
ミユちゃんの瞳がキラキラ輝いている。
俺もミユちゃんほどではないが、2次元も好きなので二次元と三次元が重なる聖地は感動ものだった。
そしてついにグリーン・ゲイブルズを再現した家へ。緑の屋根だ。
「あれが雪の女王様ね!」
ビデオカメラで早速撮影するミユちゃん。
庭にシンボルツリーらしき大きめの木がある。ア〇が雪の女王様と名前をつけた桜の木なんだろう。
「秋だから白い花は咲いてないけど、いいね」
「当然ながら家もいい」
「1度火事で焼けたのに日本が詳細な設計図持ってたから復元できたとかなんとか」
「そうそう、日本人は赤毛のア〇が大好きだからね」
「異世界ファンタジーだと聖地に行きたくてもそれっぼい風景の田舎ならあるけど……こちらはガチの聖地だもんねー。無駄にテンション上がってしまう」
家の中に入ると、落ち着いた雰囲気の内装で素敵だった。
ダイニングルームのテーブルの上には花柄のティーセットがあった。
「薔薇柄のティーセット!」
「ア〇がワクワクした、いいお客さんに出すやつかな」
「多分そう」
「この薪ストーブのオーブンいいよね」
「パイとか作るんだよね」
「そうそう」
いやがおうにもテンション上がる。
◆◆◆
1階のマシュ〇の部屋にも来た。
「マシュ〇の部屋は流石にシンプル」
「奥ゆかしい性格が出てる」
次にキッチン周り。
「調味料の棚を見るといちご水を思い出すわ」
「うん、傷薬入りのバニラの瓶も」
いよいよ2階のア〇の部屋に。 屋根裏ではないが、花柄の壁紙が愛らしい部屋だ。
「マシュ〇のくれた膨らんだ袖のドレスが飾ってある!」
ガチでパフスリーブのドレスが飾ってある。
「あー、かの有名な茶色いドレスだね!」
「マシュ〇の愛である」
ミユちゃんは涙ぐんでいた。
「あ、ギルバー〇の頭を殴って割れた黒板もある」
「ほんとだ、割れた状態で置いてるのウケるな」
次にマリ〇の部屋。
シーツは温かみのある赤であるが、全体的に落ち着いた雰囲気だ。
青い花柄の洗顔セットがあるのも生活感を演出してていい。
裁縫室。糸紡ぎ車に足踏みミシンがある。タンスの上の瓶の中にはいくつものボタンが。
ここでマリ〇は近所から型紙を借りてアンの地味で堅実な服を作ってたのかな?
壁紙はリビングで広げてた気はするが……詳しくは知らんけど。
「使用人の部屋もある」
「ジェ〇ーって通いじゃなかったか?」
「わかんない、アニメでは通いに見えたよね」
「畑の手伝いのリンゴ食ってた男よな」
「そう、それ」
グリーンゲイブルズの正面から伸びる小道は、おばけの森に続くもので物語にも出てくる有名なとこ。
観光客とよくすれ違う。緑の香りと土の香りがする。そして次の目的地へ向かう。
グリーンゲイブルズの裏手から続く恋人たちの小径を歩きながら、ミユちゃんは興奮冷めやらぬ様子で語り続ける。
「ユウジ君、この道は春ならきっとスミレが咲いてたんじゃない? やばい、カメラを持つ手が震えて手ブレが」
「かもねー、あ、カメラなんなら俺が持つよ」
アンの物語に思いを馳せつつ、俺たちは道を歩いた。
度々風景と一緒に写真も撮ってあげてるけど。
特に家と海を背景を多めに撮った。
お昼は島の名物シーフードを堪能することにした。可愛いレストランに入った。
プリンス・エドワード島はロブスターが有名だ。
「わぁ、海鮮丼みたいなのがある! でも私は……やっぱりAnne's Raspberry Cordialとスコーンセット」
ミユちゃんがメニューを指差して目を輝かせる。俺はロブスターロールとクラムチャウダーのセットを注文した。
運ばれてきた料理を見て、ミユちゃんは大興奮。「ラズベリーコーディアル! ……って、ノンアルコール版ね。残念」
「見どころたくさんだし、酔うのももったいないかもだ」
「そうだね。記憶を飛ばしてる場合ではない。うん、スコーン柔らかい、美味い」
ミユちゃんは一瞬キリっとした顔になったと思ったら、今度は美味しいスコーンの味に顔が緩んだ。
俺はロブスターロールを一口食べて、思わず唸った。
「美味い……カナダのロブスター、プリプリだ。ミユちゃんも一口食う?」
「食う」
彼女が素直にそう言う、可愛いすぎ。
一生守る。
俺はナイフで少しロブスターサンドの端っこを切ってあげた。
ミユちゃんはもぐもぐしながら目を細める。
「幸せ……。ユウジ君、二次元の聖地で三次元の美味しさを味わうなんて、至福すぎるね……」
「うん」
俺はクラムチャウダーも彼女に分ける。
「お先にどうぞ」
「え、私が先でいいの?」
「うん」
「ありがとう!……うん、これも美味しい」
ミユちゃんの後で俺もクラムチャウダーを飲んだ。美味い。
有名なロブスターも食えたし、幸せで大満足なランチだった。
この後、ア〇のコスプレして撮影が出来る店に行く予定だ。帽子に例のエプロンワンピースのカントリースタイルのやつな。




