39. 笑っていようじゃないか。
ジークとは途中で分かれて、今はレッシェルとフローラルで端っこの椅子に座っていた。
2人は本を読みながら話す。
「えぇ!?」
レッシェルが思わず声を上げる。
「しぃぃぃーー!静かにっ。」
フローラルは慌てて人差し指を立てて口に当てる。
「ど、ど、どういうこと?!」
「魔法記伝が秘密魔法部隊に…?」
(とりあえず、レッシェルには言っても大丈夫だろうと思って伝えたけど…
「まぁだから、これは非常事態。ここで逃すともう二度と魔法記伝が手に入らないかもしれない。」
「ぁあぁ、どうしよう!」
レッシェルは顔を青ざめてそう言う。
「でも、おそらく私の命を狙って、どこかで出くわすことになりそうなんだよね。」
「じゃあ、怖いけどその時を狙って…。」
フローラルは読んでいた本を閉じる。
「そう、魔法記伝を奪うしかないっ。」
「でもこれで、魔法記伝を速読する必要はなくなったね。」
「ま、そ、そうですけどっ。」
「でも、問題はまだまだある。まずジーク。」
「あ、あの時の先輩の友達?」
「うん。ゼクトって子に頼まれたっぽいけど、ゼクトに伝わってしまったら、面倒くさいことになりそうだな…。」
ちょうどその頃。
ジークはゼクトのところに居た。
ゼクトは本棚から本を取り出して表紙を眺めている。
「お、ジークちゃん。どうやった?」
ゼクトが人の名前に「ちゃん」をつけて呼ぶのは仲良くなった証拠だ。
ジークは頭をかきながら話す。
「ああ、なんかよく分かんねえけど、魔法記伝を奪う計画は阻止できたよ。」
「閉架書庫にも入らせなかったしな!」
「ふぅん。すぐに諦めたんか?フローラちゃんは。」
フローラルとはあまり話していないはずだが、「ちゃん」呼びだ。
「あぁ、そうだな。ま、フローラが素直で良かったよ。」
ゼクトは目を細める。
「いぃや、それは素直なんかやないっ。」
「ん?」
「どういうことだ?」
「僕のカンは当たるで。おそらく、第三勢力がやってきたんや。」
「どっちか言うと、僕らよりの。」
「はぁい、みんな揃ってるかな?じゃ、出発するね。」
バスで最後に向かうのは、神代市南部にある、神代海岸だ。
「んで、結局フローラは図書館で何してたの??」
「え、いやぁー、後輩とちょっと話をしていただけだよ…?」
「本当に?ていうか、“ちょっと”じゃないよね!?」
マヨーナは眉を八の字の逆にして怒っている。
「はぁ…。最後は、海だね。」
そして、ため息をついて、窓を眺める。
「うん。た、楽しみだね。」
フローラルは監視官のことで今がいっぱいだった。
「まぁ、終わり良ければ、全て良し!だね!」
マヨーナは笑顔でフローラルの方を見る。
「終わりが良かったら、ね…。」
「はい、海に到着しました。楽しかった今日ももう、これで終わりです。」
「しっかりと、楽しんでください。」
レーラの代わりとなっている先生はそう言う。
フローラルとマヨーナは他の生徒とは少し離れたところで景色を眺めていた。
「綺麗だねっ。」
「でも、ちょっと時間帯が悪いな。もう少ししたら、夕日が沈むから、それまでは…。」
フローラルは辺りを見渡し、警戒する。
レッシェルが手を振ってやってくる。
「ぁ、先輩!」
「あぁ、レッシェル。」
あの2人もやってくる。
「ぁ、ジークにゼクトっ。」
「よっ、なんだかんだ、今日あんまり話さなかったからな。ここぐらいは、みんなで。」
ジークも腰を下ろす。
ゼクトも、笑顔だった。
「夕日見よって話やな!」
「マヨーナちゃん、フローラちゃん!」
「ぇ?フローラ、ちゃん?」
フローラルは笑顔じゃなく、困った表情だった、が。
「ふっ。」
フローラルはふと笑う。
「そうだね。」
「こんな状況だからこそ、笑っていようじゃないか。」
「ん?」「どういうことだ?」
フローラルは微笑んだ。
「なんでも。」
そう言ってフローラルは夕日を見つめていた。




